中間圏にまで届くとは…。
火山が噴火すると火山灰や火山ガス、水蒸気が空高く噴き上がり、人間の活動にも気候にも深刻な影響をもたらします。大抵の噴出物はそこまでの高度には届きませんが、2022年1月のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火によって生じた噴煙は観測史上最高の高度を記録していたことが判明しました。
1月の噴火の高度を割り出すにあたって、オックスフォード大学とミュンヘン応用科学大学の研究者らは視差効果に基づいた新たな手法を活用。この噴火で生じた噴煙が大気を突き抜けて高度約35マイル(57km)に達し、火山灰はさらに0.5kmほど上昇していた可能性もあると明らかにしたのです。また研究者らは、今回初めて上空およそ31マイル(50km)からの中間圏に突入する噴煙が直接観測されたとも主張。チームの論文はScienceに発表されました。
通常、噴煙の高さを知りたければ、赤外線衛星で上端の温度を測ることで推断できます。対流圏では高度とともに気温が下がっていくからです。しかし噴煙が対流圏を越えて成層圏に到達した場合、高度とともに気温が上昇していくという成層圏の性質上、この方法では元から高温な火山噴煙の高さを正確に推測できない問題が生じてしまいます。
成層圏を突破した雲の高さを求めようにも衛星1基のみからの測定温度を当てにはできないため、チームは複数の気象衛星からのデータに基づいて噴煙の高度を求める新手法を用いました。トンガを見守る3つの静止衛星から得たデータに、物体を異なる地点から見ると見え方に差が出る現象「視差効果」を応用したのです。
筆頭著者のSimon Proud氏は「これほどの高さの雲は見たことがありませんでしたが、これは素晴らしい成果です」とオックスフォード大学のプレスリリースにてコメント。「さらに言うと、私たちが行なった(視差効果を用いる)やり方での高度の推算は、衛星の観測範囲が優れている今だからこそ出来たこと。10年ほど前であれば不可能でした」と続けていました。
Proud氏たちによれば、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴煙は噴火の15分後には地上15.5マイル(25km)に、その10分後には24.8マイル(40km)に到達。そして噴火の30分後、チームは上空21マイル(34km)から35マイル(57km)にかけて、直径が推定56マイル(90km)の火山灰のドームも観測したそう。
研究者らはこの観測手法を使って、複数の人工衛星で火山の噴煙の高さを算定するための自動化されたワークフローを開発するつもりです。また、火山学者と大気科学者が使う詳細なデータセットの生成にも適用したいとか。それでもなお、トンガの噴煙がそれほど高さに達した理由や、噴火が気候に及ぼした影響といった疑問の解明が残ります。
Source: Science, EurekAlert!,