「ジャーナリストTwitter アカウント凍結事件は、マスク氏の取材に萎縮効果をもたらす」:ジャーナリスト アーロン・ルパー 氏

DIGIDAY

ニュース解説メディアであるボックス(Vox)の元ジャーナリストで、現在は独立してフリージャーナリストとして活動しているアーロン・ルパー氏は、12月15日夜にTwitterのアカウントを停止された何名かのジャーナリストのひとりである(現在はアカウントを再開している)。

新たにTwitter社のオーナーとなったイーロン・マスク氏は一連のツイートのなかで、ジャーナリストらがマスク氏の正確なリアルタイムの位置情報をシェアしたため、同社が定める「晒し行為(doxxing)」に関するポリシーに違反したと主張している。だが、今回Twitterアカウントを停止されたジャーナリストたちのなかには、ひとりとしてマスク氏のリアルタイムな位置情報をシェアした者はおらず、そのかわりに最近、ソーシャルプラットフォームのマストドン(Mastodon)や一般公開されている情報を用いて、マスク氏のプライベートジェットの位置をシェアする@ElonJetというアカウントに、レポートを上げたりリンクしたりしただけだ。

米DIGIDAYは、Twitterアカウントの停止とそれが仕事や活動にとってどのような意味を持つのかについて、ルパー氏に話を聞いた。

以下の対談内容は、要約編集されている。

◆ ◆ ◆

――Twitterのアカウントが停止されたことはどのように知ったのか?

実は夕方、生後7カ月の子どもと床で遊んでいたところだった。私の携帯電話が湯水の如くなり始めて、みんながメールやインスタグラムで知らせてくれていたんだ。「大変だよ! 君のTwitterアカウントが停止された!」と。それでTwitterを開いてみたら、事実だった。Twitterからは何も聞かされていなかったが、トップページにアカウントが永久凍結されたと表示されていた。

いったい何が起きているのかを探ろうと、同じようにTwitterアカウントを凍結されたほかの記者などに連絡をとって、とにかく調べてみた。そうすると、どうやら私が投稿した、「Elon Jet」というFacebookのアカウントページにリンクするツイートが関係しているらしいとわかってきた。私は12月14日水曜日の朝早く、ちょうどそのFacebookアカウントにリンクするTwitterページが凍結されたころに、同じアカウントへのリンクを投稿していたのだ。その数時間後、マスク氏はTwitterで、新たな利用規約によりそのようなページへのリンクを張るだけでも違反になると発表した。

つまり、投稿した時点では利用規約違反ではなかったものが、さかのぼって違反とされ、アカウントの凍結に至ったというのだ。あれはなにげなくつぶやいただけのツイートだった。もし違反になると知っていたら、わざわざアカウントが停止される可能性のあるようなことをやってみたりはしない。でも、そうなってしまった。単にFacebookの公開ページへのリンクを張ることがこんなふうに違反になるなんて、思ってもみなかった。

――アカウントの凍結を知ったあと、どうしたのか?

TwitterのTrust&Safety(信頼と安全)チームの人に連絡をとった。何時間も経った夜遅くにようやく、例のアカウントへのリンクが凍結の理由だったことが確認できたと、同チームから聞かされた。結局アカウントは復活するようだが、私が話をした人物はそれがいつになるのか、明言はできなかった。マスク氏が凍結解除を即時にするか1週間後にするかのユーザー投票を行っているのを見たが、そこには永久凍結という選択肢はなかった。ただ、私のページには今もまだ「永久凍結されている」と表示されている。だからそこには少しばかり矛盾があるというわけだ。

新時代に入ったTwitterでは、我々は自分の経験と勘を頼りに判断し、自ら道を切り開いて進んでいる感じだ。だから、永久凍結の通知のなかに不服申し立てをするフォームへのリンクが示されていたのにも、別に驚きはしなかった。しかしそのリンクは、実は使えない状態だった。ある意味Twitterらしいと感じる。

――Twitterのアカウント停止は仕事にどう影響するか?

