エージェンシー に「素早さ」ではなく、「賢い」プランを求めるブランド:「短期的なパフォーマンス最適化だけを求められなくなった」

DIGIDAY

かつて、メディアエージェンシーの新規顧客は、新しいキャンペーンを市場に投入する際、さらには、提案依頼書(RFP)によってエージェンシーを選択するときでさえも、スピードと機敏性を優先していた。しかし、5年ほど前から、新規ビジネスに対して、より慎重かつ厳密にアプローチし、スピードを重視しないという微妙だが重要な変化が起きている。

大手持株会社メディア部門の新規事業責任者はオフレコを条件に、「耐久テストのような全力疾走のプレゼンが減った」と語った。「『3週間後にプレゼン』というようなことが減り、腰を据えたマラソンのようなやり方が増えた。短期的にどれだけ早く(クライアントの)パフォーマンスを最適化できるかだけでなく、戦略的な仕事にも深く関わることができるようになった」。

大tエージェンシーグループおよび独立系のメディアエージェンシー幹部に話を聞いたところ、素早い市場投入から賢い市場投入へのこうした変化には、いくつもの要因が絡んでいるようだ。その一部を紹介しよう。

賢く資金を使いたい

計画と実行の無駄を可能な限りなくすため、クライアント側の財務部門や調達部門に情報や意見を求めている。パフォーマンス関連の業務を手掛ける独立系エージェンシー、BAMストラテジー(BAM Strategy)のプレジデント、ピーター・マイヤーズ氏は、「ある種のブランドでは、CFOから予算のサインをもらう必要があるスコープやメディアプランを提出すると(中略)そのCFOから『OK。これは大金だから、背景と根拠、正当性、数字、これが売上に直接貢献するという検証結果を説明してほしい』と言われる」と話す。「いろいろな要素がミックスされるのがいいと思う。これまでに比べると、ブランドマーケターがそれに対して反応を返すことができる、少し複雑な時代に突入した」。

IPG傘下のUMで統合投資担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジョン・レファーツ氏は、「クライアントの世界では、10年前に比べて、調達部門が果たす役割がはるかに大きくなっていると思う」と語る。「誰もが採算性を求め、ROIを求めている。もっと賢く資金を使いたい…と誰もが思っている。クライアントはそのプレッシャーを感じている。私たちの仕事は、彼らが成果を得られるよう、1ドルを無駄にしない道へと彼らを導くことだ」。

ブランド、メディア、ショッピング関連業務を手掛ける独立系のクリエイティブマーケティング企業、ブルー・チップ(Blue Chip)のCMO、ダン・アイゼンバーグ氏は、「財務的な精査はもっと厳しくなるだろう。実際、RFPではそうなっている」と話す。「CFOのオフィスを訪ねることの重要性が増している。そのため、CFOとの直接対話であれ、経営幹部が集まる会議であれ、クライアントがそのようなミーティングを行う準備ができれば、より早く市場にたどり着くことできるだろう。それができなければ、いったん持ち帰り、見積もりをやり直すことになる」。

データ、接続性、DE&I

データ、分析、データサイエンスツールの高度化により、クライアントとエージェンシーが同じ認識を持つことが必要になっている。メディアの世界では「とてもパワフルで必要な測定の進化と成熟が起きている」とマイヤーズ氏は話す。「そして今、ありふれた言い方にはなるが、その会話はちょうどハーフタイムを迎えている。成熟した大手ブランドの社内データサイエンスチームとの連携は間違いなく、正しく行う必要がある重要なことだ。しかし、一朝一夕にできるようなことではない」

過去の戦術に頼ることなく、消費者やオーディエンスとつながる新しい方法を見いだしたいという欲求。電通グループのカラ(Carat)米国法人でクライアント担当プレジデントを務めるクリスティー・ピネイロ氏は、「メディア全体が大きく変化しているなか、私が重視しているのは、『過去を見て未来を決めるのはやめよう』ということだ」と話す。「これからは、『どうしたらもっと上手に賢くできるだろう? バックオフィスの仕事を減らし、いわゆる戦略的な仕事により多くの時間を割くには、どのような働き方をすればいいのだろう?』と自問すべきだ」

多様性、公平性、包括性(DE&I)、さらにはサステナビリティなど、文化的に重要であることには変わりないが、クライアントがエージェンシーを選択する際に考慮し始めた文化的な要素を重視する。「DE&Iを重視することや多様なベンダーと連携することは、より多くのパートナーを獲得し、公平性を保つことができるという点で、とても刺激的なことだ」とピネイロ氏は話す。「私たちの新しいコミットメントであり(中略)キャンペーンや戦略立案の観点から言えば、それもひとつの推進力であり、考慮すべき点だ」

そして最後に、これまでファネル下部のパフォーマンスマーケティングに依存してきたマーケターが、ブランドワークを計画に組み込むため、活動の幅を広げたいというニーズが高まっている。前述の新規事業責任者は、「ファネル全体を対象にしたければ、素早い最適化だけでなく、より賢く複雑な意思決定を行う必要がある」と話す。「多くの広告主がファネル全体を重視しており、そのようなピッチがますます増えている。どこか一部を選び出し、『あなたたちはパフォーマンスエージェンシーだ。あなたたちはブランドエージェンシーだ』と言われることはなくなった。しかし、その両方をやるのであれば、相当な慎重さが必要だ。これを理解している広告主はたくさんいるが、彼らはまだそこに至っていない」

[原文:Media Buying Briefing: How smart-to-market became the order of the day over speed-to-market

Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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