コンテクスチュアル広告 で実現する、2023年のメディアプランニング:サッポロビールとGumGumが目指すコミュニケーション

DIGIDAY

デジタル広告の「常識」が変わりつつある。2023年にはターゲティングから測定まで、デジタル広告を取り巻く環境は今とはまったく異なる形となり、従来のメディアプランニングがそのまま通用するかは不透明だ。

こうしたなか、存在感を増したのがコンテクスチュアル広告だろう。サードパーティCookie終焉後の代替ソリューションとして特にコンテクスチュアルターゲティングが注目されがちだが、ターゲティングはあくまで一機能にすぎず、いわば部分最適。考えるべきは、これからのメディアプラニング、コミュニケーションにおいてコンテクスチュアル広告が果たす役割だろう。

「正しいタッチポイントで適切なメッセージを消費者に届け、ブランドと消費者、双方のメリットを実現するのがコンテクスチュアル広告の目的」だと語るのは、コンテクスチュアル広告のソートリーダーであるGumGum(ガムガム)のマネージングディレクター、若栗直和氏だ。「消費者体験と広告評価を両立させることが、広告にとってのひとつの理想形となる。その実現を目標に、我々は10年以上前から取り組んできた」。

広告主側でもその認識は共有されているのか。サッポロビールのシニアメディアプランニングマネージャーとしてヱビスビールブランドのメディア展開を手掛け、コンテクスチュアル広告を積極的に活用してきた福吉敬氏は、こう指摘する。「サードパーティCookieによるターゲティングがスタンダードになったのは、ここ10年くらいの話にすぎない。それ以前から長らく続いてきた広告のあり方を、デジタル上で正しく再現しようとしているのがコンテクスチュアル広告の本質だろう」。

福吉、若栗の両氏は、2022年6月27日にDIGIDAYとGumGumが共催したイベント、「DIGIDAY FORUM LIVE:2023年のメディアプランニングはどうあるべきか? – 次世代コンテクスチュアル広告が実現する戦略的運用」に登壇。コンテクスチュアル広告の本質と、これからのコミュニケーションのあり方についてトークを繰り広げた。

「広告の本質」をデジタル化したコンテクスチュアル広告

2023年を見据えたとき無視できないトピックが、サードパーティCookie終焉だ。そのインパクトの大きさはポストCookieに対応するソリューションの数が示している。裏を返せば、広告主にとってデジタル広告におけるターゲティングやトラッキングが大きなウェイトを占めていたことを示唆しているとも言えるだろう。

もし広告主がターゲティングという機能を求めているのであれば、ブランドと消費者のコンテクストを合致させるというコンテクスチュアル広告の本質的な価値とのあいだにギャップを生じさせることはないのだろうか。若栗氏は「その可能性は低いだろう」と指摘する。

「広告主が注視するポイントのひとつがKPIの達成率だ。ブランド訴求や認知・好感度向上がKPIの場合は、コンテクスチュアル広告でも期待に沿った結果が出せる。むしろ好感度などは、Cookieを利用した配信より向上している場合もある。こうした明確な実績があるので、GumGumが目指してきたコンテクスチュアル広告のあり方についても、広告主の理解が得られている」。

コンテクストに合致した広告の効果がデータ上でも実証されているわけだが、福吉氏もそれを裏付けるように「自分が広告を考えるときに重視するのは、消費者の興味だ」と話す。たとえば、登山のときに飲むビールとしてヱビスビールを訴求しようと考えた場合、デモグラフィックデータによるターゲティングはほぼ意味がない。登山にもビールにも関心がない20代男性もいるし、週末には山に登り、頂上でビールを飲むのが趣味という60代女性もいるだろう。

「つまり、この場合にすべきことは、『登山が好き』『ビールを飲む』という2点に興味がある消費者を見つけ出し、適切なタイミング、適切な内容で広告を届けることだ。これは、これまでのターゲティングでは実現できない」。

福吉 敬/1972年北九州市生まれ。多摩美術大学卒。国内酒類メーカーから外資メーカーを経て、2014年サッポロビール株式会社に入社。2015年9月より、宣伝室のデジタル担当に着任。2021年4月より、ヱビスブランドにジョインし、ヱビスのコミュニケーションプランニングを担う立場となる。デジタルメディアを主要フィールドとし、複層的メディアプランニングから分析設計、イベントPRまで多岐にわたる業務を担当。直近は、コンテンツコミュニケーション、ファンコミュニケーションに力点を置いたプランを展開中。

重要なのは消費者のモーメントを捉えること

福吉氏も、かつては細かくセグメントを設定しターゲティングをしていたというが、ある体験をきっかけにターゲティングに疑問を感じるようになったという。「自分は歴史関係のコンテンツをよく見ているが、そのために実際の年齢にはまったく合致していない入れ歯の洗浄用品や、介護用マンションの広告が表示されるようになった。このターゲティングに何の意味があるのか。そこで、ふと我にかえった」。

もちろん、より多くのリーチ獲得を目指し、いわゆるマス的な展開を考えた場合にはデモグラフィックによるセグメンテーションも有効であることは間違いない。しかし、価値観の多様化が進み、10年前と現在で「30代男性」の興味関心が同じとは限らない。同様に、興味・関心を軸に絞り込むのであれば、デモグラフィックで詳細にセグメンテーションする意味はないということになる。

こうした状況のなかで福吉氏が重視するのは、「消費者のモーメントを捉える」ことだ。ターゲットとする消費者がその時々で抱いている関心に集中して分析することで、コミュニケーションの効果は上がっていく。

