政府が2022年8月15日に開いた全国戦没者追悼式で岸田文雄首相が述べた式辞の内容は、多くを菅義偉前首相、安倍晋三元首相のものを踏襲した。安倍氏が提唱した「積極的平和主義」という言葉が引き続き登場する一方で、「歴史の教訓を深く胸に刻み」という文言が3年ぶりに復活した。
この微妙な違いを「岸田カラー」の表れとみるかは評価が分かれ、その中でも否定的な論調の方が多い。
毎日新聞は「『岸田カラー』をにじませた」
「岸田カラー」に肯定的だったのは毎日新聞。「教訓」のくだりに触れて、
「党内リベラル派の自民党岸田派を率いる首相は3年ぶりに言及することで『岸田カラー』をにじませた」
と指摘した。
朝日新聞と読売新聞は否定的だった。朝日は、
「全体の8割以上が前年の菅義偉前首相の表現と一言一句同じだった。残りも安倍晋三元首相の式辞を踏襲した部分が目立ち、『岸田カラー』の見えない中身となった」
と論じた。読売は「積極的平和主義」の文言や、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に置いた「未だ争いが絶えることのない世界」という表現を紹介する一方で、
「式辞全体では、菅氏とほぼ同じ内容で、6日に広島市で行われた平和記念式典でのあいさつとは異なり、『岸田カラー』は見られなかった」
とした。安倍・菅両氏と大きく内容が変わらなかった事を否定的に評価した。
ブロック紙も同様で、北海道新聞は「積極的平和主義」踏襲とアジア諸国への加害責任に言及しなかったことについて
「保守派への配慮があるとみられるが、自身がライフワークに掲げる『核軍縮』などと比べた熱意の差は大きく、『岸田カラー』はほとんど見えなかった」
と報じた。中日新聞も「被爆地・広島選出の政治家として持論にする『核なき世界』にも言及せず、独自色は一部にとどまった」とした。
式辞直後にJ-CASTニュースが配信した記事では「ハト派の『岸田カラー』は必ずしも反映されなかったが、『歴史の教訓を深く胸に刻み』という文言が3年ぶりに復活」したと報じた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)