中国 が再開すれば、ファッション、美容ブランドは売上回復に向けて準備することができる

DIGIDAY

Covidの規制が3年におよんでいる中国だが、ロックダウン中のアパートで発生した火災によって死傷者が出たことをきっかけに抗議デモが起こり、2022年12月にはいくつかの厳しい措置が緩和された。中国国民はようやく終わりを視野に入れることができ、実店舗の売上と消費者心理の両方にとって朗報となった。

とはいえ、全面的な再開の正式な日程は決まっていないため、今後数カ月間は、中国におけるファッションブランドや美容ブランドが機敏性を保ち、消費者とデジタルでつながり、さまざまなシナリオに備えていく上で非常に重要な時期となると専門家は考えている。Glossyの取材に応じた人々は、再開の時期は春から2023年末までの範囲になるのではないかと予測している。

マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey&Company)のシニアパートナーで、アジア消費者および小売業プラクティスを率いるダニエル・ジプサー氏は、「現在、急速な再開について大きな熱意があるが、さまざまな可能性をふまえたスケジュールの検討が重要になるだろう」と述べた。「先行投資を避けるには、機敏な判断がカギとなる」。

米国の情報プラットフォーム、モーニングコンサルト(Morning Consult)によると、特に2022年11月に全体的な消費者信頼感が2020年初頭の水準に近づいたことから、今後も不確実性が予想される。

「もともと物欲は強くなかったし、Covid以降はその意欲が下がっていた。(さまざまな)規制のせいで2022年は最低の状態になった」と話すのは、30歳のマーケティング専門家、ティミ・ティエン氏だ。彼女は2022年初めに上海で2カ月間のロックダウンに耐えた。新しい服を着る機会などほとんどなかったという。

国内ブランドが強い勢いをみせる中国

中国は、消費者の物理的な移動と旅行の計画を制限するゼロ・コロナ政策のため、ほかの多くの国とはCovidからの回復曲線が大きく異なっている。そのため、店舗の閉鎖やブランド間の生産およびサプライチェーンの問題が発生している。エスティ・ローダー・カンパニーズ(Estée Lauder Companies Inc.)の最新の決算報告では、大中華圏での物理的な販売に対するCovidの規制を理由に、アジア太平洋地域の売上は前年比7%減となったと報告されている。

現在の中国市場で厄介なのは、海外ブランドが政治、ビジネス、文化の変化に一度に直面していることだ。

特にCovidの最中に強い勢いを見せたトレンドは、中国の国内ブランドの台頭である。「国内経済や地域文化を支える方法として、地産地消が近年ますます注目を集めている」と、グローバルな屋外広告会社ジェーシードゥコー(JCDecaux)の中国空港セールスゼネラルマネージャー、ジョス・ルレ氏は言う。

2022年12月初めにマッキンゼーが発表した2023年度中国消費者レポートによると、アパレルカテゴリーでは、中国のトップ20ブランドのうち海外ブランドの市場シェアが2013年から2021年にかけて47%から40%に縮小した。このレポートでは市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)のデータを引用している。

ライブストリーミングが新しい消費トレンドをリード

中国のデジタルコンサルタント会社プロジェクト86(Projekt 86)の共同創業者カドリ・カロリン・コウツ氏は、国産化粧品ブランドを好む中国の消費者が増えていると述べ、スキンケアブランドのプロヤ(Proya)、フレグランスブランドのトゥサマー(To Summer)、カラーコスメブランドのフローラシス(花西子)など、彼女自身のお気に入りの国内ブランドを挙げた。杭州に本社を置くフローラシスは、設立当初はその研究開発能力に疑念が抱かれていたが、2022年10億元(約190億円)の5カ年投資計画を打ち出し、この分野に本格的に取り組んでいる。

米国のブランドが、トレンドに敏感な若い消費者とのエンゲージメントを目的にTikTokに集まったように、中国のブランドもTikTokの姉妹アプリ抖音(ドウイン)でプレゼンスを維持することのメリットに、これまで以上に気づき始めている。また、ライブストリームでのeコマースをサポートしている他のショート動画プラットフォームへの注目も高まっている。

2022年11月11日のダブル11ショッピングフェスティバル中、淘宝網(タオバオ)やJD.comなど従来のeコマースサイトの売上高は、全体で2.9%増の9340億元(約17.7兆円)となった。一方で国内情報企業シンタン(Syntun)によると、抖音や快手(クワイショウ)などの売上は146%増の1814億元(約3.4兆円)と急増している。

「ライブストリーミングは、(中国において)新しい消費トレンドをリードしている」と、eコマース代理店トリプルディジット(Triple Digit)の創業者でチーフエグゼクティブのサイモン・ツァイ氏は述べている。

何が起きても、迅速かつ効率的に対応できるように

急成長する中国市場から目を離さず、その地域への参入のタイミングを計ることも重要である。前四半期にアジアにおける売上全体が減少したにもかかわらず、エスティ・ローダー・カンパニーズは夏にアヴェダ(Aveda)を中国本土に拡大し、同社が中国のプレステージヘアケア市場に参入したことを示した。

「日常生活が徐々に回復するにつれ、友人との集まりが増えるし、女子にとって髪はとても重要だ」とツァイ氏は述べている。彼のクライアントの一社でスウェーデンのヘアケアブランドのマリアニラ(Maria Nila)は、現在、中国で好調だという。

上海在住の消費者であるティエン氏に、中国が再開されたらファッションや美容にもっと予算を使うかと尋ねると、まだわからないという答えが返ってきた。「旅行にはもっとお金をかけたいが、もしかすると旅行に行くときにもっとすてきな格好をしたいと思うかもしれない」と彼女は言った。

ブランドに対しては、プロジェクト86のコウツ氏は「次に何が起きても、迅速かつ効率的に対応」できるように、中国の現場にいる多くの人々や現地パートナーと協力するよう勧めている。

「この1年であまりにも多くの変化があった。以前はうまくいっていたことが、いまはもう通用しないかもしれない」と彼女は述べている。

[原文:Vibrators’ ‘big year’ at CVS and Target irks far-right pundits]

YALING JIANG(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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