主にTwitterの機能であるニュースレターを使ってビジネスをしているフリージャーナリストの私としては、当惑するばかりだ。昨夜も、「これからどうやって生計を立てていくか、考え直さないといけない」と感じ、狼狽した。Twitterで80万人のフォロワーを獲得するのに10年かかったが、それだけではない。聴聞、ディベート、スピーチ、トランプ氏支持の集会など、多岐にわたるさまざまなイベントのビデオ動画を丹念に制作してきた。それを失うというのは、つまり何年もの長い時間をかけてやってきた仕事がなくなるということで、突然に消えてしまったんだ。

――あなたにとってTwitterは、ニュースレター配信サービスのサブスタック(Substack)の購読者獲得のための手段だったようだが、今後のやり方について作戦はあるか?

メディア対応の合間をぬって、新たなソーシャルメディアプラットフォームであるポストニュース(Post News)にアカウントを作成した。私の調べたところでは、そこがTwitterの代替としてもっとも有望であるとのコンセンサスが得られているようだ。またソーシャルネットワークサービスのマストドン(Mastodon)のほうでも、より積極的に活動していくつもりだ。ただし、私にとってTwitterの規模というのはやはり大きな魅力だ。

ニュースレタービジネスを展開していれば、たとえば80万人のフォロワーがいたとして、そのうち1~2%でもニュースレターの購読者へコンバージョンできれば、かなりいいスタートが切れるのではないかと計算するだろう。1年以上前にボックスを辞めたとき、私の頭にはそんな計算があった。だがこれだけのフォロワーを失ったら、ほかのプラットフォームでゼロからスタートしなければならない。

ただし、アカウントが復活するならあまり心配はしていない。たとえ凍結解除が1週間後となっても、その1週間を使って少し冷静になれる。休暇といえる。でもそれが1年とか、あるいは永久凍結とかいうことにでもなれば、そのときは柔軟に対応するしかないだろう。たとえば私がやっているビデオの仕事をみると、ほとんどの同業者とくらべてかなり速いペースでファンを増やせていると思う。だがそれでもひるむ気持ちはある。何年もかけて多大な労力を注ぎ込んで何かを作ったのに、とんでもない間違った理由から一瞬で消失してしまうのを目の当たりにしたのだから。現実にしっかり目を向けろということか。

より広い意味でとらえると、我々報道機関やジャーナリストが、読者と接点を持ちオーディエンスを増やすためのプラットフォームとしてのTwitterにいわば依存してきた、そのことに対する教訓でもあるのだと思う。しかし、今状況は変わり、ルールはまったく予測不能な、書き換えられる可能性さえあるものになりつつある。もしマスク氏の機嫌を損ねるようなことをすれば、ほんとうに一瞬で冷たい仕打ちを受ける、つまり凍結されてしまうかもしれない。反感を買うようなことはしないよう、気をつけたいと思う。巻き込まれたあげくに、避けられたはずの永久凍結をされるなんて憂き目にはあいたくない。

――アカウントが復活したら、あなたのTwitter上での振る舞いは変わるか?

これは興味深いトピックだ。私は今回のことが、マスク氏を追跡取材するジャーナリストに萎縮効果をもたらすだろうと思っている。Facebook上のページへのリンクを張ったこと以外で、昨日アカウントを停止された人たちに共通しているのは、これまでマスク氏を批判してきたということだ。だから今回の措置は人々を萎縮させる効果のある先例になった。これで、もしTwitterやマスク氏に関して批判的な報道をしようと考えたとしても、再考せねばならなくなるだろう。

この記事を出版したら、あるいはこのツイートを投稿したら、自分のアカウントが停止されるかもしれないと。たぶんこれは、この男を批判したらそれなりの結果を招くのだと思い知らせる種をまくという着想の一部分なのかもしれない。そしてそれが私が今後取り組んでいく課題になるだろう。おそらく私がTwitterに復帰したら、このようなことが二度と起こらないようにしっかり努力していこうと考えている。

[原文:Journalist Aaron Rupar on the ‘chilling effect’ of being suspended by Twitter

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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