ヴィクトリアズシークレットはポートフォリオの多様化を目指し、今度は社歴10年のD2Cアンダーウェアブランド、アドアミーを買収した。アドアミーの創業者兼CEOのモーガン・ハーモンド氏がこの買収の目的やヴィクトリアズシークレットに欠けているものについて語った。
ヴィクトリアズシークレット(Victoria’s Secret)はポートフォリオの多様化を目指し、今度は社歴10年のD2Cアンダーウェアブランド、アドアミー(Adore Me)を買収した。
購入前に自宅試着ができる魅力的なアドアミー
11月1日の朝に発表されたこの買収には4億ドル(約586億円)の前払い金が含まれている。今回の動きは、ヴィクトリアズシークレットが3月に1800万ドル(約26億円)でフランキーズビキニ(Frankie’s Bikinis)の少数株を取得したことに続いて2番目のM&Aとなる。ヴィクトリアズシークレットのCEO、マーティン・ウォーターズ氏はプレス発表でテクノロジーにフォーカスしているアドアミーは魅力的な買収対象だったと述べている。
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アドアミーのサブスクリプションサービスと120万人の常連客と合わせて、購入前に自宅で試着できるというサービスが特に魅力だったという。
アドアミーの創業者兼CEOのモーガン・ハーモンド氏はメールで次のように述べた。「当社はこの10年間で事業を大幅に成長させることができた。テクノロジーや購入体験、インクルーシブな品揃え、ブランド、チームをビクトリアズシークレットの成長の次の段階にもたらすことができるのはエキサイティングだ」。ヴィクトリアズ シークレットの幹部のコメントは入手できなかった。
多様性とインクルーシビティに欠けるヴィクトリアズシークレット
ヴィクトリアズシークレットは、細身とセクシーさを前面に押し出したイメージがサイズのインクルーシビティと多様性についての最新の視点と相容れないため、近年高まる批判にさらされている。そのような批判のなかにはアドアミーからのものもある。
アドアミーの戦略担当バイスプレジデントであるランジャン・ロイ氏が7月にGlossyに率直に語ってくれたところでは、ヴィクトリアズシークレットがイメージをリブランディングしている際のいくつかの欠点について、具体的には行動が伴っていないインクルーシビティについてのメッセージが問題だと指摘した。
「リブランディング以降、ヴィクトリアシークレットは全力を尽くし、多額を投じ、有名人を起用したりしているが、その方法は漠然としている」とロイ氏は7月にGlossyに語っている。
その際、ロイ氏はヴィクトリアズシークレットが2021年にサッカー選手のミーガン・ラピノー氏をブランドアンバサダーに選んだもののプログラムやキャンペーンに起用していないことに言及していた。ヴィクトリアズシークレットがようやくラピノー選手を起用したのは2022年9月のコットンの新スタイルのためのキャンペーンにおいてであった。
競合他社の台頭で競争激化の下着業界
ヴィクトリアズシークレットは相変わらず米国内最大の下着ブランドであり、2021年の収益は60億ドル(約8800億円)だ。しかし、ここ数年で市場シェアを失い、サードラブ(ThirdLove)アドアミー、パレード(Parade)といった主な競合他社が躍進している。最大のライバルの1社は、年間収益が30億ドル(約4400億円)を超えるエアリー(Aerie)。Z世代のお気に入りであるパレードやサードラブのようなブランドも台頭している。サードラブは、4月にやはりD2Cの下着ブランドであるキットアンダーガーメンツ(Kit Undergarments)を買収している。
ヴィクトリアズシークレットにとって、アドアミーの最大の強みは長年におよぶサイズのインクルーシビティと持続可能性の実績かもしれない。ヴィクトリアズシークレットは何年ものあいだのネガティブな報道や、今夏配信された同社のスキャンダルを描いたフールー(Hulu)のドキュメンタリーがあり、イメージに苦しんでいる。アドアミーは9月にB Corp認証を取得しており、2012年の創業以来、ブラはバンド(アンダーバスト)が30〜46、カップがA~G、アンダーウェアはXS~4Xという幅広いサイズを展開している。
[原文:Victoria’s Secret’s Adore Me acquisition is the latest consolidation in the intimates market]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)
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