ダイヤモンドなどの宝石の中には、内部に液体や他の鉱物といった内包物であるインクルージョンを持つものがあります。傷やヒビと同様に、一般的に宝石の価値を下げる要因として嫌われているインクルージョンの研究により、地球内部に関する新たな知見が得られたことが報告されました。
Hydrous peridotitic fragments of Earth’s mantle 660 km discontinuity sampled by a diamond | Nature Geoscience
https://doi.org/10.1038/s41561-022-01024-y
Ultra Rare Diamond Suggests Earth’s Mantle Has an Ocean’s Worth of Water – Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/oceans-worth-of-water-hidden-deep-in-earth-ultra-rare-diamond-suggests/
Rare diamonds suggest water lurks much deeper in Earth’s interior than scientists thought | Live Science
https://www.livescience.com/diamond-inclusion-water-lower-mantle
今回の研究では、ダイヤモンドの中にあるインクルージョンがテーマとなりました。このようなダイヤモンドは希少とのことで、記事作成時点ではパデュー大学の鉱物物理学者で以前はアメリカ宝石学会の研究員だったTingting Gu氏らの研究チームは、レーザー光やX線により結晶を破壊せずに内容物を調べる分析法を駆使してインクルージョンをスキャンしました。
by Nathan D. Renfro and Tingting Gu
その結果、インクルージョンからリングウッダイトと下部マントルの主成分であるブリッジマナイトとフェロペリクレースという鉱物が見つかりました。
リングウッダイトは、上部マントルの主原料であるカンラン石と同じ化学組成を持っていますが、非常に高い温度と圧力で形成されるため、ダイヤモンドの中から見つかる前はいん石からしか見つかっていませんでした。また、水分を多く含む性質を持つリングウッダイトが下部マントルの鉱物と共に見つかったということは、地球の深部にはこれまで考えられていた以上に水が多く存在することを示唆しています。
by Tingting Gu
地球の深部に大量の水がある可能性は2014年の研究で示されていましたが、今回の研究により一層強固なものとなりました。研究には直接関与していないカナダ・アルバータ大学のマントル学者であるSuzette Timmerman氏は、「もしサンプルが1つだけなら、単に局所的に含水領域があるだけの可能性がありましたが、2番目のサンプルが出てきたので広い範囲に適用できる可能性が高くなりました」とコメントしています。
地球の深い領域に含まれている水分がこれまでの定説より多いことを示す今回の研究結果は、プレートテクトニクスや地中を進む地震波の伝わり方の研究にも影響を与えるため、さまざまな分野で重要視されます。
Gu氏は、今後より多くのダイヤモンドからリングウッダイトが見つかり、それによりマントル深部に関する研究がさらに進展するとの期待を込めて、「もし誰かにプロポーズされて、指輪にはめられているダイヤにインクルージョンがあったら、ノーとは言わないようにしてください」とコメントしました。
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