2030年に向けて消費社会はどう変わる? 勝ち残りに向けて必要な アパレル経営とは?【Glossy + TALKS レポート 】

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2015年にSDGsが採択されて以来、アパレル業界への風当たりはより厳しさが増している。大量廃棄、環境汚染という観点で課題が多いとされているなかでも、CO2排出量は、グローバル全体で排出されている量年間400億トンのうち […]

2015年にSDGsが採択されて以来、アパレル業界への風当たりはより厳しさが増している。大量廃棄、環境汚染という観点で課題が多いとされているなかでも、CO2排出量は、グローバル全体で排出されている量年間400億トンのうち、おおよそ4-10%がアパレル業界によるものとされている。毎年蓄積されていくため、アパレル業界としてはネガティブインパクトが強くなっている状況だ。
 
2030年に向けて、消費社会の問題は上記のサステナビリティのことだけではない。大きく変化を遂げるといわれているその背景には何があるのか? そして、その消費社会の動向を捉え、アパレル企業はどのように変わっていくべきなのか?
これら消費社会の構造変化とアパレル企業の戦略について、欧州起源のグローバル戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーのパートナーを務める福田稔氏にGlossy+Talksにて語ってもらった。
以下は会話からの追加のハイライトである。

◆ ◆ ◆

ーー2030年に向けて消費社会はどう変化していくのか?

 
次の10年間は、消費の「質」と「量」が大きく変わっていく転換期にあると考えている。その背景にあるのは、3つの背景。

  1. サステナビリティ対応。
    企業が利潤のみ追求する時代は終わり、今後はサステナビリティという視点からの規制や法案が出てくる。
  2. アパレル業界のCO2排出量は、全産業の内、4-10%(弊社試算では約8%)ときわめて高い。このCO2がアパレル業界のどこで排出されているかというと、グローバルでは、GHCプロトコルが出している定義があり、その分類に基づくと、Scope1から3に分けられる。アパレル ではものづくりを含むScope3が非常に多いとされ、このScopeを可視化してIR上ディスクローズしている企業はほぼ同じ傾向にある。
     
    フランスでは、衣服廃棄が禁止する法律が昨年公布され、今年から施工されていく。欧米で先行する規制強化の動向を見ると、今後日本でも新たなサステナビリティ対応を迫られる可能性は十分にある。
     

  3. 消費者の価値観の多様化、マクロ環境変化
  4.  
    これまでの市場マーケティングで世の中を動かす時代は終わり、消費者の価値観がとても多様化し、分化している。その消費者をどのような形で捉えるのかが重要になってくるといえる。
    時代背景として、昭和は物質的欲求などから充足、便益を得るための商品作りがメインだったが、令和では、物や情報にあふれており、人々の欲求は精神的充足へと変化している。
     
    令和の消費者に消費してもらうために大切なことは、精神的なコンテクストに響くこと。その価値観のセグメントの変化をみていくと、2030年には、4~5人に1人がミニマリスト(節約志向が強いだけでなく、物を持たないことに美学を感じる)また社会志向層、これはZ世代中心に増えると予測している。
     

  5. プラットフォーマーの社会インフラ化
  6.  
    プラットフォーマーが、物販だけではない、社会のプラットフォームになっていく可能性がある。日本でみると、Amazonの影響はとても大きい。最初は本という商材からスタートし、今では総合モールになっている。2010年以降、さまざまなプライベートブランドを立ち上げ、2030年に向けて、サブスクリプションサービスなどライフスタイル全体をサブスクする存在になっていくと予想される。
     

    ーー消費の量、質それぞれにどんな影響が起こるのか?

     
    「量」という点では、良いものを長く使う、そういった行動が増える。社会志向層や物を消費しないミニマリストも増えるので、確実に消費量が減少していく。加えてプラットフォーマーによるサブスク型のサービスが増えていくと、ここでも消費量が減少する。
     
    商品の「質」という観点では、世界観やブランドストーリーに共感できるブランドしか消費しない、サステナビリティが衣食住での軸になったり、自分の価値に響くものしか消費しないという中で、消費のあり方そのものが変わっていき、商品の「質」に与える影響は大きいと思う。
     

    ーー上記のような2030年に向けての大転換を前提に、アパレル経営には何が求められるのか?

     
    アパレル経営に求められることは、次の6つのポイントである。

    1. ファストファッションからの脱却:
    2. 大量生産、大量消費を前提としたモデルから脱却しなければいけない。
       

    3. ビジネスモデルの見直し:
    4. 作りすぎ、在庫過多に陥りがち。適量を作ってプロパー価格で売りきるビジネスモデルに。
       

    5. カーボンニュートラル:
    6. カーボンニュートラルに目指した気候変動対策CO2削減は業界として大前提になる。
       

    7. 社会課題とブランドストーリーとの接続:
    8. Z世代を中心として、自分のコンテクストに響かないと買わない人が増加。コンテクストが社会課題と紐づいている人が確実に増える。
       

    9. ESG対応:
    10. 上場企業であれば、株価も意識するのは当然だが、ESGスコアをあげた方が株価も上がりやすいという時代になってきている。
       

    11. KPI/KGI改革:
    12. ESGと紐づくが、売り上げ偏重の経営指標から、新たな時代にあったKPI、KGI設計が必要となる。
       

      ーー企業として求められる本当のコミットメントの意味とは?

       
      Scope1-3の可視化と削減目標の公約は、グローバルでは当たり前になってきているが、日本の企業はまだわずか、アパレル業界でScope3まで含め自社のCO2排出量を開示している企業は、日本では2社のみ。
      ほか日本では、マーケットからの評価が高い傾向があるESGスコアやパリ協定に準じたCO2削減目標を持っている企業に対して与えられる国際的な認証、SBT認証を取得している企業はまだわずか。
       
      取り組みに対してコミットメントするだけでなく、このような認証もしっかりとる動きも求められているところである。
      (公開インタビューイベントは2022年6月10日に実施)
       
      ■福田稔氏/株式会社ローランド・ベルガー パートナー、消費財・小売プラクティスリーダー
      
慶應義塾大学卒、欧州IESEビジネススクール経営学修士(MBA)、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院International MBA Exchange修了。電通国際情報サービス(ISID)を経て現職。アパレル、ラグジュアリー、化粧品等の消費財、小売、ネットサービス等のライフスタイル領域を中心に、グローバル戦略、ビジョン策定、サステナビリティ戦略、DX推進等の立案・実行に豊富な経験を持つ。
経済産業省ファッション未来研究会の副座長を務めるなど政策面の支援も実施。シタテルやIMCFの社外取締役を務め、業界の革新を促すスタートアップに対する支援も行う。近著に「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」(東洋経済新報社)「2030年ビジネスの未来地図」(PHP研究所)など。

      Glossy+Talksの全貌は動画コンテンツにてご覧いただけます。

      動画はこちらから。

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