世界のいくつかの地域が深刻な不況に見舞われ、別の地域では依然として成長への道を模索しているなか、経済予測家の多くが、2023年は、スタートは厳しいがハッピーエンドで終わるか、ずっと低迷が続くかのどちらかになると言う。
大手持株会社のメディアエージェンシー、具体的にはグループエム（GroupM）とマグナ（Magna）のアナリストに聞いてみると、長期的な見通しは良くないというものの、2022年の好調な結果を受けて、2023年についてはやや控えめながら、引き続きより前向きな見通しを示している。
成長率は下方修正
グループエムでビジネスインテリジェンス担当グローバルディレクターを務めるケイト・スコット＝ドーキンス氏は、12月はじめに出した同ネットワークの最新報告書に、「最近のニュースの見出しでは、大手テック企業の破綻やデジタル広告の低迷を警告するものが目に付くが、我々はデジタル広告の両形態（純粋なデジタル広告と従来のメディアのデジタル版の両方）が2022年に2桁成長すると予想している」と書いている。
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グループエムは、2022年の世界の広告成長率を6月に発表した8.4%から引き下げ、（米国の政治広告を除いて）6.5%に修正した。スコット＝ドーキンス氏は、この減少の主な原因に中国の成長率低下を挙げ、グループエムでは、中国を除いた2022年の成長率は最終的には8.1％になると予想している。
2023年に関しては、グループエムは世界の広告の成長率を5.9％と予測しており、スコット＝ドーキンス氏は、コネクテッドTV、リテールメディア、インドのように急成長を続ける市場がその理由だと述べる。しかし、この予測値は6月の6.4%から低下している。
IPGのマグナ部門は、2022年の世界のメディア収益成長率を6.6%と予測し、6月の9.2%から下方修正した。また、2023年の見通しについても少し控えめで、世界全体の成長率を6.3％から4.8％に修正している。グループエムと同様、マグナも、この修正の多くは、動揺した中国が大きく時計を巻き戻し、規制だらけの新型コロナウイルス感染症（COVID-19）政策と厳しいデジタル規制によって成長を阻害したことに起因すると指摘している。
マグナのシニアバイスプレジデントで、グローバル・マーケット・インテリジェンス部門のグループディレクターを兼務するルーク・スティルマン氏は、「広告支出は若干減速しているが、ほぼ以前の我々の予想通りだ」と言う（スコット＝ドーキンス氏によれば、中国は、米国と合わせて全広告支出の55%以上を占めているため、世界の情勢に大きな影響を与えているという）。
予想以上に成長するOOH
予想されたことではあるが、2022年に主要プラットフォームのいくつかが、予想よりも収益が伸びなかったことによる大規模なレイオフ、政府によるTikTokへの監視強化、新しいオーナーの下でのTwitterの混乱など、何らかの障害にぶつかった後でも、成長の多くはデジタルが生み出し続けている。
マグナは、2023年のデジタルの成長率を8％、つまり広告収入全体の65％を占めると予測している。これは、主にeコマースとデジタル動画の爆発的な成長によってけん引される。検索は依然堅調で、ソーシャルは、前述のいくつかの障害から回復すると見ている。
おそらく、すべてのメディアの中で最大の驚きは、屋外広告（OOH）メディアの予想成長率であろう。屋外広告は、デジタルメディアへの転換を背景に、デジタル以外の他のどのメディアより速いペースで成長を続けている。グループエムは、屋外広告が2022年に（中国以外で）18.1%成長すると予測しており、これは従来のどのメディアよりも良い数字だ。
同様に、マグナは2022年の屋外広告の成長率を12.4%と予測しており、6月に予測した10.4%から上方修正している。
その強気な姿勢は、屋外広告の業界団体である全米屋外広告協会（Out-of-Home Advertising Association of America：以下、OAAA）が12月5日に発表した2022年第3四半期の収益の数字にも表れている。このデータによると、屋外広告は2021年比で25.7%成長し、2019年の収益64億ドル（約8750億円）と肩を並べているという。
OAAAのプレジデント兼CEO、アナ・ベーガー氏は、「主要セクターはますます多くの予算を投資している。特に、屋外広告への政治関連の支出は過去最高を記録した」と述べる。その他、メディアおよび広告、幅広い公共交通機関、ホテルおよびリゾートなどのカテゴリーが屋外広告の成長に貢献している。OAAAによると、この屋外広告の広告主の上位100社のうち、ほぼ3分の1が屋外広告での広告支出を倍増させたという。
Michael Bürgi（翻訳：藤原聡美／ガリレオ、編集：分島翔平）
