アプリから遠心力で淹れるSpinnのコーヒーって美味しいの?

GIZMODO

全自動でエスプレッソもレギュラーも自分好みに、手入れも楽とくればお値段にも納得か。

ベッドにいながらアプリ操作だけで淹れられる利便性と、豆の挽き具合もカスタマイズできる本格性が合体した、ニュータイプのコーヒーメーカー「Spinn」。まだ北米でしか買えませんが、米GizmodoのBrent Rose記者が2カ月ほど使って詳細レビューしてますので、コーヒー好きは以下、ご覧ください!


僕はコーヒー好きなんですが、カフェに行ったらたいていエスプレッソ系のものを頼みます。だいたいはカプチーノかフラットホワイトで、ちょっと特別な、ぜいたく感が感じられるんですよね。っていうのは、家にエスプレッソマシンなんて置くスペースが(お金も)あったためしがないし、普通のコーヒー道具なら持ってるし、ポッドを入れていろんなコーヒーを飲めるシステムも好きじゃないんです。でも、僕のキッチンカウンターにこのシルバーの丸っこいやつが登場し、どんな種類のコーヒーでも淹れてくれるようになった今、僕はもう昔の生活に戻ることはできなくなりました。

Spinnコーヒーメーカー

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これは何?:遠心力を使って、レギュラーコーヒーからエスプレッソまで、どんなタイプのコーヒーでも作れるマシン。

価格:1,000ドル(約14万9000円)から。

好きなところ:コーヒーがフレッシュでめちゃくちゃ美味しい、ポッドのゴミも出ない、ベッドにいながらコーヒーを淹れられる、いろんな種類のコーヒーの淹れ方をカスタマイズもできる、掃除も自動で簡単、別売りのミルク泡立て器で素晴らしい泡ができる。

好きじゃないところ:安くない、レシピによってはコーヒー豆の種類に合わせたカスタマイズが必要、すごくダークな・油ぎった豆は使えない、ミルク泡立て器は微調整ができない、メンテナンスのコストが必須、アプリにもマシンにもまだちょっとバグ、エラーがある。

夢じゃなかった

SpinnはKickstarter出身で、言ってることが大風呂敷だったんで、企画倒れになる予感もしてました。完成までに数年かかりましたが、今じゃ誰でも(訳注:北米では)買えるようになり、しかもやるって言ったことをだいたい実現しています。基本的にSpinnは豆を挽くところから自動でできる、コーヒー&エスプレッソマシンです。実現のカギは、遠心力でした。

作るときの流れはこうです。まず、作りたいコーヒーの種類をスマホアプリかマシン本体の7つのプリセット(うち4つはカスタマイズ可能)から選びます。豆が本体上の容器からステンレスのグラインダーに落ちてきて、作りたいコーヒーの種類に合った設定で挽かれます(レギュラーコーヒーなら粗挽き、エスプレッソは細挽き)。最小では、直径0.01インチ(約0.25mm)までの細挽きが可能です。挽いた豆は小さなバスケットに投入され、バスケットが超高速で回転(最大毎分5,000回転)する間、複数のノズルからお湯が噴射されます。この回転が、「Spinn」たるゆえんです。遠心力によってお湯が豆の間を押し出され、抽出口を通ってカップに落ち、高級なカフェで出てくるような濃厚で泡立ったエスプレッソができあがります。レギュラーコーヒーもできるし、または仕組みは違えど、コールドブリューをだいたい再現したものもできます。

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キッチンでの収まり具合
Image: Brent Rose – Gizmodo US

Spinn本体のサイズは高さ13.5インチ、幅8.5インチ、奥行14インチ(約34.3×21.6×35.6cm)。僕はキッチンガジェット好きですが、カウンター上のスペースを確保するのはいつも苦労してます。幸いSpinnはキッチンの吊戸棚の下に、上にも十分な空間を確保しつつ収まったので、今まで使ってたコーヒーの道具(電気ケトル、Bodumのハンドドリップカラフェ、エアロプレスとその付属品)と同じくらいか、若干コンパクトにできました。複雑なデバイスにしては、立ち上げに数分しかかからなかったのも驚きでした。電源を入れて、アプリ経由でWi-Fiにつなげて、ファームウェアをアップデートしてる間に水のタンクを軽く洗ってフィルターを取り付けて(Brittaみたいな、水道水を濾過するもの)、それで完了です。

