TikTok、フルフィルメント人材を募集:越境EC支援でAmazonに対抗か

DIGIDAY

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TikTokは、米国内のグローバルフルフィルメントセンターのスタッフを募集していることが、専門家ネットワークサイトであるLinkedInに投稿されている複数の求人情報によって明らかになった。この動きは、国境を超える取引への要望を収益化する計画と見られている。

中国の人気短編動画アプリであるTikTokは、米国内にフルフィルメントセンターを設立することについて公式には表明していないが、同社はシアトルを拠点とするグローバルフルフィルメントセンターのチームに参加する「ビジネスソリューションおよびマーチャント開発マネージャー」を募集している。この人物は、同社のフルフィルメントセンターのビジネス開発を担当し、主要な売り手、3PL(サードパーティーロジスティクス)、物流業者との戦略的関係を管理することになる。同社はこのほかにも、eコマースのグローバルサプライチェーンやロジスティクス分野のオペレーション・リサーチ・エンジニアなど、複数の職種を募集している。

eコマースの専門家は、TikTokはAmazonのマーケットプレイスでの成功に貢献した、FBA(フルフィルメントby Amazon)配送のストレージ部分を再現しようとしているようだと、米モダンリテールに語る。しかし同時に、TikTokが米国に172のフルフィルメントセンターを持つAmazonと競争するには、まだ長い道が控えていると警告している。

中国メーカーを支援

TikTokの広報担当者は、このニュースを最初に報じたアクシオス(Axios)に対し、TikTokが、同社がすでにeコマース運用を行っている英国および東南アジアにおいて、売り手に対して「幅広い商品オプションと配送オプション」を提供すると語った。

ピュブリシス(Publicis)の最高コマース責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、米モダンリテールとの対談で次のように語った。「多くの人がTikTokで買いたい商品を発見するが、それが米国の店舗で購入できる商品であることが多い。しかし、TikTokで自社商品に注目してもらおうとする海外の製造業者もいる。特に目立っているのが中国の工場だ」。TikTokはこれらの企業と提携して広告を販売し、彼らの拠点へのトラフィックを促進することで、彼らの商品をプロモートしている。

同氏は、手頃な価格の衣類、化粧品、家庭用品までのあらゆるものを米国や欧州に供給したいと考える中国の製造業者が山ほどいると付け加えた。そこでTikTokは、こうしたさまざまな市場にあるオフショアメーカーが、米国内で商品を保管するための場所を確保する支援がしたいと考えている。TikTokは、これらのメーカーが商品をより迅速に配送でき、国境を超える取引を行うために必要となる関税やすべてのロジスティクスを支援することができると、ゴールドバーグ氏は語る。同時に、TikTokはこれらの企業からさらに多くの広告を獲得することができるようになる。

TikTokの親会社であるバイトダンス(ByteDance)も、中国で同様なアプリのドウイン(Douyin)を運用しており、こちらは主に中国で製造された国産商品を販売している。ドウインは米国に拠点を保有しておらず、フルフィルメント戦略も越境販売に特化していないと、ゴールドバーグ氏は指摘している。一方、ピンドゥオドゥオ(Pinduoduo)アリババ(Alibaba)など、米国に進出しているほかの中国EC企業はすべての商品を中国から出荷している。

また、TikTokは7月、自社のeコマース運用をサポートするため、英国に倉庫施設を設置しようとした。それとは別に、今年のTikTokの広告収益が、2021年の3倍にあたる120億ドル(約1兆7800億円)と予測されていることが、ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)の調査で明らかになった。

越境に活路を見出す

eコマースのグローバルな成長を重視している企業はTikTokだけではない。Shopify(ショッピファイ)は9月、国際市場へのさらなる拡大を目的とし、海外での販売やそれに伴うコンプライアンス、関税、為替レート、配送などの複雑な作業を小売業者に代わって行うことでマーチャントを支援する、Shopify Markets Proという新しいプレミアム有料サービスを立ち上げた

どちらの例も、ホームである自国の市場での成長が停滞したとき、eコマース企業が国際市場への依存を強めることを示している。中国では成長がこの半年間で劇的に低下した。バークレイズ(Barclays)は、不動産不況の長期化・深刻化、Covidの締め付けの強化、外需の低迷を背景に、中国経済の成長率に関する予測を3.1%から2.5%に下方修正した

アスピレーション(Aspiration)、コルゲート(Colgate)、マイフィットネスパル(MyFitnessPal)などのブランドとTikTokで協働するテック対応の成長マーケティング企業であるパワーデジタル(Power Digital)で最高成長責任者を務めるロブ・ジェウェル氏は「TikTokの野望は、Amazonが独占してきたエンドツーエンドのユーザーエクスペリエンスを保有することだ」と述べている。「同社はすでに、いくつかの商品リリースによってこれを示してきた。TikTokの広告をクリックすれば、TikTok内に居ながらTikTokで商品を見ることができ、サードパーティーのウェブサイトで購入手続きが行われる」と、同氏は付け加えている。

ソーシャルコマースへの意欲

しかし現在のところ、TikTokは消費者中心であり、ブランド中心ではないと、市場調査企業のガートナー(Gartner)でディレクターアナリストを務めるクラウディア・ラッターマン氏は語る。「TikTokはアプリ内eコマース機能を導入し、消費者ニーズを合わせてさらに拡大を目指すことで、バイラル化した商品での成功に乗じてきた」と、同氏は述べている。「すでにプラットフォームを使って商品検索をしている場合、消費者が商品を簡単かつ効率的に購入できるという事実は、eコマースに注力し、その直接的なパートナーシップを成長させる戦略をとっていると思われる」。

2022年2月のガートナー消費者コミュニティ(Gartner Consumer Community)調査によると、14%のユーザーが、ソーシャルメディアプラットフォームを通じて、直接ブランドのショップから購入したと回答している。

フルフィルメントへの動きをまとめると、TikTokがソーシャルコマースに非常に興味を持っていることがわかると、ゴールドバーグ氏は述べる。

TikTokmademebuyitのハッシュタグは、消費者によって10億回以上も使用されてきた。このため、TikTokはそこにチャンスがあることを理解している。同社は、広告の販売において素晴らしい成果をあげているが、コマースにおいてより顕著な役割を果たすことを、大きな成長の機会のひとつだと考えているのだろう」と同氏は述べている。

[原文:Decoding TikTok’s fulfillment strategy]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via TikTok

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