ハースト 、コマースプラットフォーム「ファーストファインズ」を開設:Z世代のソーシャルショッパーがターゲット

DIGIDAY

ハースト(Hearst)が新たなコマースプラットフォームとして「ファーストファインズ(FirstFinds)」を開設した。ソーシャルメディアショッピングを阻む問題にこれで終止符を打ちたいと考えている。

ほかのパブリッシャーが過去に展開したいくつかのコマースマーケットプレイスの面影を残しつつも、ファーストファインズはZ世代がソーシャルメディアで商品を発見する過程から発想を得ているという。一方で、ハーストの狙いは、商品を発見し、その商品について詳しく知り、最終的に購入するまでの時間を短縮することにある。このプロセスがソーシャルプラットフォームではスムーズに運ばず、ユーザーがGoogle検索を利用するために、アプリからの離脱を余儀なくされることもしばしばなのだ。

「ソーシャルプラットフォームと競合するものではない。どちらかといえば、コミュニティプラットフォームのようなものだ」と、コンシューマプロダクツとパートナーシップを担当するシニアバイスプレジデントのシール・シャー氏は話す。ユーザーがほぼ毎日、意図的にアクセスし、気に入った商品に賛成票を投じ、最終的にはアフィリエイトリンクを使って商品を購入する。ファーストファインズに寄せる期待をシャー氏はそう語った。

ターゲットはZ世代とミレニアル世代

ファーストファインズは10月24日にベータ版を公開し、5人の担当チームが厳選した1000点以上の商品を掲載してスタートした。コマースとコンテンツの戦略策定を担当する執行役員のクリスチャン・アンダーソン氏によると、彼らコマースキュレーターの仕事は、たとえば「タイムラインで頻繁に目にする」、「今日初めてこの商品が販売されているのを見た」、「注文した商品の到着が待ち遠しく、配達状況を繰り返しチェックしてしまう」など、16項目の要件を満たす新商品を1日に50点見つけることだという。キュレーターが商品を選び、アンダーソン氏が商品ページの作成とウェブサイトへの投稿を担当する。

ファーストファインズの基本的な収益化モデルはアフィリエイトコマースだ。シャー氏はアフィリエイトのタイプや売上目標についてはコメントを控えた。しかし、第一の目標はすぐに儲けを出すことではなく、定着性のある顧客基盤を構築し、リピートユーザーに毎日ファーストファインズを訪れ、商品に投票してもらうことだと同氏は語った。

11月1日に正式にスタートしたファーストファインズでは、マーケットプレイス内の商品に「賛成票」または「反対票」を投じることができる。結果は当該商品のトレンドスコアに反映され、人気上昇中や話題の商品はサイトの上位に表示される。「長期的には、ファーストファインズをもっとも頻繁に利用する人々にアピールするようなマーケットプレイスに成長するだろう」とシャー氏は説明している。

開設間もない現在の品揃えは、どちらかといえば女性顧客向けの商品が優勢だ。「グリンチ」をテーマにした10ドル(約1472円)のアイシャドウパレットや、カントリーシンガーのキャリー・アンダーウッドがミュージックビデオで着用した129ドル(約18987円)のカウボーイブーツなどが並ぶ。その反面、シュープリーム(Supreme)とディッキーズ(Dickies)によるコラボ商品のコーデュロイパンツなど、男性陣にアピールするような商品も置いている。基本的に、ファーストファインズというプラットフォームの主要なターゲットはZ世代とミレニアル世代だ。

いま直面している最大の課題

ファーストファインズが直面している最大の課題は、オーディエンスに意図的にサイトに来て、積極的に利用してもらうことだ。eコマース専門のグロースコンサルタントとして活動するアレクサンドラ・グリーフェルド氏は、非技術系の企業にとって、TikTokやインスタグラムとアテンションを争えるだけのプラットフォームを構築するのは著しく困難だと指摘する。

デジタルマーケティングとeコマースのコンサルタントで、ベンゼットラーデジタルメディア(Ben Zettler Digital Media)を創設したベン・ゼットラー氏は、「結局のところ、これもアフィリエイトリンクをクリックさせるモデルのひとつだ」と述べている。ハースト固有のオーディエンスにファーストファインズを積極的に訪れ、買い物をしてもらうには、同社が運営するメディアブランドのショップと同じく、各メディアのサイトでプロモーションを展開し、いわゆる「トリクルダウン効果」に依存せざるを得ない。

ファーストファインズはハーストのメディアブランドとは別の事業体として運営されている。消費者が商品を発見するという目的でわざわざファーストファインズにやってくるかといえば、ゼットラー氏は懐疑的だという。

しかも、ファーストファインズには、特定の商品やブランド、あるいは製品カテゴリーを探すための検索機能がない。「ホット(IT’S HOT)」、「フレッシュ(IT’S FRESH)」、「ワイルド(IT’S WILD)」、「効果あり(IT WORKS)」、「グリーン(IT’S GREEN)」という5つの漠然としたカテゴリーを設け、各カテゴリーで人気上昇中や話題の商品を紹介するだけだ。

メディアのコマースチームとも連携予定

ユーザー基盤の構築にあたっては、ハーストが運営する各メディアブランドのコマースチームとも連携する予定だとアンダーソン氏は話す。ファーストファインズで取り上げた商品を、メディアサイトのショッピングコンテンツで宣伝し、ファーストファインズへのリンクを設けるという。さらに、ソーシャルメディアの管理者を置くことも考えている。

TikTokやインスタグラムでは買いたい商品についての話題がごく自然に持ち上がる。そのようなソーシャルプラットフォームのコメント欄を通じて、ゲリラマーケティング的な手法でファーストファインズをプロモートする計画だ。もちろん、新規ユーザーの開拓にはペイドマーケティングも活用するというが、具体的な広告費については明かされなかった。

バザーボイス(Bazaarvoice)のザリナ・ラム・スタンフォードCMOは、ファーストファインズをコミュニティ体験に昇華できれば、ほかのショッピングプラットフォームとの十分な差別化になり、ユーザーをリピーターにできる可能性はあると述べている。「なによりもまず、帰属感、価値交換、共通の関心を高めることが必要だろう。長く取引できる忠実な顧客を生むうまい仕組みだ」。

[原文:Hearst wants Gen Z’s social shoppers to use its new commerce platform, FirstFinds

Kayleigh Barber(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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