マシンをセットアップしたら、本体上部の容器にコーヒー豆を入れます。この部分には最大18オンス(約510g)入れておけるので、減ってきたら一般的な1ポンド(約450g)入りの袋を開けてザッと入れて補充できます。背面にある水のパネルは傾けて取り外しできるので、水道の蛇口から水を入れて、再度Spinnに取り付けます。ドリップトレイは捨てやすいように、簡単に引き出せる構造です。僕がすごく気に入ったのは、使用済みの豆が入るトレイです。このトレイに入る段階では豆の水分がほぼ飛んでいて(遠心力のおかげ)、軽いしカビもそんなにすぐ生えません。ポッド式のコーヒーマシンみたいに、プラスチックやアルミのゴミも出ません。使用済みの豆は、家にある植物の土に混ぜておくと肥料代わりになるようです。

もちろんSpinnアプリがあります

アプリではいろんなことができます。まず、アプリからコーヒー豆をオーダーできます。Spinnはマシンを作っただけじゃなくて、ローカルなコーヒー焙煎店を集めてSpinn Marketplaceを構築したんです。アプリの中で「コーヒークイズ」があり、そこで自分の好きなテイストとか飲み方を答えると、自分の好きそうな豆の種類をオススメしてくれます。近くにあるローカルな焙煎店まで絞り込むこともできます。ただこれは一長一短で、何が「短」かというと、ローカルな焙煎店ってスーパーとかより高めな豆を扱ってることが多いし、Spinn経由だと配送料もかかることです。「長」のほうはというと、一部の焙煎店は豆ごとに最適なお湯と豆の量を設定してて、アプリで豆の袋をスキャンすると、Spinnにその設定をロードできるんです。普通、焙煎店は豆を売ったらそれきりですが、Spinnだと焙煎店的に理想の淹れ方を家庭で再現できます。しかもそれはお仕着せじゃなくて、さらにユーザー側が好きなようにカスタマイズも可能です。

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Spinnアプリのスクショ
Image: Brent Rose – Gizmodo US

アプリからコーヒーのレシピ(2ダース以上あります)を選ぶと、豆の量、お湯の量というふたつのパラメーターを設定できます。たとえばリストレット(カプチーノやラテで使う、少量の甘いショット)を1液量オンス(約30ml)作るには、デフォルトでは豆を12g使います。でも豆が浅煎りだったら、酸味が強すぎないようにお湯の量を増やしたほうがいいかもしれません。リストレットの場合、豆は10〜15g、お湯は0.7〜2.2液量オンス(約21〜65ml)の間でカスタマイズ可能です。細かい設定ができると、小さな違いでコーヒーの味が変わるのを実感できて、コーヒー好きとしては魅力です。

個人的には、Spinnにはさらに細かい設定ができる、プロとかギークモードがあるといいなと思ってます。たとえば豆の挽き具合とかお湯の温度、スピンの速度といったことまで変えられるように。今のところユーザー側ではそこまでカスタマイズできませんが、マシン自体はそれを裏で調整してます。たとえばレギュラーコーヒーは豆を粗く挽いて、スピン速度は毎分1,500回なんですが、エスプレッソだと豆は細挽きで、スピンは毎分4,500回転になります。あとはコールドブリューの場合、もちろんお湯じゃなくて水で抽出してます。

Spinnで入れるコーヒーは美味しい?

どんなにすごい仕組みでも、コーヒーが美味しくなきゃ意味ありません。が、幸いSpinnで淹れたコーヒーは美味です。ていうか本当に、すごく美味しいんです。一番はエスプレッソ系で、淹れる直前に豆を挽くから新鮮だし、スピンすることで豆の風味が引き出されるんでしょうね。エスプレッソもリストレットも、高級なカフェのそれみたいに、滑らかなクレマ(泡)を表面にたたえ、味も最高です。淹れる時間は1分くらいなので、僕はだいたい夜寝る前にカップをセットしておきます。で、朝ベッドから出る前にアプリから飲みたいコーヒーの種類をタップすると、キッチンにつく頃にはコーヒーが入っている次第です。豆を挽くグラインダーの音はそんなに静かじゃないですが、すごくうるさいってほどでもなく、抽出部のスピンする音もそれほどじゃありません。

レギュラーコーヒーもSpinnですごく美味しいのができましたが、若干の手順が必要でした。豆はSpinn Marketplaceで買ったものでしたが、焙煎店がその豆に最適な設定を入れてなかったので、デフォルトのレギュラーコーヒー設定を使ったところ、やや薄く抽出不足な感じがしました。まずくはないんですけど、もうちょっと濃い目が好きかなと。なのでSpinnアプリのスライダーで豆とお湯の量を好きな濃さになるまで調整して、最終的にはぴったりの設定を探し出し、それをレシピとして保存しました。設定を保存しておけば、コーヒーは毎回同じ味で出せます。家でいつでもぴったり同じコーヒーが飲めるのは、僕にとっては初体験です。

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Spinnで淹れたコーヒー
Image: Brent Rose – Gizmodo US

