旅客機の寿命は20~30年ほどだとされ、日本では老朽化した航空機の多くが国外に売却されたり、米国に運ばれて解体・スクラップにされたりしてきた。そんな中で日本航空(JAL)は1990年代後半に導入が始まった大型旅客機のボーイング777型機を国内で解体・リサイクルする取り組みを進めている。
JALが初めて国内で飛行機を解体したのは22年5月。「JA8945」(ボーイング777-300型機)を1か月ほどかけて解体した。11月9日には、次に解体する「JA772J」(ボーイング777-200型機)を前に羽田空港で記者発表会が開かれた。救命胴衣(ライフベスト)やシートベルトなど、不要になった装備や部品の再利用にも知恵を絞っている。
米国で解体するよりも環境負荷が小さい
飛行機を国内で解体する場合、米国にフェリー(回送)する必要がなくなるため、燃料消費や二酸化炭素排出の面で環境負荷が小さくなる利点がある。解体した機体の行方は(1)航空機用部品として再利用(2)リサイクル品として活用(3)金属、プラスチックなど素材ごとに再資源化、の大きく3つ。リサイクル率は96%以上にのぼると説明している。胴体の一部を切り出した部品など、JA8945から出たリサイクル品は12月頃から順次販売する。
記者発表会では、解体を控えたJA772Jの内部を報道陣に公開。カーペットや壁の一部はすでにはがされ、整備士が国内線ファーストクラスの座席のボルトを外して移動していた。この座席もリサイクルして商品化を検討する。3機目以降の国内解体については「検討中」だとしている。
飛行機自体が退役しない場合でも、新しいものに交換して不要になる装備や部品は多い。これらをリサイクルする取り組みも進む。そのひとつが救命胴衣で、JALでは年に2000着が捨てられてきた。整備士から「もったいない」という声があがり、21年10月にポーチに仕立て直して1000個限定で発売し、完売。サコッシュやペンケースも製品化した。22年2月には、クラスJの本革製座席を再利用したトートバックも売り出した。財布、コインケース、ペンケース、携帯ケースも製品化されている。シートベルトは、絵柄を入れてキーホルダーとして販売している。12月には、ボーイング787型機で使われた装備を置いた部屋が東京ベイ東急ホテル(千葉県浦安市)に期間限定でお目見えする。