アテンション 指標活用による効率化、温暖化対策にも効果:「クライアントだけにとどまらない、すばらしいメリットだ」

DIGIDAY

メディアプランニング、特にメディアミックスモデリングに役立つツールとしてアテンション指標を本格的に取り入れるエージェンシーホールディングスがまた1社現れるなか、アテンション指標には温室効果ガス排出削減につながるという副次的効果もあることが見えてきた。

2022年6月1日、ハバス・メディア・グループ(Havas Media Group、HMG)はアテンションテクノロジー企業のルーメン・リサーチ(Lumen Research)とグローバルパートナーシップを結んだことを発表した。アテンション指標に基づいたプランニング、バイイング、メディア最適化を実現する一連のツール開発を狙う。

ルーメンのデータセットを活用することで3倍から10倍の効果があるエンゲージメントレベルを実現し、いずれは傘下の全メディアエージェンシーにわたるアテンション関連の独自データベースを構築する計画だ。

アテンション指標が持つ価値とは

HMGのアクティベーション担当グローバル責任者を務めるジョン・ウェイト氏は、昨秋電通から移籍してきた。電通ではアテンションに関する多数の調査を指揮し、この分野の多くのプレイヤーと仕事をしてきた経験を持つ。ハバスでももう一度アテンションに携わることになったのは「意味のあるメディアに関するハバスの考えに大きく賛同したから」だという。

ウェイト氏の入社前にも、HMGは2020年から米国で別のアテンションテクノロジー企業、アデレード(Adelaide)と共にカスタムメイドのソリューションの開発を含む取り組みを進めていた。ウェイト氏は同社には競争力を認めておらず、独占的な契約を意識的に避けている。「米国市場のデータはアデレード、残りの地域はルーメンのデータを使用して、ひとつのグローバルなアテンションのデータベースにまとめようと考えている」とウェイト氏は話す。「この2つは相互補完的な関係にある」。

アデレードのCEO、マーク・ガルディマン氏は「当社が全神経を集中させるメディア品質は、アテンションを得られる可能性と営業成果を実現できる可能性で測っている」と語る。「営業成果が出なければ、すべては意味のないことだから」。

「高レベルのアテンションは排出量の観点からも効率的」

一方で、業界全体が環境への影響に対する関心を高めるなか、アデレードはサステナビリティに注目する新しいアドテク企業、スコープ3(Scope3)と連携し、温室効果ガス排出に関する効率性向上の手段としてのアテンション指標の価値を広めようとしている。

「アテンションの高いキャンペーンでは、同じ成果を得るのに必要なインプレッション数が少ない。つまり、誰も見ていない、効果のないインプレッションによる無駄が少ないため、アテンションデータを活用して最適化されたキャンペーンに関連した排出量は、ビューアビリティや動画の視聴完了率を使用するキャンペーンよりかなり少なくなる」とガルディマン氏は説明する。「ビューアビリティや視聴完了率といった指標では、質の悪い小さな広告枠をたくさん買うことになってしまう。にもかかわらず、ビューアビリティはまだまだアテンションよりはるかに人気が高い指標だ」。

メディアハブ(Mediahub)でデータドリブンおよびデジタルプラットフォームのメディアバイイング(アデレードのアテンション指標を使用)を扱うP3部門担当のエグゼクティブバイスプレジデント、エド・マッケルヴェイン氏は、この副次的なメリットが最高のタイミングで登場したと述べた。「クライアントに成果をもたらす優れた効率的な広告、という名目で地球環境に害を及ぼすことは皆避けたいと思っている。だからこそ、メディアプランの高レベルのアテンションが、より効率的にクライアントの成果につながるだけでなく、排出量の観点からも効率的だという相関関係を見ることができるのは、すばらしいメリットだ」。

HMGのウェイト氏にとっては、効果の低い広告が削減できるという意味で、メディアミックスモデリングでのアテンション指標の使用が特に魅力的だという。「メディアミックスモデルへのインプットとしては、インプレッション数や、メディアチャネルのリーチにかかるコストを使用することが多い。だが、ある特定のフォーマットについて、購入したインプレッション数の30%は誰も見ていない、または見ている可能性が低いという新しいデータを突然手に入れることができるようになったとしよう。すぐにその部分を排除すれば、もっと賢いモデルができる」。

「ビューアビリティよりも効果がある」

平均的に1日に1人の人がさらされるメッセージの数が4000から1万(具体的な数字は出典によって異なる)であるとすると、これをすべて認識して理解するのはとてもではないが無理だろう、とウェイト氏は指摘する。こうして、人がメッセージに向ける注意、つまりアテンションに関心が集まることになる。

「注意が向けられず、積極的な関りにつながらない部分をすべて排除できたら、もっと効果的なメディアキャンペーンを創り出すことができる」とウェイン氏は話す。「(ウェイン氏がこれまで関わってきた)どの調査でも、営業成果またはブランドとしての成果を生み出せるかを示すものとして、ほとんどの場合にほぼ効果のないビューアビリティなどに比べてアテンション指標のほうが3倍から10倍の効果がある」。

[原文:Havas Media Group bumps up its commitment to attention metrics, which is linked to positive emissions and sustainability

Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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