Spinnで淹れるコーヒーの中で、僕的に「まあまあ」レベルなのはコールドブリューです。コールドブリューにも「Nitro」と「Drip」の2タイプあって、Nitroは高速(1分くらい)で淹れることができます。高速スピンすることで、いわゆる「Nitro」なコールドブリューの特徴ともいえるクリーミーな泡が浮かびます。「Drip」のほうはスピンはそこまで高速じゃなくて、水を少しずつ加えてゆっくり淹れるので、できあがりに数分かかります。ただどちらも「すっきり」といえばそうだけど、ちょっと水っぽく感じられて、デフォルトの設定が要改良だと思います。カスタマイズでコーヒー豆の量を増やしたら美味しくなったんですが、本物のコールドブリューの代わりになるとは思いません。でも1分で淹れられるんだから、そこそこの価値はあると思います。

テストのときに使った豆は、最初はOnyx CoffeeのSouthern Weatherというのと、Espresso RepublicのMidnight Roast Decafというので、どちらもSpinn Marketplaceで買いました。アプリは両方の袋を認識したんですが、焙煎店がその豆に対してそれ用のプロファイルを設定してませんでした。両方使い切ったところで、僕はFire Department Coffee(利益の10%を負傷した救急隊員に寄付してる)のShellback EspressoとDecaf Medium Roastを買い、最終的にはPeet’sのDecaffeinated Mocca Javaを買いました。今まで、豆とか焙煎が違えば味も変わることは知ってましたが、ここまで厳密にコーヒーを淹れたことがなかったので、豆だけを変えながら同じ方法でコーヒーを淹れたのは初めてです。本当にこだわろうと思えば、今までよりずっと科学的なテイスティングができるんですね。それぞれの豆やレシピごとにツボな比率を見つけて、後で使えるように保存するのも楽しいです。

ミルク泡立て器は完ぺきじゃないけど、とりあえず買うべき

ここまで牛乳のことを書いてませんでしたが、カプチーノとかラテといったエスプレッソ系コーヒーではもちろん重要な要素です。でもSpinn本体には泡立て器が内蔵されてなくて、Spinnを買うときに50ドル(約7,400円)追加するとバンドルされてきます。ちなみに単体で買うと100ドル(約1万5000円)です。僕がテストしたのはProパッケージで、Spinn本体にミルク泡立て器とカラフェがセットになってました。ミルク泡立て器は高さ8インチ、幅3.75インチ(約20×9.5 cm)のシルバーの円筒形で、Spinnの横に並べてしっくりくるデザインです。使い方は、牛乳を内部の線まで入れて(どの線まで入れるかは、作るコーヒーの種類ごとにアプリが教えてくれます)、ボタンを押すだけ。ボタンを1回押すと熱い泡、2回押すと温かい牛乳、3回押すと冷たい泡ができます。できあがりには1分もかからず、ベースから外して、コーヒーに注ぎます。内部はノンスティック加工なので、シンクでちゃちゃっと洗ってベースに戻します。泡立ちは牛乳がベストでしたが、いろんな代替乳でもそれなりにはできて、牛乳の次によかったのはオーツミルクの普通より濃い「バリスタ・スタイル」のものでした。

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Spinnのミルク泡立て器でできたフォームミルク
Image: Brent Rose – Gizmodo US

ミルク泡立て器はちゃんと機能はしますが、完ぺきでもありません。カプチーノとかマキアートみたいな、すごく濃いリッチな泡がほしいときには素晴らしいんですが、コルタードみたいな、あったかい牛乳に薄く泡がのってる状態を作る設定がそもそもありません。そういう泡を作るには、最初は内部のウィスク(泡立て器)を外して温めモードで使い、その後ウィスクを取り付けて(指を牛乳で汚しながら)、数秒間泡立てる、ことになります。イマイチですね。

レシピの中には、コーヒーに注ぐ前に牛乳をスプーン2、3杯捨てるように書いてあるものもあり、フラットホワイトとか作るときは120〜150ml入ってるからいいんですが、コルタードの場合牛乳は60mlくらいしかないんで、全部泡になります。美味しいんだけど、本来のコルタード(エスプレッソと温かい牛乳半々)じゃありません。泡が多すぎるときは、ちょっとかき混ぜたりすることもあります。ミルク泡立て器のせいで全部台無しってことはありませんが、Spinn本体がものすごくカスタマイズ可能なコーヒーマシンなので、泡立て器がもうちょっとスマートじゃないのは不思議です。あと、ミルク泡立て器に注ぎ口がないので、ラテアートをやってみたかった夢が砕けてしまいました。というか、泡が濃すぎて注ぎにくいことも頻繁にありました。そんな問題はあるものの、全体的には気に入ってるので、毎日少なくとも1回か2回は使ってます。

