フォートナイト とドラゴンボールZ、大型IPのコラボが意味するもの:「広告なのに広告だとまったく感じさせない、理想形だ」

DIGIDAY

フォートナイト(Fortnite)は依然、マーケターが最高にイマーシブなデジタルの離れ業を試す場となっている。

疑うなら、「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」北米公開の舞台裏にいるマーケターに訊いてみればいい。人気シリーズ最新映画の販促を強化するべく、東映アニメーションはエピックゲームズ(Epic Games)のフォートナイト(Fortnite)と手を組み、両シリーズのファンが長年夢見たコラボを実現させた。そしてその結果は、ほぼ間違いなく、そんなファンたちの高い期待をさらに超えている。

もちろん、こうしたパートナーシップの典型である、お決まりの表面的仕掛けは以前からあった。たとえば、プレイヤーが当該アニメの人気キャラクターになれるのも、そのひとつだ。ただ、たいていはそこ止まりで、見かけはそのキャラクターだが、動きはまるで違う、というのが相場だ。だが、8月18日から30日まで実施された今回の最新ブランドインテグレーションは、そうではない。
  

これまでとは違うブランドインテグレーション

プレイヤーは主人公、悟空が使う空飛ぶ雲「筋斗雲」に乗ってフォートナイトのアリーナを飛び回れる。さらに、悟空の代名詞的武器「かめはめ波」をほかのプレイヤーに向けて放つこともできる。無論、両方の同時使いも可能であり、プレイヤーはアニメで繰り広げられる、壮大かつテンポの速い闘いを再現できる。さらに、アニメにちなんだ各クエストをクリアすると、さまざまな報酬がアンロックされる。

これが「新しいファンセグメント」を創出するまったく新たな世界になることを、両社共に期待していると、東映アニメーションのグローバルマーケティング部門ディレクター、リサ・ヤマトヤ氏は話し、「我々にとっては、『かめはめ波』など同シリーズのもっとも象徴的な要素を見せることが、極めて重要だ」と言い添える。

目指すは、広告であること感じさせない没入体験

これらを通じて両社は高度な双方向性を、つまり、新作映画のプロモーションであることをプレイヤーに忘れさせるほどの没入体験を目指している。それは言い換えれば、渇望する新規オーディエンスの目の前に自社IPを差し出したいすべてのブランドが達成を願う、極めて困難な課題にほかならない。今回の契約に関する金銭的詳細は明らかにされていない。

ただ、エピックゲームズはこの種のパートナーシップに関し、ブランドに料金を直接請求はしない。その代わり、多額の分配収益を得るのが普通であり、これはつまり、それでもエピックゲームズ側は多大な利益を得られることを意味する。

「広告の一種なのに、広告だとまったく感じさせない。それどころか、プレイヤーをストーリーの一部になった気にさせる」と、マーケティングエージェンシー、メディアドットモンクス(Media.Monks)のジュニアストラテジスト、ホン・ミン・ジャノティ氏は評する。「これは、ブランドとの交流はどうするべきかを教えてくれる、まさに手本だ」。

実際、この試みはすでに成功していると言っていいだろう。同映画は北米公開から10日間で3080万ドル(約40億円)強の興行収入を上げ、北米で公開されたアニメ映画史上、五本の指に入る記録を叩き出した。

いま現在、エピックゲームズには自由に使えるツールが、フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)を利用する独立系クリエーターよりもはるかに多くある。フォートナイトクリエイティブにおけるビルド(建築)オプションは増えてはいるが、それでもいまのところ、メインのバトルロイヤルモードにおいて提供されるブランド体験と比べると、かなり見劣りする。

「フォートナイトのメインとなるゲームはいま現在、トップレベルのパートナーシップおよび巨大ブランドとの提携を想定して設計されている。そしてそれらのアクティベーションは、規模でいえば、フォートナイトそのものに匹敵する」とアン・マーゴット・ロッド氏は話す。ロッド氏は大手ゲームスタジオおよびパブリッシャーを顧客に持つマーケティングエージェンシー、トレイラー・パーク・グループ(Trailer Park Group)において、メタバースおよびフォートナイトクリエイティブにおける主なブランドアクティベーションのコンサルティングを行なっている。

図らずも一緒に仕事がしにくい相手という評判も

現在、フォートナイトのバトルロイヤルモードがプレイヤーと広告主双方の注目を大いに集めている一方、状況がこの先10年以内に大きく変わる可能性もある。

実際、今回のドラゴンボールとのパートナーシップのような事例は、当該ブランドの販促であると同時に、フォートナイトの販促にもなる。バトルロイヤルモード内で新たなブランドアクティベーションが行なわれるたび、それがフォートナイト以外のゲーム、たとえば「Destiny 2(デスティニー・ツー)」のキャラクターやNFLのクォーターバック、パトリック・マホームズとのコラボも然りだが、数千にも及ぶそうしたキャラクターの動画がソーシャルメディアに次々に上げられる。事実、「かめはめ波」の動画は、今回のコラボのローンチから何時間もしないうちに、まさしく文化的タッチポイントになった。

当然、エピックゲームズはこうしたパートナーシップの実現についてかなり強気の姿勢を取っており、図らずも、一緒に仕事がしにくい相手という評判を立てられている。確かに、同社がパートナー選びの際に極めて慎重になることは十分に考えられるが、種類、形態、規模の別を問わず、多種多様なブランドがこぞって、ほかに類を見ない同市場へのリーチを試みているのも事実だ。フォートナイトにおけるバトルロイヤルの場に登場することが、どのブランドにとっても、ゲーミング界最大規模のオーディエンスの前に行くための絶好の機会になりうるのは、間違いない。

ただし、「いちかばちかの大勝負ではある」と、メディアドットモンクスのイノベーション部門SVPルイス・スミスインガム氏は話す。「ポップアップを作るのとはわけが違う。言ってみれば、テーマパークを作るようなものだ。目立ちたいという意図が見え見えのことをしてしまえば、たちまち、そのブランドは悲惨な目に遭わされる」。

[原文:‘A whole new universe’: How Fortnite fits into Dragon Ball Z’s extended renaissance

Aron Garst(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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