「Blade Rondo」や「Lemures」などで知られるDomina Gameから、権力者たちの歓心を得て最高の商家を目指す対戦カードゲーム「Serviam」が2022年7月21日に登場しました。プレイヤーは由緒ある商家の当主となり、権力者に贈り物をして取り入り、時には裏社会の力に訴えながら他家を出し抜く必要があるとのことで、どんなゲームか気になったので実際に遊んでみました。
Serviam | Domina Games
https://www.dominagames.com/serviam
Serviamのパッケージはこんな感じ。イラストレーターはsena氏、ゲームデザイナーはAntony Wyatt氏です。
プレイ人数は1~4人、プレイ時間は20~60分、対象年齢は12歳以上を想定。
中身は説明書が1冊、影響力ボードが3枚、サマリーカードが1枚。
Serviamの世界は「暴君が病に倒れ、権力闘争が巻き起こっている」とのこと。3枚の影響力ボードはそれぞれ、軍事力を持つ王国軍(青)、既存の教会を脅かす新興宗教であるミドラ教団(緑)と国政を担う貴族で構成される王国議会(赤)のキャラクターとその影響力を示します。それぞれの派閥には3人の権力者がおり、上から順番に星3・星2・星1と、キャラクターの序列が決まっています。また、各キャラクターの横には「-3・0・0・1・1・2・2・5」という影響力を示す目盛りが書かれています。
そして、ゲームで使われる権力者カード36枚(左上)と献上品カード36枚(左下)、悪魔カード4枚(中央上)と賄賂カード4枚(中央下)、勝利点カウントカードが4枚(右上)、敵商家カードが5枚(右下)。
3つの勢力の色に対応した影響力マーカーと、白と黒の勝利点マーカー。
4人で遊ぶため、ゲームの準備を行います。まず影響力ボード3枚の上にそれぞれの色に対応した影響力マーカーを、目盛りにある左側の「0」の上に置きます。
続いて、勝利点カウントカードと権力者カードを各プレイヤーに配ります。権力者カードは9枚×4種類あり、勝利点カウントカードと同じ色のものをセットにします。
権力者カード9枚をよくシャッフルし、5枚を裏向きに並べて残りのカードを右に置きます。5枚並べたカードのうち、両端のカードを表向きにします。この5枚が、自分の商家が頼ることのできる「人脈」というわけです。
次に、36枚の献上品カードをシャッフルして山札を作り、各プレイヤーはカードを2枚ずつ引きます。ただし、「脅迫状」というカードが出た場合は引き直します。
さらに悪魔カードと賄賂カードを1枚ずつ受け取り、合計4枚を手札とします。
これでゲームの準備は完了。
Serviamの目的は、7ターンの間に献上品を権力者に送って取り入ることで勝利点を稼ぎ、最終的に他のプレイヤーよりも多くの勝利点を稼いで最高の商家として勝利することです。「最近お金を受け取ったプレイヤー」がスタートプレイヤーとなり、時計回りに手番を進めていきます。
自分の手番では、「献上フェイズ」「陰謀フェイズ」「人脈拡大フェイズ」「褒賞フェイズ」「ターン終了フェイズ」の順番に処理を行います。
「献上フェイズ」は、自分の前に並べた権力者カードの下に、手札から献上品カードを出します。例えば以下は、ヴィクトリア卿に「妖精の置物」を献上したところ。献上品カードには「その献上品をささげると権力者への影響力がどう変化するか」が記されています。この「妖精の置物」の場合、「ささげた権力者の影響力が+1、さらにヴィクトリア卿の影響力が+1、人脈にヴィクトリア卿がいる場合はさらに序列が星3の権力者の影響力を-2する」という効果があります。
そのため、権力者ボードにあるヴィクトリア卿の影響力マーカーを2つ横に動かします。
さらに序列が星3の権力者の影響力を下げます。手番のデ・メディナ家は「政教分離は大事だから」と言いながら、新興宗教団体であるミドラ教会のマティアス司教の影響力を下げました。
献上フェイズを行ったら次は「陰謀フェイズ」なのですが、これについては後述。今回は陰謀フェイズの処理を行わず、「人脈拡大フェイズ」を行います。人脈拡大フェイズでは、このターンで献上品をささげた権力者カードの横に裏向きのカードがある場合、そのカードを表向きにします。つまり、献上品をささげながら人脈をどんどんと広げ、ゲームが進むとより多くの権力者に取り入ることが可能になるというわけ。
「褒賞フェイズ」では、このターンに自分が献上品をささげた権力者の影響力に応じた勝利点を得ることができます。影響力ボードを見ると、今回献上品をささげたヴィクトリア卿であれば1点をゲットできるので、勝利点カウントマーカーに1点を追加します。
「ターン終了フェイズ」で、山札からカードを1枚引いて、ターン終了です。
バッツィ=ベッティ家は「やはり軍人にはつけとどけが一番」となにやらあくどいセリフを吐きながら、軍部で星2の序列に当たるクルト近衛師団長に「賄賂」を献上しました。「賄賂」は献上した権力者と任意の権力者の影響力を1ずつ上げることが可能。
今回はクルト近衛師団長の影響力を2あげました。
そして、「賄賂」カードの右上には、秘密結社めいた「陰謀アイコン」が描かれていました。この陰謀アイコンが書かれたカードを献上すると、「陰謀フェイズ」を実行できます。
陰謀フェイズでは、献上した権力者の固有スキルである「EFFETTO ORDINE効果」が発動します。クルト近衛師団長の「隠蔽(いんぺい)工作」は、場に置いた献上品カード1枚と手札を入れ替えたのちにクルト近衛師団長の影響力に基づいた勝利点をゲットできるというもの。
