リーバイスのデジタル戦略担当グローバルヘッドに就任したボレス氏が語る、Web3空間における「膨大なチャンス」

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リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー(Levi Strauss & Co.)のビジネスは170年近くの歴史があるが、同社は将来を見据えてAIやWeb3など最先端のテクノロジーの概念に投資している。

アパレルブランドである同社は、特にD2Cビジネスの成長を促進するためデジタルツールの使用を増やしている。2021年の時点で、D2Cは同社の収益の36%を占めており同社はこの割合を55%まで高めることをめざしている。同社はこの数年間で、カーブサイドでの受け取り、予約のスケジューリング、および「オンラインで購入し、店舗で受け取り」サービスなど、オンラインと対面のエクスペリエンスを橋渡しすることを主眼にしたさまざまなツールを運用してきた。また、アプリとロイヤルティプログラムを導入し、店舗におけるモバイルの非接触および決済デバイスを推進したと、当時リーバイスの米国事業責任者を務めていたマーク・ローゼン氏は2020年に米モダンリテールに語った

同社は今年、自社のウェブサイトに「ワッツ・マイ・サイズ(What’s My Size)」アルゴリズムや、「シー・イット・イン・マイ・サイズ(See It In My Size)」ツールなど、いくつものサイズ設定機能を追加した。また今年の8月には、自社の配送および輸送ビジネスの最適化(Business Optimizing Of Shipping and Transport、BOOST)ツールの運用を開始した。このツールは、データ、AI、機械学習を使用して在庫をトラッキングし、注文の充足と配送の統合整理を行う。

同社では、さらに多くの変更を進めている。同社は11月8日、コールズ(Kohl’s)のCEOであるミシェル・ガス氏が、1月に同社のプレジデントに就任することを明らかにした。同氏は今後18カ月以内にチップ・バーグ氏のあとを継いでCEOに就任すると、プレスリリースで報じられている。ガス氏はコールズでの業務以外に、以前はスターバックス(Starbucks)の欧州、中東、アフリカでの業務を監督していた。

同社は今春、新しいデジタルおよび新テクノロジー戦略担当のグローバル責任者として、エイミー・ゲルシュコフ・ボレス氏を招き入れた。同氏はリーバイスに入社するまでトラデシー(Tradesy)の最高執行責任者、ビットリー(Bitly)の最高データ責任者、アンセストリー・ドット・コム(Ancestry.com)の最高データ責任者、イーベイ(Ebay)のグローバルデータサイエンス責任者などさまざまな役職を歴任してきた。また同氏はカリフォルニア大学バークレー校(University of California Berkeley)のハースビジネススクール(Haas School of Business)とプリンストン大学(Princeton University)で教鞭をとった経験があり、オンラインのインテリアデザイン企業のヘイブンリー(Havenly)で諮問会議のメンバーを務めている。

ボレス氏は、リーバイスでの同氏の職務は、「当社のビジネス、消費者、従業員に関連する、デジタルおよび新テクノロジー戦略をグローバルで監督すること」であると、米モダンリテールに語った。その主要な部分は、同社がどのような種類の技術的機会を追求すべきかを評価するシステムを開発することだったと、同氏は語る。ボレス氏のリーダーシップのもと、同社は9月、シリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank)とのパートナーシップにより、はじめての新興企業ピッチデーを主催した。ここで同社はプラハ、ロンドン、パリなどの都市に存在する主要なテック系ベンチャー企業の幹部と対談し、技術的イノベーションのためにどの企業が最良のパートナーかを評価した。

ボレス氏は、同氏のこれまでの6カ月の職務と、リーバイスの将来に向けた構想について、米モダンリテールに語った。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

この職位に就くにあたっての目標について少し語ってほしい。就任の日から達成しようとしたことは何か?

この数カ月は、当社の新興テクノロジーの枠組みを作り上げることに多くの力を注いできた。Web3の分野とインダストリー4.0の分野の両方において、投資のイノベーションの機会をどのようにして共同で評価するかが中心となった。

Web3は、我々が現在認識しているデジタルの世界と物理的な世界との境界をあいまいにするものだ。ここには、分散したウェブコンテンツから、ブロックチェーン対応のアプリケーションなどまで、数多くの非常に魅力的な機会が存在する。そのため、Web3の分野には莫大な機会が存在している。

そしてインダストリー4.0の側では、設計、製造、サプライチェーンに関して、運用や生産も含めてテクノロジーに対応した素晴らしい機会が存在する。このため当社は、この新興テクノロジーの枠組みを構築し、この分野における、膨大で急速に変化し、拡大し続ける機会を管理された方法で評価できるようにするため時間を費やしてきた。

Web3とインダストリー4.0に関して、リーバイスは現在どのような位置にいるか?

当社は企業として、イノベーションを続けていく。したがって当社は、この分野の機会を評価するための枠組みに注力してきた。カスタマージャーニーにおいて、カスタマーエクスペリエンスを向上させる機会として識別した要素には、特に関心を抱いている。

周知のように、現在顧客が買い物をする方法は、最新のトレンドや商品を探すことから、自分にぴったりのサイズとフィットを見つけることまで、極めてインタラクティブなものだ。このため当社は、カスタマーエクスペリエンス全体をエンドツーエンドで考えており、デジタルおよび新テクノロジーによって、顧客のエクスペリエンスを向上および改善し、同時に当社にとってビジネスとしての事業価値を促進する方法を探し求めている。

最初の枠組みを作り上げる過程で、どのようなことを学んだか?

業界から得たベストプラクティスは、最良のイノベーション戦略が企業の総合的な戦略と密接に結びついているということだ。この新しいテクノロジーの枠組みやイノベーションを使って行うことのすべては、組織全体で3つの戦略的な柱と優先事項を推進するように設計されている。その3つの柱とは、ブランド主体であること、D2C第一であること、そして地理、チャネルなどについてポートフォリオを多様化することだ。実際のところ、当社が行ったのはデジタルおよび新しいテクノロジーを活用して、組織全体で優先事項を戦略的に推進する方法として、これらの柱を位置づけることだった。

業界から得られたもうひとつのベストプラクティスは、まず決定をくだすことと、それらの決定に関して組織全体で関係者の調整を行うため、十分に統制された枠組みを作り上げることに注力するという点だ。それらを使用して、何を優先し、何を優先しないかを判定できる。

当社の枠組みは、当社のDNAと、当社の企業価値を礎としている。当社は、すべての枠組みに妥当な財務分析と、多くの顧客中心の見識が含まれるようにした。そして、この枠組みはスケーラブルで繰り返し可能なものとして設計されているため、業界全体の情勢が進化し続けるなかで、この統制された手法を引き続いて適用し、急速に拡大し続けるすべての機会を評価できる。

プロジェクトを続行するかどうかを決定するとき、どのような種類の要因を考慮するか?

当社は、当社のブランド、DNA、企業価値との整合性の高さを、ほかの要因とともに重視する。これは当社にとって極めて重要なものだ。自社ビジネスの総合的な戦略との整合性の高さに注目する。もちろん財務分析も行い、自社にとって事業価値を生み出せることを確認する。そして、もっとも重要な点として、それがカスタマーエクスペリエンスに及ぼす良い影響を検討する。

[原文:Levi’s global head of digital strategy on the ‘huge amount of opportunity’ in the Web3 space]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Levi’s

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