DIGIDAYリサーチ:パブリッシャーと広告担当幹部、Googleの サードパーティCookie 廃止延期に冷ややかな目

DIGIDAY

広告業界がいま、サードパーティCookieを何かに置き換えるGoogleの能力をどれくらい信頼しているかを完璧に表す使い古された表現がある。それは、「1度は騙される。それは騙すほうが悪い。2度騙されたら、騙されるほうが悪い」だ。

Googleが長いあいだ練り続けている計画の2度目の実施延期は、業界の大部分に受け入れられなかったと言ってよいだろう。簡単に言えば、進展が見られないことに対する皮肉が広がっている。

これは、Googleが2022年7月、ChromeブラウザでサードパーティCookieを2024年まで利用できるようにしたと発表した数日後にDIGIDAY+リサーチがエージェンシーやブランドのマーケター79人と、52人のパブリッシャー幹部に対して実施した調査で明らかになったものだ。計画が延期されたのは1年余りのあいだで2度目だ。

数字を詳しく見る前に、なぜ広告担当幹部たちがこのような騒動に巻き込まれたのか、その理由を説明しよう。Googleは2020年、サードパーティCookie(マーケターが誰かのオンライン活動を追跡し、その人に合わせた広告を作成するために使用するソフトウェア)の死刑執行令状を発行した。それは、2022年までにChromeからそれらを排除する計画の始まりだった。それが行われていないのは明白だ。実際、それ以来、あまり多くのことは起きていない。確かに、Cookieに代わる代替手段の漠然とした輪郭はあり、そのうちのいくつかはテストされている。しかし、それらのいずれかをリモートで拡張できるようになるには、まだまだ長い道のりがある。サードパーティCookieの排除は、「言うは易く行うは難し」ということだ。

Googleは今度こそ本気なのだろうか?皆がそう望んでいる

これまでのところ、あてにならない状況が続いているが、この先、明るい未来が来るという希望を抱いているマーケターもまだ存在する。エージェンシーやブランドの幹部を対象にした調査では、10人中4人以上(43%)が、Googleのアップデートにより2024年にサードパーティCookieが段階的に廃止されると考えていると回答している。いまからその時までには十分な時間があり、ChromeでサードパーティCookieの次に来るものの探索をこれから本格的に進められると考えているようだ。

そして、彼らの言うことにも一理あるかもしれない。サードパーティCookieの代替となるGoogleの一連のソリューション「プライバシー・サンドボックス」のテストはすでに増強され、さらなる柔軟性を持たせようとしている。そうは言っても、このような取り組みに対する皮肉はまだ顕著に残っている。DIGIDAYが調査したエージェンシーやブランドの幹部の3分の1以上(35%)は、Googleがゴールポストを2025年かそれ以降に再び移動させると考えている。なかには、サードパーティCookieはなくならないと考えている無関心な人も9%存在する。

皮肉の度合いを増すパブリッシャー

調査対象となった52人のパブリッシャー幹部の半数近く(48%)が、2025年以降までChromeブラウザでサードパーティCookieが使われ続けると思うと回答している。回答者の4分の1は、Googleの(最新の)言葉を信じ、2024年にサードパーティCookieが廃止されると考えている。一方、サードパーティCookieがなくなることはないと考えている人も10%以上いる。

パブリッシャーがこれまで以上に皮肉の度合いを増すのも無理はない。彼らの多くは、(サードパーティCookieを含む)サードパーティのトラッキング業界複合体が、データ流出、アドテクベンダーの売上減少、さらには仲介者の排除によって自分たちを苦しめているという事実を痛感している。サードパーティCookieは、パブリッシャーが価値を失う方法を数多く生み出している。

同時に、そうした損失は、本質的にオーディエンスに大規模販売できるようにするために負わなければならないコストにもなる。言い換えると、彼らはプログラマティック・マシーンに巻き込まれ、抜け出すことができなくなっているのだ。パブリッシャーが、市場のほかの人々が本当にこのような仕事のやり方をやめたいと思っていることを信じられないのも無理はない。


パブリッシャー、エージェンシー、広告主は、すべてにおいてAppleが勝者であるということに同意

調査対象となったパブリッシャーの5分の1以上が、(それがいつであれ)ChromeにおけるサードパーティCookieの廃止により、Appleが多くの利益を得る立場にあると信じている。エージェンシー幹部とブランドの回答者も同じ割合で同意しているが、それも驚くことではない。Appleは、インテリジェント・トラッキング・プリベンション(Intelligent Tracking Prevention:ITP)機能を強化しはじめた2017年以来、ますます多くのCookieをブロックしている。GoogleのCookie廃止に時間がかかればかかるほど、Appleが有利になるように見える。そして、Googleが最終的にCookieを廃止するとしても、その広告ビジネスは弱体化する可能性がある。Apple独自の広告費獲得策が勢いを得始めるからだ。


また、ChromeでサードパーティCookieが廃止された場合、アドテクベンダーがどの程度ダメージを受けるかについても、両グループ間で意見が一致している。パブリッシャー(37%)とエージェンシーおよびブランドの幹部(44%)は、この場合、アドテクベンダーが大きな損失を被ることになると考えている。アドテクベンダーが、自社プラットフォームを流れる広告費の裏で稼ぐお金の多くは、Cookieから得られるデータに由来する。それがなくなればビジネスが成り立たなくなる。もちろん、それは変わる可能性がある。実際、今回の延期は、Cookieに代わるものを探す時間を与えるという点で、そうしたビジネスにとっての命綱となった。ただし、それが可能かどうかは別の問題だ。


[原文:Digiday+ Research: Publishers and ad execs grow cynical of third-party cookie depreciation

Seb Joseph(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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