コンピューターやスマホなど現代文明に欠かせないトランジスタの原理がよくわかるムービー

GIGAZINE
2022年11月05日 09時00分
動画



電気信号を増幅したり、電気信号によって電流のオン・オフを制御したりするための素子がトランジスタです。トランジスタは論理回路を組み立てるために必要な部品で、今日のコンピューターの進化はトランジスタの進歩と共にあるといっても過言ではありません。そんなトランジスタがどんな仕組みなのかを、さまざまな技術をムービーで説明するYouTubeチャンネル・The Engineering Mindsetが解説しています。

How Transistors Work – YouTube
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トランジスタはよく水道で説明されます。トランジスタを流れるベース電流がパイプ(pipe)を流れる水です。このパイプの水流は栓(Disc)によってせき止められています。そして栓は、パイプの横に流れる細い管にある「Swing gate」と連動しています。


細い管に少量の水が流れるとSwing gateが開き、連動してパイプの栓が開きます。つまり、細い管に水を流せばパイプの水も流れるという仕組み、ベース電流によって、別の部分に流れる電流を制御しているというわけです。


もちろん実際のトランジスタの中に水が流れているわけではありません。トランジスタに使われるのは「半導体」と呼ばれる物質です。世の中にある物質のうち、電気を通しやすいものを「導体」、電気を通しにくいものを「絶縁体」といいます。そして、その中間に位置するのが半導体です。


半導体とはどういうものなのかを理解するには、原子の構造を理解する必要があります。以下は原子の構造を簡単に示したボーアモデルです。中央にある黒い球体が原子核(Nucleus)、緑色の球体が電子(Electrons)、電子の軌道になっているのが電子殻(Orbital Shells)です。そして、一番外にある起動が最外殻(原子価殻、Valence shells)で、その周囲にあるのが伝導帯(Conduction Band)です、


伝導帯というのは最外殻の外側にあるエネルギー帯で、この伝導帯に励起した電子は比較的自由に振る舞うことができます。絶縁体(Insulator)は最外殻の電子が伝導帯に励起しにくいため、電気が流れにくい性質を持ちます。逆に金属などの導体は、最外殻の電子が伝導帯まで容易に励起するため、電気が流れやすいというわけ。そして、半導体は熱や電気が加えられると電気の通しやすさが変わるという性質を持ちます。


トランジスタに使われる半導体は、ケイ素にリンやホウ素などの不純物を注入した「不純物半導体」で、N型半導体とP型半導体の2種類があります。


ケイ素(Si)の最外殻にある電子4つは他原子の反応に使われる「価電子」であり、いわば1つの原子が4つの手を持っているような状態です。そして、自分の価電子1つと別の原子の価電子1つを組み合わせた1ペアの電子対を共有する「共有結合」によって、1つのケイ素原子に4つのケイ素原子が結合します。


そして、ドーピングと呼ばれる作業でこのケイ素の構造にリン(P)を注入するのがN型半導体です。リンは価電子を5つ持つので、価電子4つのケイ素の構造の中に組み込まると、どうしても電子が余ってしまいます。


逆に、アルミニウム(Al)やホウ素など、価電子を3つしか持たない原子をケイ素構造に注入するのがP型半導体です。P型半導体では、N型半導体とは逆にどうしても電子が足りなくなってしまいます。


このN型半導体とP型半導体を接合すると、接した面で電子の交換が行われます。ただし、あくまでも接した面で電子が動くだけで、半導体全体では電子が移動しません


しかし、この半導体2つに一定以上の電圧をかけると、電子が移動します。


トランジスタはこのN型半導体とP型半導体を組み合わせた構造になっており、NPN型とPNP型の2種類が存在します。


トランジスタにはエミッタ・ベース・コレクタという3種類の極が存在します。NPN型の場合、片方のN型半導体にエミッタが、中央のP型半導体にベースが、もう片方のN型半導体にコレクタがつながっています。


エミッタとベースにわずかな電流を流すと、エミッタ側のN型半導体とP型半導体の間で電子の移動が始まります。


そして、エミッタとコレクタをつなぐと電流が流れます。エミッタとベースにわずかな電流を流すことで、エミッタとコレクタの間に大きな電流変化が生まれるため、トランジスタは入力した信号を増幅したり電流のオン・オフを切り替えたりすることができます。この「電流のオン・オフ」で2進数の0と1を表現できるため、トランジスタはコンピューターの論理回路を構成するために重要な部品となるというわけです。


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