インスタグラム 、リール投稿を促すためメディア企業に報酬:クリエイターの足しにはなるも、メディア企業からは不評

DIGIDAY

Facebookがパブリッシャーへの支払いを削減するなか、同じくメタ(Meta)傘下の姉妹サービスであるインスタグラムは、TikTokのクローンである「リール(Reels)」を使った短編動画へと軸足を移すという物議を醸している動きを続けているが、その一方で財布のひもを緩めようとしている。

参加メディア企業の幹部たちによると、インスタグラムは一定の視聴回数に達したリールを投稿したメディア企業に報酬を支払っているという。昨年インスタグラムは、個々のクリエイターがリールを投稿する際に報酬を支払うプログラムを開始し、メディア企業に対してもこのプログラムを拡大している。

「私たちは、フォロワーが100万人以下のあらゆる種類のクリエイターに対して、リール投稿へのボーナス報酬をテストし続けている。最近になって加えられた変更はなく、一部のパブリッシャーが利用できるボーナスも、プログラムのほかのクリエイターが利用できるボーナスと変わらない」と、メタの広報担当者は本稿公開後に送られた声明のなかで述べている。

不透明な仕組みに疑問視する声も

インスタグラムのメディア企業へのリール支払い拡大は、支払い額がまちまちでプラットフォームが金額の計算方法をメディア企業に明確にしていないため、一部のメディア幹部は困惑を隠せないでいる。

あるメディア関係者は、「(仕様が)明確でなく分かりづらい。自分達にとって機能がオンになるのか、分からない。突然オンになって「ああ、私たちも参加できるのか」と気づく」と話した。

別のメディア関係者は、「ブラックボックスのようなものだ」と述べた。「正直言って、私たちはこの仕組みについてあまり多くの情報を得られていない。毎週収益が流れ込んでいることを示すダッシュボードが表示されていることはわかる。大きな金額が入ってくるわけではなく、『それなり』の金額だが」。

メディア企業への支払い額はアカウントによって異なり、アカウントのリールが受け取るビュー数に基づいて、毎月上限が設定されている。たとえば、あるメディア企業の場合は、あるアカウントにおけるリールが生んだ最初の100万回のビューで200ドル(約26688円)を受け取り、その後は100万回のビューごとに100ドル(約13344円)を受け取り、支払いの上限は1200ドル(約16万円)となっている。メディア幹部らによると、最高報酬額は月額2万ドル(約266万円)を超える場合もあるという。

この額を「大した額ではない」と表現するメディア企業幹部もいる。ある幹部は「ないも同じ」と表現した。その一方で、短尺の縦方向の動画フォーマットがTikTok、インスタグラム、YouTubeで人気を集めるなか、さらに多くの短尺動画制作を促進するインセンティブとして歓迎すべき動きだと見ている幹部たちもいる。

「私たちのアカウントのひとつが受け取る(金額)に喜んでいる。それは間違いなく私たちがリール制作に投入し始めるエネルギーに影響を与える」とメディア幹部は述べた。

「メディア企業にとっては、まったく足りない額」

インスタグラムは、TikTokに対抗しようとするプラットフォームとしてリールに投稿するメディア企業にインセンティブを与えている。メタにとって、このような取り組みはこれまで容易ではなかった。最近、インスタグラムはユーザーインターフェースをTikTokに近づける方針を撤回している。そしてパブリッシャーへの支払いプログラムがどの程度、メディア企業にリール投稿を促すことに成功するかは不明だ。

短尺動画に対する報酬プログラムは、既存の収益分配プログラムに比べて見劣りしているため、動画制作者たちのあいだでは輝きを失っている。クリエイターでヴィッドコン(VidCon)の共同ファウンダー、ハンク・グリーン氏が今年YouTubeに投稿した動画で紹介しているように、これらの報酬プログラムはプラットフォームが動画制作者に支払う金額を恣意的に制限しているが、YouTubeのアドセンス(AdSense)プログラムのような収益分配プログラムは視聴者数に応じた持続的な資金源を提供している。

今のところ、メディア企業はインスタグラムの支払いを受け取ることに喜んではいるが、もしプラットフォームが確実にメディア企業を取り込みたいのであれば、こうした支払いは長期的に見てより大きく、より信頼性の高いものになる必要があるだろう。特にメディア企業は、YouTubeのようなプラットフォーム上で既に繰り返し収益を生み出している長い形式の動画を犠牲にして、短い形式の動画に投資することに慎重になっているからだ。

「もしあなたが個人のクリエイターで、副業か何かで投稿しているのであれば、月に数千ドルという金額は十分かもしれない。しかしメディア企業にとっては、全く足りない」と取材に答えたメディア企業幹部は言った。

[原文:Instagram is paying media companies to post Reels

Tim Peterson(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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