Shopify、対面販売を強化する「POS Go」発表:「オンラインか店舗内かは重要でなくなる」

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Shopify(ショッピファイ)は、POSシステムのアップデート版で競合他社に対抗し、ハードウェア市場で確固たるものにしようとしている。

「実店舗回帰」への対応

Shopifyは9月27日、バーコードスキャナ、カードリーダー、在庫トラッカーを内蔵したハンドヘルドツールとしてPOS Go(ポス・ゴー)を発表した。これまでShopifyのPOSシステムには、デスクトップ、Android、iOS用のアプリをダウンロードすることでアクセスできた。POS Goはポータブルで、携帯電話やコンピュータに接続する必要はなく、レジカウンター、店内フロア、店先の受け取り口で使用できる。

同社の新しいツールは、オンライン購入から、対面でのショッピング習慣に復帰しつつある顧客が増えていることを受けて開発されたものだ。マスターカード(Mastercard)の最新のスペンディングパルス(SpendingPulse)レポートによると、このホリデーシーズンに、店舗内での小売の売上高は前年比で7.9%増加すると予測されている。eコマースは依然として伸び続けているが、データによると、1〜8月の小売売上高の5分の4以上を店舗内での消費が占めている。ShopifyのPOSシステムは2022年の第1四半期に加盟店の売上高を80%も増加させたと言われており、小売業者が現在の状況に対してよりうまく対応するために、このシステムが役立つと考えている。

Shopifyで小売向け商品担当バイスプレジデントを務めるアーパン・ポッダトリ氏は次のように述べている。「これは、当社のサービスにおいて次の段階への変化をもたらしてくれるものだ。これはただのありふれたデバイスではない。小売分野において、小規模と大規模の両方の小売業者と協力していくという当社の方向を示すものだ。これによって小売業者は、現在必要としている柔軟性を得られるようになるだろう」。

データポイントの増加

Shopifyは、2013年に最初のPOSシステムを発売した。それ以来、オフラインおよびオンライン販売、注文、商品と決済を組み入れた新バージョンをリリースしてきた。POS Goはホリデーシーズンに合わせて運用開始されたが、同社はこのツールを何年にもわたって作り上げてきた。2022年前半には、小売業者がオフライン販売を簡単に行えるようにするため、タップ・ツー・ペイ・オン・アイフォン(Tap to Pay on iPhone)などの新しい商品機能のテストを開始した。POS Goの利用料金は、1回払いの399ドル(約5万7900円)である。

Shopifyはパンデミックの最中にもっとも大きな恩恵を受けた企業のひとつで、より多くの小売業者と顧客がeコマースに移行したことで2020年に急成長した。多くの人々が店舗内での買い物を再開した現在、同社は勢いを取り戻すための方法を探し求めている。2022年の第2四半期において、同社は13億ドル(約1890億円)の収益を計上し、これは前年同期比16%増となったが、2021年の前年比57%増の成長には遠く及ばない。

POS Goによって、加盟店は以前のバージョンよりも多くのデータポイントにアクセス可能となる。特定の顧客が過去に何を購入したのかを確認できるようになる。店舗内で買い物客のためにカートを組み立て、対応するリンクを顧客にメールで送信できる。また、ライブの販売および分析レポートにより、自社のビジネスをより統一した形式で把握できるようになる。

ポッダトリ氏は次のように述べている。「実店舗の小売業者を支援する最良の方法は、コンテキストと情報を提供し、買い手が来店したときに買い手のレベルで対応できるようにすることだ。当社は、対面での購入を非常に優れた環境にするための製品を作り上げようと試みている。当社が買い手の期待を満たすツールや機能を増やすほど、ローカルで買い物をする人が増え、コミュニティを支えてくれるようになる」。

レストラン業界に続々参入するデジタルPOS業者

デジタルPOS分野は、特にレストラン業界においてますます多くの業者が参入してきている。現在、スクエア(Square)、トースト(Toast)、クロバー(Clover)、タッチビストロ(TouchBistro)など、経営者は多くのPOSプロバイダから選択することができる。スクエアは名前をブロック(Block)に変更し、第2四半期に44億ドル(約6380億円)の純収益を計上したが、昨年同時期比6%減となった。同社のスクエアブランドはスクエアレジスタ(Square Register)、スクエアターミナル(Square Terminal)、スクエアリーダー(Square Reader)など幅広いハードウェアを提供しており、前年同期比29%増の7億5500万ドル(約1095億円)の売上総利益(粗利)を計上した。トーストはトーストタップ(Toast Tap)、トーストフレックス(Toast Flex)、トーストゴーツー(Toast Go 2)などのハードウェアを販売しており第2四半期の収益が前年同期比58%増の6億7500万ドル(約979億円)に達したと報告している。ハードウェアの収益はこのうち4%強を占めている。

Shopifyのウェブサイトではすでに、タップ&チップカードリーダー(Tap & Chip Card Reader)やiPad用リテールスタンド(Retail Stand for the iPad)など、いくつかのブランド付きハードウェアを販売している。POS Goなどのポータブルデバイスにより、Shopifyは顧客体験がさらに洗練することに期待している。

「買い手には、Shopifyの加盟店から購入したことを認識してもらうことを望んでいる。なぜなら、使用できるツールやエクスペリエンスが異なっているからだ」と、ポッダトリ氏は述べている。

「オンラインか店舗内かは重要でなくなる」

ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、POS Goは、ソフトウェアとハードウェアを組み合わせて「ターンキーソリューション」を提供するので、技術的な観点からも、「極めて理にかなっている」と米モダンリテールに述べている。

同氏は次のように述べている。「あるベンダーのPOSソリューションと、別のベンダーのeコマースソリューションを使用するのは非効率で不便なものだ。これらのシステムをひとつに統合し、両方で使用できるようにすることが、ますます有効になってきている」。

ゴールドバーグ氏は、対面でのショッピングはビジネスでの優先事項であり続けると予測している。しかし、「オンラインか店舗内かは次第に重要でなくなっていくだろう」と同氏は述べている。「すべてのタッチポイントで、統一された顧客体験を提供することが重要なのだ」。

これは、競合他社に影響を及ぼす可能性がある。「もしShopifyのような企業が、店舗内向けの魅力的なソリューションを保有していなければ、起業家たちは、オンラインサービスが十分に充実している店舗内向けソリューションを選ぶようになる恐れがある」と同氏は述べている。

最終的には、「多くのPOSシステムが、オンラインでの機能を向上させようとしている」とゴールドバーグ氏は述べる。「そして、ShopifyやAmazonのようなオンラインサービスプロバイダもまた、店舗向けインフラを改善しようとしている。これは両方向からの自然な発展だと考える」。

[原文:Shopify launches POS Go hardware to power in-person sales]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Shopify

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