このクルト近衛師団長の効果は、今出した「賄賂」を手札の献上品カードと交換することも可能。新しく出した献上品カードの効果は発動されないので注意が必要ですが、基本的に一度献上してしまったものはもう手札に戻ってこないので、一度出したカードをまた手札に戻せるのはかなり強力な効果です。
「権力者に賄賂を出したのにその賄賂をまた奪い返すのはいいのか?」などのツッコミがテーブルの上を飛びます。
また、献上品カードの中には「脅迫状」というカードもあります。脅迫状カードには陰謀アイコンが描かれているので、権力者に送れば陰謀フェイズを実行できますが、送りつけた権力者の影響力を下げてしまう効果がある上に、脅迫状を送った権力者には献上品をささげることができなくなるというデメリットがあります。いかに商家といえども、権力者を一度脅迫してしまったらせっかくの人脈を失うことになるのは当然のことかもしれません。
以下の場面は、ラ・フォルティーナ家がついに脅迫状を3人の権力者に送りつけた場面。周りのプレイヤーは「こいつ……商家のくせに権力者を脅迫しまくってやがる……」「怖いものなどないんか?」など、騒然としました。
脅迫状を送られたヴィルヘルム将軍のEFFETTO ORDINE効果は「指定した組織に属するすべての権力者の影響力マーカーを一律に+2あるいは-2する」というもの。
ラ・フォルティーナ家は、王国議会の影響力をすべて+2します。すると、ヴィクトリア卿の影響力が最大値に到達。
ラ・フォルティーナ家の狙いはヴィクトリア卿の影響力を最大まで上げることで、勝利点5をゲットするためでした。
しかし、ここでバッツィ=ベッティ家がエレオノーラに脅迫状を送りつけました。エレオノーラのEFFETTO ORDINE効果は「同じ組織に属する2人の影響力を入れ替える」というもの。
「当然ヴィクトリア卿には黙っててもらう!」と、バッツィ=ベッティ家はバルトサール宰相とヴィクトリア卿の影響力を入れ替えてしまいました。
さらに別のプレイヤーがバルトサール宰相に、陰謀アイコンを持つ「悪魔」を送りつけました。バルトサール宰相は、「指定した権力者をすべてのプレイヤーの人脈から取り除かせ、新しく権力者カードを引き直させる」というEFFETTO ORDINE効果を持っていました。
すると、「ヴィクトリア卿が人脈から失われるなんて……ひどすぎる!」と、ケルシュバウニ家。実はラ・フォルティーナ家が影響力を強めていることを知り、ケルシュバウニ家は自分の人脈にもヴィクトリア卿がいたことから、そのおこぼれに預かろうとしていた様子。
代わりにケルシュバウニ家の人脈にやってきたのはクルト近衛師団長でした。権力者カードと献上品カードには、左上に3つの権力派閥に基づいたアイコンが乗っています。ゲーム終了時の得点計算で「献上品カードと贈った先の権力者カードで同じアイコンの組み合わせがあれば、1つの組み合わせにつき2点」という「需要一致ボーナス」があり、ケルシュバウニ家は赤いアイコンの献上品カードを3枚ささげることで合計6点の追加点を狙っていたのですが、赤いアイコンのヴィクトリア卿が去り、青いアイコンのクルト近衛師団長になったことで、もらえるはずだった追加点が消滅してしまいました。
そんなこんなでドロドロの権力争いが続き、全員が7ターンを終わらせればゲーム終了。なお、1ターンに必ず1枚の献上品カードをささげるので、場に出ている献上品カードの枚数を数えれば、ターン数が把握できます。
最後に得点計算で、その時点の勝利点に需要一致ボーナスを加え、最も点数の高いプレイヤーが最高の商家として勝利します。
脅迫状を贈りまくっていたラ・フォルティーナ家は、人脈にいる権力者5人全員に陰謀アイコンを持つ献上品カードを贈ることに成功していました。5人全員に陰謀アイコンを持つ献上品カードをささげることができると、「闇の影響力ボーナス」で10点ゲットできます。
初回はルール理解もあったため、1回のプレイにだいたい1時間30分くらいかかりました。次に3人でプレイしてみましたが、今度は人数が減ったのと全員のルール理解が進んだこともあり、プレイ時間は約40分でした。
Serviamは権力者達の影響力を動かして最終的に自分が最も得するように手を回すというゲームですが、権力者の影響力は全員で共通なので、自分の人脈にいる権力者の影響力を高めると、他のプレイヤーにもプラスになるという状況がよく見られました、そのため、もちろん「自分に利するように動くと同時に相手を妨害する」というスタイルも重要ですが、「相手の動きに合わせて、自分はついでにその甘い汁を一緒に吸わせてもらう」というスタイルがより勝利につながる鍵になっていると感じました。「相手を利用するだけ利用して最後に裏切る」という、まさに権力闘争のドロドロさを気軽に体験できるゲームとなっています。
権力者にはそれぞれ固有のスキルであるEFFETTO ORDINE効果が設定されており、陰謀アイコンのある賄賂や悪魔、脅迫状をどう切るかでゲームの展開が大きく変わります。そのため、どの権力者に肩入れし、どの権力者をおとしめるのかを考える楽しみがあります。献上品をささげることができる人脈はプレイするたびに変化するので、リプレイ性も高いといえます。
また複数プレイヤーでの対戦だけではなく、バッツィ=ベッティ家を相手に戦うソロプレイモードもあります。そのため、対戦相手が見つからなくても遊ぶことができるのはうれしいポイントです。
なお、ゲーム自体はシンプルなのですが、ルールやフェイズの進め方、ゲームのコツをつかむ必要があるので、最初の1回はルールとゲームの流れを把握するためにゆっくりプレイするのがおすすめです。
Serviamは税込3520円で、Amazon.co.jpで購入可能です。
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