配送アプリのドアダッシュ、 リテールメディア 参入でインスタカート に対抗:飲食店やCPGブランドに売り込む

DIGIDAY

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ドアダッシュ(DoorDash)はこの6カ月間、マーケットプレイスの収益源として広がりを見せているリテールメディアへの参入を目指し、その存在感を高めてきた。

配送プラットフォームである同社は昨年10月、レストランやその他のブランドがドアダッシュのマーケットプレイスで多くの顧客にリーチし、ビジネスを成長させることに期待して、一連の広告ソリューションをローンチした。同社は、この一連の広告ツールにより、毎月2000万人の顧客にリーチできるとして、レストランやCPG(消費者向けパッケージ商品)ブランドに売り込んでいる。

配送プラットフォームであるドアダッシュが、リテールメディアに力を入れているのは、ライバルであるインスタカート(Instacart)の垂直市場への進出に意欲を燃やしているためだ。ドアダッシュは主にレストラン向けの配送サービスとして開始したが、最近になってホワイトラベル配送、コンビニエンス、アルコール類の配送、食料品、そのほかの垂直市場に拡大してきた。たとえば、11月にはセフォラとの提携を発表した。利益率の大きい広告ビジネスで成長することで、収益性を高めることもできるだろう。同社は2021年の上場以来、これまで一度も年間利益を公表したことがない。

ドアダッシュは、米モダンリテールからの問い合わせに対して、コメントに応じていない。同社は5月4日に第1四半期の決算を発表した。

新しい収益源への注力

ドアダッシュの新戦略の中核となるツールのひとつは、セルフサービス型のスポンサード・リスティング広告(Sponsored Listings)だ。これは、地元レストランの知名度向上、注文の獲得、次の顧客の開拓を支援するよう設計されている。ベイエリアのピザチェーンであるピザマイハート(Pizza My Heart)と、メキシコ料理店のアンクルジュリオズ(Uncle Julio’s)は早期からドアダッシュのツールをテストしてきたと、10月のプレス声明で述べている。炭酸飲料ブランドのペプシ(Pepsi)も数カ月にわたってドアダッシュでプロモーションとバナー広告をテストしてきたと述べている。またドアダッシュは、CPGブランドがドアダッシュでスポンサードプロダクト(Sponsored Product)の広告を直接有効化、管理、測定できるように、ドアダッシュアドマネージャー(DoorDash Ads Manager)の運用を開始した。

ドアダッシュの元従業員は、匿名を条件に米モダンリテールに語った。「リテールメディアにはたしかに多くの労力が注がれてきた。ドアダッシュは、マーケットプレイスのレストラン以外の部分を成長させるため、さらに労力を集中していると語った。すなわち、食料品や、コンビニエンスショッピング、さらには小売以外の分野だ」。

ドアダッシュの共同創設者でCEOを務めるトニー・シュー氏は、第4四半期の決算発表で、「当社はレストランの側でも、それ以外の部分でも、率直に言って、かなりの数の加盟を目にしている」と、言及した。同社は2022年の第4四半期に、毎月のアクティブユーザーの17%がレストラン以外のカテゴリーで買い物をしたことを確認している。

より多くのドアダッシュの顧客が、このプラットフォームをテイクアウトを注文するためだけではなく、食料品の買い物のために利用を検討することが希望であると、ドアダッシュの元従業員は付け加えている。同社が最近放送したTVコマーシャルでも、食料品の配送や、市販医薬品など、レストラン以外のアプリの利用事例にも焦点をあてている。

同社の広告プラットフォームは、クリック単価で入札可能なキーワード検索広告プラットフォームで、CPGブランドは、買い物客がドアダッシュのマーケットプレイスを利用する際に、関連性の高い買い物客にリーチすることができる。

同社は2022年第四半期で、収益が2021年の第4四半期末の13億ドル(約1770億円)から40%近く成長して18億ドル(約2450億円)に達したと報告した。同じ期間の純損失は6億4000万ドル(約870億円)から1億5500万ドル(約210億円)に減少した。

新しい広告主を探す

ドアダッシュがリテールメディアネットワークを作り上げるための課題は、CPGブランドに対して、ウォルマート(Walmart)や、クローガー(Kroger)、ダラーゼネラル(Dollar General)など、広告プラットフォームを構築しているほかの小売業者ではなく、自社に支出するよう説得することだ。

「ドアダッシュは他社と同様にプラットフォームを作り上げようとしている」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売およびeコマースのプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は述べる。

同士は、ドアダッシュが、「CPGブランドを積極的に勧誘しており、広告による収益化を促進するためのツールや機能を構築中だ。私の感覚では、同社は主なユースケースであるレストランで成功している」と述べている。

しかし、CPG企業がメディア広告への支出を決意するとき、真っ先に思い浮かべるのは従来からドアダッシュではなかったと、リプスマン氏は言及している。「問題は、広告主になり得る巨大市場のCPGブランドに対して、同社がどれだけの規模で推進力を持つことができるかだ」と、同氏は述べている。

ブランド・コミュニケーション戦略コンサルタントであるカーリー・サザランド氏の目には、現在のドアダッシュは、割引、プロモーション、インセンティブの提供といったトランザクション型の広告ツールに重きを置いているように映っている。たとえば同社は最近、アルディ(Aldi)で35ドル(約4760円)以上購入すると、20%割引になるプロモーションを行った。

「ドアダッシュとCPGブランドの両方にとって、人間の行動と消費者インサイトに基づいたクリエイティブでコンテキスト連動型の広告において提携することには、巨大なブランド構築の機会がある」と、同氏は米モダンリテールに語った。同氏は、ユーザーが深夜にマクドナルド(McDonald’s)の商品を注文する架空の例を挙げ、そのような場合にゲータレード(Gatorade)やリキッドアイブイ(Liquid IV)などのブランドが、自社商品を追加として宣伝できると付け加えている。

ドアダッシュの恩恵を受ける可能性がもっとも高いCPGカテゴリーはアルコール飲料だとリプスマン氏は述べ、人々がアルコール飲料単独での配送を注文しており、これは衝動買いという点でレストランの配送に近いと指摘する。「CPGブランドに対する価値提案の大きな部分は利便性であり、衝動買いは通常の営業時間外に起こることが多い。これらのブランドの主張は、これによって追加の買い物が促進されるということで、実際に妥当な考えだ。CPGのような薄利多売のビジネスでは、きっかけがなければ起こらないような購買の増加は、非常に貴重だ」と、リプスマン氏は説明する。

ドアダッシュの広告プラットフォームは、最終的に、CPGブランドにとってより有益となる可能性があるが、それでも十分な追加売上を生み出す必要があるだろうと、リプスマン氏は語る。さもなければ、「Amazon、ウォルマート、クローガー、インスタカート、ターゲットなど、ほかのチャネルとのあいだで顧客の関心を奪い合うことになるだろう。そして、大手ブランドから売上を奪うのは非常に困難だ」と、同氏は述べている。

[原文:To compete with Instacart, DoorDash is building out its retail media presence]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via DoorDash

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