NFT の法的なグレーゾーンを新たな規制は近く解消する?:ナイキとストックXの訴訟への影響

DIGIDAY

7月11日、スニーカーからスタートし、アートやコレクターズアイテム、エレクトロニクスにまで手を広げたリセール会社のストックX(StockX)が、新たなブランドキャンペーンを発表した。

キャンペーンのテーマは「Own it(所有せよ)」で、ストックXの消費者が同プラットフォーム上で購入できる物を通じて、いかに自分の個性や個人の美意識の一部を「所有」できるかということに焦点を当てている。だが、「Own it」という言葉は、いまのストックXにとって問題をはらんでいる表現だ。

米国特許商標庁にNFTの法的権利の調査を求める

ストックXがナイキ(Nike)と続けている訴訟は、所有権の概念にかかっている。ナイキは5月にナイキの画像を使ったNFTを販売しているとしてストックXを提訴した。ナイキは、ストックXがナイキの保護された商標を使用したデジタル製品を販売していると主張しており、一方ストックXは、NFTはストックXが保有する実際の物理的なシューズと結びついたトークンに過ぎないと反論している。

2021年初めにNFTが爆発的な人気となってから、この領域に参入しようとするブランドが殺到しているが、規制が追いついていない状態だ。こうした曖昧さが、誰が何のNFTを製造して販売する権利があるのかということを巡って、ナイキとストックXの間のような対立を生んでいる。

しかし、この曖昧さはすぐに変化するかもしれない。7月8日、ノースカロライナ州のトム・ティリス上院議員とバーモント州のパトリック・リーヒ上院議員は、この問題に関する政策の指針とするべく、NFTの使用と法的権利に関する調査を実施するよう求める共同書簡を米国特許商標庁に送付した。

ティリス上院議員とリーヒ上院議員が送った質問項目では、NFTが第三者の所有する資産に関連する場合、どのような方法で侵害が適用され、誰が責任を負うのかについて答えるよう米国特許商標庁に要求している。

「いまのところ、これは法的にはグレーゾーンだ」と話すのは、リセール会社トローブ(Trove)のCEOアンディ・ルーベン氏だ。同社は現在はまだNFT分野に関与していない。「NFTやブロックチェーンはまだ初期段階すぎるので、この多くはいまだにはっきりしていない」。

リーヒ上院議員によると、これらの質問にすぐにでも回答することが重要だという。「NFTは現在すでに世界的に使用されており、比較的最近導入されて以降、その採用は増え続けている」と彼は書簡で述べている。「NFTは、学問からエンターテインメント、医療、芸術まで、ほぼすべての領域にみられている。したがって、NFTが知的財産権の世界ではどのように位置づけられるかを理解することが不可欠である。すでに述べたように、その権利は、現在すでに存在しており、そして将来的に反転する可能性がある」。

EUでは2023年に施行される法律にNFTを組み込む予定

欧州連合(EU)も最近、NFTの台頭に対応するため、商標政策を更新している。EUは、ニース分類と呼ばれるシステムを活用して、異なるタイプの商品や製品を商標出願のために一定のカテゴリーに分類している。7月8日、欧州連合知的財産庁は、2023年に施行されるニース分類の次の更新版で、NFTを法律に組み込むと発表した。現在、デジタル商品と呼ばれる既存の分類は、たとえばiTunesからダウンロードできる音楽などの製品に適用されているが、これにNFTが含まれることになる。

しかし、EUの新しい規則では、バーチャルグッズをNFTと表現するだけでは十分ではないとされている。その代わり、EUはNFTの販売者に対し、NFTがどのような種類のデジタル商品と結びついているかを明記するよう求める予定だ。たとえば、デジタルアート作品と結びついたNFTは、そのアートも記載しなくてはならなくなる。注目すべきは、EUの規則では、NFTは物理的な商品ではなく、特にデジタル商品に結びつけられるとされている点だ。

ナイキとストックXの訴訟への影響は?

ナイキは、この分野で積極的に活動してきた。スウッシュや「Just Do It」など、様々な保護対象画像を「ダウンロード可能なバーチャル商品」に使用するための商標および「使用目的」に関する申請を、2021年末に米国特許商標庁に提出した。

もし米国特許商標庁がEUと同様の結論を出した場合、ストックXのNFTは物理的な靴と結びついており、保有者が受け取るナイキの商標の画像を特徴とするデジタル画像とは結びつかないというストックXの主張にとって打撃となるだろう。

「(ストックXの)主張は、購入者が取引またはコレクションしてポートフォリオに表示できるストックXのナイキブランドのヴォールトNFTは、ストックXが追加の同社のサービスや不特定の利点(ストックXリリース、プロモーション、イベントへの独占アクセス)とバンドルした新たなバーチャル製品だという事実を反映している」。ナイキのストックXに対する訴訟にはそう書かれている。

[原文:New regulations may soon clear up NFTs’ legal gray areas]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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