「10年後もサブスク価格は変わらない」:ペット用品バークCEOのマット・ミーカー氏が語る、インフレ下での価格戦略

DIGIDAY

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インフレの最中、ペット用品のサブスクリプションボックス提供するバーク(Bark)は、コストの上昇に対して数年前と同じ方法で取り組んでいる。現在のサブスクリプション契約者との価格を変えないことだ。

同社は過去10年間、新規顧客向けの価格を「一貫して」上げてきたという。しかし、既存の顧客層に対しては、最初に登録した日からバークの利用を止める可能性がある日まで、契約内容を維持する限り、価格は変化しない。だが同社は最近、この価格戦略をマーケティング戦術として利用しはじめ、アクティブな加入者については値上げを行わないことを改めて顧客にメールで伝えているのだ。

バークの共同創業者でCEOを務めるマット・ミーカー氏は、顧客へのメールのなかで、「明確にしておきたいのは、あなたがバークのアクティブな加入者であり続ける限り、バークボックス(BarkBox)の価格を上げることはない。現在も、将来も」と記している。

これは事実上、バークボックスに加入している人は、アクティブであり続ける限り、ペット用品の価格が保証されるということだ。バークの課題は、この約束を守りながら利益を出すことだ。同社は第1四半期に1540万ドル(約21億4000万円)の純損失を報告しており、これに対して昨年の純損失は2480万ドル(約34億5000万円)だった。同社には現在230万人以上のアクティブな加入者が存在し、顧客満足度は96%、第1四半期の収益は1億3120万ドル(約182億円)で、前年比で12%増加している。

同社が最初に創設されたとき、バークボックスのサブスクリプションは毎月わずか17ドル(約2360円)だった。現在では、クラシックバークボックス(Classic BarkBox)のサブスクリプションコストは1カ月プランで35ドル(約4870円)、6カ月プランで毎月26ドル(約3610円)、12カ月プランで毎月23ドル(約3200円)に増加した。同社のクラシックサブスクリプションには、毎月2つの玩具、2つのおやつ、1つのチュー(犬用ガム)が含まれ、最初の箱が届いたあと、顧客はその内容をカスタマイズすることもできる。

コスト上昇を一部相殺するため、同社は在庫計画を最適化するとともに、製造・配送パートナーとの契約を見直すことで、より良い料率を獲得した。ミーカー氏によれば、こうした動きは同社の利益率を向上させるためのものだという。

しかし、この経済を機能させるため、新規顧客向けの価格設定を継続的に変更している。ペット用品企業である同社は3月から、配送費として4.99ドル(約694円)を新規顧客に課しはじめた。しかし5月から、毎月9ドル(約1250円)でビーフトッパーかバークブライト(Bark Bright)デンタルチューを追加すれば、送料を無料にするオプションを提供しはじめた。

しかし、そのために、新規顧客向けの価格設定を継続的に変更している。このペット会社は、3月から新規顧客の送料を4.99ドルに設定し始めた。しかし、Bark社は5月から、ビーフトッパーやBark Brightデンタルチューズを月9ドルで追加すれば、送料を無料にするオプションを顧客に提供し始めました。

ミーカー氏は、アクティブな加入者に対して価格を維持するという同社の決定と、インフレがペット業界に与える影響について、米モダンリテールに語った。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

◆ ◆ ◆

――バークがアクティブな加入者に対して価格を維持することは、どこから思いついたのか?

これは、当社が創設当初から続けてきたもので、すでに11年間の伝統になる。

顧客が加入したときの価格は、当社との関係が壊れるか、終了するまで維持される。このため、もし関係が10年間続けば、10年後も現在と同じ価格を払うことになる。

目標は、顧客にフレンドリーであり、我々自身が扱われたいと望むような方法で顧客やその犬を扱うことだ。顧客が我々に長年の忠誠心と責任を示してくれたときに、我々からも同じように対応することができる。

当社は10年間にわたって、新規顧客の価格はほぼ一貫して引き上げてきた。このため、現在でもバークボックスを月に17ドル(約2360円)で使用している顧客がいる。このような顧客は、多くはないがそれなりの数が存在しており、当社サービスを10年間使い続けたことへの褒賞に値すると考えている。

――事業運営にかかるコストが上昇しているなかで、どのようにコストを相殺するのか?

当社は昔よりはるかに認知度が高くなり、全体で数百万もの顧客がバークボックスを17ドルよりも高い価格で利用している。このため、わずかな数の人々が17ドルで利用しているのは問題とならない。

もうひとつは、規模が大きくなったことで、価格を創業当初より下げることができるようになった。そのため、顧客が支払っているのは17ドルだけであっても、当社が規模の拡大を達成してきたことから、顧客に商品を提供する原価はさらに低くなっている。

今後、より多くの顧客に認知され、加入者が増加すれば、スケールメリットを活かして、単価を引き下げることができ、その結果、非常に健全なビジネスを運用できるようになるだろう。

――インフレの激しいこの時期に、御社の顧客によく見られる行動をいくつか教えてほしい。ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)のような小売パートナーからどのような話を聞いているか?

サブスクリプションの加入者は明らかに定期購買を中断していた。

当社がターゲットやウォルマートから聞いているのは、1年前と同じ数の顧客が店舗を訪問しているということだ。以前と同じように100ドル(約1万3900円)を持って店舗を訪れた顧客は、以前と同じように100ドルを支払うが、価格が上昇したため、受け取れるものは多少少なくなっている。

当社は、リテンション(顧客維持)に関してこの影響を実感した。驚くべきことは、ガソリンの価格が6月中旬には1ガロン(約3.79リットル)あたり約5ドル(約695円)まで上昇してから、価格が落ち着くと、顧客の継続率が大幅に上昇したことだ。価格が上昇して頂点に達したときは圧力が激しかったので、間違いなくある種の相関関係が存在する。

――ペット用品カテゴリー全体について知りたい。ペット用品カテゴリーはインフレによる影響をどのように受けたと考えているか?

ペット用品カテゴリーを30年くらい観察してきた結果、このカテゴリーは景気後退の影響を比較的受けないと判断している。このカテゴリーは何十年にもわたって、どの景気後退においても成長してきた。そして、今回も同じ動力学が働いて、我々のようにペットが大好きな人々は、自分自身よりも、愛犬が十分にケアされているかを優先ししようとするので、支出を増やし続けるだろうと、私は確信している。

しかし、我々が見てきたのは本当の供給不足と、特にフードのコスト面での逼迫が見られた。そのため、ペットフードのカテゴリーで価格が大きく上昇するだろう。

顧客は自由裁量のアイテムを次々と切り捨てているが、過去の経験からすると、これらの人々は犬よりも先に自分自身の支出を切り捨てているのだろう。

[原文:‘You’ll be paying the same price 10 years from now’: Inside Bark’s pricing strategy]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Bark

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