「そもそも広告の本質とは、自分たちの製品についての消費者の理解促進と、購買を実現することにある。そのために必要なのは、広告を表示する面を持つメディアであり、Cookieは広告にとって必要不可欠なものではない。Cookieの代わりに必要なのが、明確なターゲットとなる消費者像と適切なモーメントを言語化することだ」。

固定観念が招く硬直したコミュニケーション

とはいえ、マーケティングの初期段階においてはデモグラフィックデータにもとづいて購入者を想定してしまいがちだ。結果、自社商品について固定観念にしばられたまま、過去の経験に基づいてペルソナを設定し、メディアプランを考えることになる。この、セオリーによって習慣化された一連の流れが、現状での大きな課題だと福吉氏は指摘する。

「ペルソナの設定については、いま現在どうなっているのか、データを見て考えることが重要だ。購入データ、販売店のデータ、サイトのアクセスデータなど、社内には、無料で見られるデータがそれこそ山のようにある。こういったデータを分析し、言語化してペルソナを設定する。これは簡単なことではないが、最適なコミュニケーションのためには欠かせないプロセスだ」。

データの蓄積、分析、活用という観点は、コンテクスチュアル広告においても重要だ。メディアごとのページ内におけるコンテンツを正しく理解できなければ、高いブランド適合性(ブランドスータビリティ)を実現することができない。GumGumの技術では、広告が表示されるページの内容について、言語とビジュアルの情報をほぼ人間と同じレベルで解析し、単語の使われ方も含め、正しく文脈を把握することができるという。

高いレベルで多様なフォーマットのコンテンツの文脈を理解することができるという(画像クリックで拡大)

さらに若栗氏は、Contextual Insights & Reportingというレポートの提供も開始したと語る。これは、過去に配信してきた広告のパフォーマンスをデータベース化したもので、これにより広告主とメディアのカテゴリーの親和性を事前に把握できたり、あるいは、予想もしていなかったコンテキストが消費者にフィットしていたことが可視化されるようになる。「検証はもちろん、今後のメディアプランニングにも大きく貢献できるものと思う」と若栗氏も自負する。

GumGumが提供するContextual Insights & Reportingのイメージ(画像クリックで拡大)

あるべきメディアプランニングの方法とは

では、コンテクスチュアル広告を最適化するためにメディアプランニングはどうあるべきだろうか。これはある意味、従来とは異なる、消費者に合わせたオーダーメイドに近い発想が必要になるだろうと福吉氏は語る。そうなると、必然的に検討・検証するべき要素が、質・量ともに増加・深化することになる。

「私が考えるメディアプランニングとは、単なる広告出稿だけではない」とし、福吉氏は続ける。「ブランドサイトやそれ以外のメディアで発信していくコンテンツも含めて、トータルで文脈を揃えていく必要がある」。

そのために福吉氏が進めているメディアプランニングの方法が、広告やメディア運用の担当者、クリエイターなどが一同に集まり、議論を進めていく「ラウンドテーブル」だ。関係者全員が顔をあわせ、方向性をそろえ、綿密にコンテクストをすり合わせたうえで、広告なら広告、クリエイティブならクリエイティブと、各自がそれぞれのミッションを進めていく。

一般的にメディアプランニングは意思決定者の方針を受け、媒体やクリエイティブが順次検討されていくというように、上から下へ流れていくなかで順次組み立てられていくものだ。福吉氏が進めている、全員が並列で議論を重ね、合意形成を図るというこの方法は、明らかに関係者にかかる負荷が大きくなる。

「全員で整合性を取っていくのは、確かに難しく、しんどいことではある」と福吉氏も認める。「それでも、これをやり切らなければ、消費者にコンテクストを理解してもらい、商品を買ってもらうというゴールにたどりつけないだろう」。

若栗氏も、「そのようなプロセスで得られたインサイトは、デジタル以外の媒体を含めたメディアプランニングや、ブランド戦略にも活かせるだろう」と同意する。「このようなラウンドテーブル型のチーム運営は、広告主にとって、理想に近づく手法だと感じる」。

若栗 直和/20年以上にわたり、広告とブランディングを専門として活動。2000〜2017年の間、広告会社Ogilvy(オグルヴィ)に在籍し、香港・上海・東京・シンガポール・台湾などを拠点に活動。アジア・グローバル向けのブランド戦略・クリエイティブ開発・施策展開に従事。2018年から米・GumGum(ガムガム)の日本代表として国内事業の統括を行い、次世代のコンテキスト広告の開発・普及に取り組んでいる。

2024年のコンテクスチュアル広告

2023年、デジタル広告は前提となるテクノロジーを含め、そのありようが大きく変わる。そして翌年の2024年には、新たな「常識」のもと、どのようなコミュニケーションの手法が確立されているのか。未来のことは誰にもわからないが、自らが進もうとしている方向について福吉氏はこう語る。

「サッポロビールとしては、ゼロパーティデータを保有している『確実につながっている顧客』のデータを分析しながら、アノニマスへのコミュニケーションを拡大していくことになると思う。ただ、基礎にあるのがゼロパーティデータである以上、精度の高いものになるだろう。重要なことは、見えている顧客だけを対象にするのではなく、自分たちが知らない消費者に向けても、網羅的なコミュニケーションを続けることだ。それが態度変容につながる可能性もあるのだから」。

若栗氏は「2024年のメディア環境はゼロパーティデータ、ファーストパーティデータ、共通ID、プラットフォーム独自の取り組みなど、いろいろなものが共存してエコシステムを形成している。そのなかで、コンテクスチュアル広告も埋没することなく存在感を発揮していたいと考えている」としつつも、こう強調する。「しかし、我々が何よりもやりたいのは、消費者に喜んでもらえる広告作りだ」。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 渡部幸和

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