紅茶には使えません

ちょっといいことばっかり書きすぎじゃない? と思われたかもしれませんが、大丈夫、欠点もあります。

まず、コンパクトなのはいいんですが、水を入れる部分が40オンス(約1.2L)しかないので、すぐなくなります。キッチンキャビネットの下に置く場合、水タンク部分を取り出して、水を補充して、元に戻す動作がやりにくいこともあるかもしれません。Proバージョンだと水道管から水を直接入れられる作りになってはいるんですが、僕は賃貸アパートメント住みなので、キッチンカウンターに穴を空けるのはまずいと思ってやりませんでした(もし自分が買った家だったら絶対水道をつなぐんですけど)。

あと、Spinnでは白湯を作ることも一応できるんですが、1杯入れるのに数分かかるので電気ケトルの代わりにはなりません。それに温度が華氏175度(摂氏約80度)しかないので、紅茶を入れるには低すぎます。

またSpinnには、コーヒーを淹れた5分か10分後に自動クリーニングする仕組みがあります。内部に水を通すんですが、その水が注ぎ口を通って、ドリップトレイに落ちてきます。だからコーヒーを淹れた直後、次に飲むときの手間を省くためにドリップトレイにカップを置いておくと、なんか薄汚れた水がたまってる結果となります(僕自身、最初何回かやってしまいました)。あとこのクリーニングのせいで、ドリップトレイに予想以上に水がたまりやすいので、わりと頻繁に捨てなきゃいけません(コーヒーを作る頻度次第ですが、1〜2日に1回くらい)。水を捨てるくらい簡単とはいえ、ドリップトレイがいっぱいになってるとSpinnがコーヒーを作ってくれないので、そういうときは「チッ」て感じになります。

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Spinnの水タンクに補充
Image: Brent Rose – Gizmodo US

あとは、複雑なことをやってるマシンの第一世代にありがちな欠点もあります。ときどきエラーが出たり(何もおかしいようには見えないのに)、アプリの挙動がしょっちゅうおかしかったりします。アプリの通知が来て、タップしても何も起こらない、といった感じです(少なくともAndroidでは)。アプリ全体としては大丈夫そうですが、いくつか修正が必要なバグがあります。

アプリといえば、Spinn Marketplaceに入ってる焙煎店のうち数軒は個々の豆に最適なSpinnの設定を入れてるんですが、ほとんどのところはまだ専用設定を入れてません。また今のところ、ダークすぎる豆、オイリーすぎる豆は、Spinnの中が詰まる可能性があるので、使わないように推奨されてます。僕はダークロースト大好きなので残念ですが、すでにだいぶダークな豆(モカジャバとか)を使っててもとくに支障は出てません。

アプリにはAlexaのスキルがあるので、Alexaを通じてコールドブリューやエスプレッソを淹れてと頼めばちゃんと作ってくれます(成功率100%じゃないけれど)。でも僕の家はGoogleアシスタントで動かしてて、SpinnはまだGoogleアシスタントやApple(アップル)のSiriには対応してません。が、Spinnの今後の予定には入ってるそうです。

それから、お値段です。Spinnは今、Proモデルが1,000ドル(約14万9000円)ミルク泡立て器付きのPro Plusが1,050ドル約15万6000円、こっちがおすすめ)、ミルク泡立て器とカラフェ、トラベルマグ、水道管接続可能なPro Bundleが1,200ドル(約17万9000円)です。安くはありません。

あとは月1回のメンテナンスに必要な液体のキットが6カ月分で32ドル(約4,800円)、2カ月ごとまたはコーヒー1,000杯ごとに交換する水フィルターが26ドル(約3,900円)で、配送料別です。こういう細かいコストもバカになりません。とはいえ僕は普段5ドル(約740円)のカプチーノとかをしょっちゅう買ってるわけで、200杯くらい半年で飲んでしまうのは明らかです。

買うべき?

全体に、僕はSpinnが大好きになってることは認めなきゃいけません。2カ月間テストしてきて、おかしいところや不完全なところもありますが、ソフトウェアやファームウェアアップデートで直った部分もたくさんあります。それにSpinnで作るコーヒーはやっぱり特別な感じがします。いろんな種類のコーヒーが作れるし(どれも好きなようにカスタマイズ可能)、すごく早くできるし、ベッドにいながらコーヒーを淹れられるし、淹れ方を間違えるってこともほぼ不可能です(僕がエアロプレスで失敗したときの惨状をお見せしたいくらい)。自分で豆を挽かなくていいし、すごく美味しいし、ポッドのゴミも出ません。というか、ポッド式コーヒーより利便性が高くて、味ははるかに美味しいと思います。実現不可能にも思えたSpinnでしたが、実際はそんな夢のプロダクトが、しっかりとできあがっていたんです。

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