Netflixの会員数が減少し、NBCユニバーサル(NBCUniversal)のピーコック(Peacock)が伸び悩んだ2022年7月2日締めの四半期に、ディズニープラス(Disney+)では会員数の伸びが加速した。
だが、米国ではメディア企業ディズニーの主力動画配信サービスであるディズニープラスの会員数拡大には衰えが見られ、同社のほかのふたつの動画配信サービスESPN+とHuluも、伸びが鈍化した。
それでも、8月10日に行われた決算発表で、ディズニーCEOのボブ・チャペック氏は動画配信サービスの会員数がディズニー全体で2億2100万人に達したと述べた。これがNetflixの会員数2億2070万人より実際に多いのかは定かではない。ディズニーの数字は正味の会員数ではなく会員契約数であるため、同じ会員が複数の契約を結んでいる場合は重複して数えられるからだ。
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主な数字:
- 総売上高は前年同期比26%増の215億ドル(約2兆7950億円)
- リニアTVネットワークの売上高は前年同期比3%増の72億ドル(約9360億円)
- D2Cの動画配信サービスの売上高は前年同期比19%増の51億ドル(約6630億円)
- ディズニープラスの会員数は前四半期から10%増の1億5210万人
- ESPN+の会員数は前四半期から2%増の2280万人
- Huluの会員数は前四半期から1%増の4620万人
ディズニープラス
直近の四半期におけるディズニープラスの世界会員数の伸びは、四半期別の会員数を発表する主な競合他社をすべて凌駕した。ディズニープラスが会員数を1440万人増やす一方で、Netflixは97万人の会員を失い、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)ではHBO、HBOマックス(HBO Max)、ディスカバリープラス(Discovery+)を合わせてようやく170万人の増加となった。パラマウントプラス(Paramount+)は370万人の増加で、ピーコックは横ばいのまま推移した。
ただし、米国でのディズニープラスの伸びは鈍化しており、直近の四半期の会員数の増加はその前の四半期の150万人に対し、10万人にとどまっている。
ディズニープラスの広告付きプランと料金引き上げ
あまり偶然とも思えないことに、ディズニーが米国での会員数増加の鈍化を公表したのと同じ日に、同社は予定されていた広告付きプランの具体的な開始日と料金を発表した。これはコストに敏感な会員の獲得を狙ったものだが、その料金設定は新規会員の獲得より、今後の料金引き上げを受け入れたくない既存会員の引き留めのほうに効果を発揮する可能性がある。
広告付きのディズニープラス・ベーシック(Disney+ Basic)は、広告なしプランの現在の料金と同じ月額7.99ドル(約1040円)で12月8日にサービスを開始する。広告付きプランの登場とともに広告なしプランは月額10.99ドル(約1430円)に引き上げられるが、それをきっかけに人々が解約へと向かう可能性がある。特に景気低迷が続く場合はなおさらだ。だがチャペック氏は、決算発表の場で「解約率に実質的に長期的な影響は出ないと考えている」と話している。
ディズニープラスの会員数予測
ディズニーは、ディズニープラスの会員数の見通しを改訂した。以前は2024年度末までに2億3000万人から2億6000万人になると予測していたが、今後は中核的なディズニープラスと、インド市場を対象としたディズニープラス・ホットスター(Disney+ Hotstar)とを分けて予測する。
2024年度末までのディズニープラスの会員数予測は1億3500万人から1億6500万人。決算発表の際に、ディズニーCFOのクリスティン・マッカーシー氏は、この数字が「前に発表された予測とほぼ一致している」と述べている。その一方で、ディズニープラス・ホットスターの会員数は2024年度末までに8000万人と、前回予測より1500万人少ない。この下方修正は主にディズニーがインディアン・プレミアリーグの配信権を失ったことが原因と思われる。
全体的な会員数の伸びの鈍化
ディズニーの動画配信サービスで会員数の伸びが衰えているのはディズニープラスだけではない。Huluも、会員数が1%しか増えない四半期を再び重ね、ESPN+の伸びは前の四半期の5%から直近の四半期は2%に下がった。
その上Huluの有料テレビ配信サービスは、直近の四半期にまたもや会員数を減らしている。2022年の最初の3カ月で20万人減少したのに続き、直近3カ月ではさらに10万人の会員を失った。
[原文:The Rundown:Disney+ tops 152 million subscribers, but growth slows in the U.S.]
Tim Peterson(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)