リセールやヴィンテージ向けに デジタルモデル が登場:コスト削減や管理面で大きなメリット

DIGIDAY

7月20日、サンフランシスコを拠点とするラグジュアリー委託販売プラットフォームのザリモーダ(theRemoda)が、バーチャル着装プラットフォームのスタイルスキャン(StyleScan)との提携を発表した。

コスト削減となり、顧客にもメリットのある技術

ファーフェッチ(Farfetch)とウォルマート(Walmart)がともにデジタル着装技術に投資しているなかで、この動きはインクルーシブなモデル着用画像で競争優位に立とうとする方向への転換を示唆している。スタイルスキャンは、AIと既存の製品画像および寸法を活用してフィッティングサイズのデジタルモデル上にスタイルを表示し、商品ページにそのサイズを記載する。現実世界でカタログモデルを起用するのにくらべると、デジタルモデルの使用はコストの削減にもなり、管理も楽だ。特にこれが当てはまるのは、販売するすべてのアイテムが唯一のSKU(最小の管理単位)となるリセール分野だ。

カタログモデルは、1時間50ドル(約6800円)から200ドル(約2万7000円)のコストがかかり、ときには1日に何百点ものアイテムを撮影することもあるし、さらに写真の費用、スタジオ使用料、手数料といった追加費用が発生する。その解決策を提供する企業もあって、たとえばルックレット(Looklet)では、撮影したひと揃いのモデルに、それぞれ新しいスタイルをデジタルで着用させている。

ザリモーダが差別化を図っている点は、ヴィンテージのシャネル(Chanel)を購入する顧客にとって、もっとも重要となるeコマース体験において、質の高いカスタマーサービスを提供することだという。この100年のあいだにサイズが劇的に変化しているため、同じサイズのモデルが着用したスタイルを確認することは、ラグジュアリーの委託販売の顧客にとって大きなメリットがあるのだ。

モデルを使用できない、リセール分野の事情

しかしデジタルでの着装は、従来のeコマースプレイヤーのあいだにも浸透しつつある。昨年、ウォルマートファーフェッチの両社は、ウォルマートが昨年買収したデジタル着装企業ジーキット(Zeekit)との提携を発表した。買収前は、メイシーズ(Macy’s)、アディダス(Adidas)、トミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、リーバイス(Levi’s)といった大手ブランドや小売業者がジーキットの技術を利用していた。ジーキットは、デジタルモデルとバーチャル試着の両方を専門としている。

驚くことに、ヴィンテージやリセールの分野では、サイズにばらつきがあることが以前からハードルとなっているにもかかわらず、この種の技術がまだ試されていない。リアルリアル(The RealReal)やヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)のようなラグジュアリー委託販売会社のほとんどは、コストが法外な価格となる可能性があるため、商品を見せるためにモデルを雇わない。リアルリアルではマネキンを使用しており、ヴェスティエール・コレクティブは平面に並べるかハンガーにかけて服を紹介している。ザリモーダの創業者オリガ・ジリコヴァ氏は、「多くのオンラインのリセールプラットフォームがマネキンに服を着せて表示する理由は、あまりにも多くのサイズの在庫を持つことが必ずしも写真撮影に見合うとはいえないからだ」と話す。リアルリアルとヴェスティエール・コレクティブに対し、デジタル着装サービスに投資する計画についてのコメントを求めたが、どちらからも回答は得られなかった。

デジタルモデルでリセール市場もインクルーシブに

ジリコヴァ氏によると、委託販売業界はオンラインでの可視化という点では、つねに限界があったという。それでも、ほかのeコマースと同様に、最高のオンライン顧客体験を提示することが顧客維持のカギとなっている。スタイルスキャンが12種類の体型と肌色を提供しているように、デジタルモデルによってリセール市場もよりインクルーシブになれる。スタイルスキャンは、来年中にトランスや身体障害者を含む50人から100人のモデルに拡大する予定だ。スタイルスキャンのコンバージョン率は、消費者がモデルと自分を重ね合わせた際に購入にいたる可能性が高いことを示している。提携ブランドには、英国のファッションブランドであるナターシャ・ジンコ(Natasha Zinko)、マルチブランドのラグジュアリー小売店オッズコンセプト(Odds Concept)、宝飾店ミリアンナ(Millianna)などがある。ミリアンナの場合、スタイルスキャンのモデルを導入した翌月にコンバージョン率が44%に上昇した。

スタイルスキャンは、フォーチュン(Fortune)のタームシートで報じられたように、先月100万ドル(約1億3600万円)の資金調達を完了したばかりであり、シードラウンドの総資本が300万ドル(約4億円)に達している。

技術はあるが、eコマースはこの10年変化なし

「私たちが知っているeコマースは、この10年間あまり変わっていない。あらゆることがテクノロジーによって改善されているのに、私たちの買い物は変わらない」と、スタイルスキャンのCEOラリッサ・ポスナー氏は言う。このスタートアップはいくつかの大手提携企業とともに、複数ブランドの商品をひとつのバーチャルモデル上で見せることができるスタイルスワップ(StyleSwap)技術の試験導入も行っている。ポスナー氏はこれをヴィンテージ分野でも提供したいと考えている。

またeコマースや委託販売において、モデル着用画像はウェブ検索でブランドパートナーに有利となる。特に体型や肌の色、ジェンダーが表現されていると、消費者は実際の人物画像をクリックする可能性が高くなるのだ。6月の試験運用では、ザリモーダのアクティブセッションは前月比99%増となっている。

[原文:Digital models are coming for resale and vintage]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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