「あらゆる ブランド にとって、よいパートナーとなりたい」:コートアベニュー 共同創業者兼パートナー ケニー・トムリン氏

DIGIDAY

エージェンシーホールディングスモデルを覆す新世代のマーケティングサービスネットワーク(エージェンシーと呼ばれることを好まない)−−メディア・モンクス(Media.Monks)、ジェリーフィッシュ(Jellyfish)ブランドテック(BrandTech)はいずれもヨーロッパに拠点を置きながら、米国をはじめとして世界に展開している。

米国でも、コートアベニュー(CourtAvenue)が持株会社モデルを覆し、独自のネットワークをつくり上げている。カンヌライオンズの期間中、コートアベニューの共同創業者兼パートナーであるケニー・トムリン氏にインタビューを行い、景気後退に突入しそうな状況で、どのように事業を拡大していくかについて話を聞いた。

トムリン氏はデジタルエージェンシーのロックフィッシュ(Rockfish)を立ち上げ、2011年、WPPに売却。その後、WPPベンチャーズ(WPP Ventures)のかじを取った人物で、独立系と持株会社の両方の経験がある。

なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには編集を加えている。

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──コートアベニューは2021年に売上を倍増させ、景気後退が近づいているにもかかわらず、2022年もさらに25~30%の成長を目指している。どのように実現するつもりか?

私たちはまず第一に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の戦略コンサルタントとして招かれ、その下に多くの実行業務がある。しかし、すべては経営幹部から始まり、まずDXのロードマップを描かなければならない。そして、それは単なるマーケティングの仕事ではない。経営幹部向けインターフェースの仕事だ。(中略)破壊的な力としてのソフトウェアが景気後退で減速することはない。

それどころか、企業はテクノロジーを使ってコスト削減する方法を探し求めるため、むしろ加速する。そして、次のような問いに行き着く。顧客エンゲージメントとは何か? 顧客関係管理(CRM)、顧客ロイヤリティとはどのようなものか?世界最大規模のブランドや企業は今、D2Cとそのサービスを提供する方法について考えている。これらが今、私たちが招かれている理由だ。たとえ景気後退の局面でも、高成長が期待できる分野だと思う。企業はそこに投資し、傾注していくと私は予想している。

──今後1~2年間の拡大、買収計画は?

現段階では意図的に資金調達を控えているが、起業家精神のある企業でありたいと考えている。私たちはひとつのバーティカルに特化した企業を育てたいと考えており、CEOと創業者がそれを率いるのが一番だと思っているが、これは現実に起きていることと関連している。だからこそ、私たちはホールディングスではなくオペレーティングネットワークを自称している。私たちは育てているものすべてを意図的に所有、管理しているため、損益上の利益相反はない。そして、これらの能力は私たちの活動を強化するものであり、中核サービスと競合することはない。

ちょうどレッド・ライン(Red Line)という会社を立ち上げたところだ。これはデジタル製品の開発やバックエンドのソフトウェアエンジニアリングを手掛ける企業で、私の前職であるロックフィッシュの一員だったCEOが率いている。彼はCEO兼共同創業者だが、レッド・ラインはコートアベニューの一部だ。また、中南米にもコートアベニューをつくり、CEOを擁するメキシコシティのオフィスを開設した。おそらく2023年には、他の国外市場にも展開できる予定だ。

そして年内には、アドビプロフェッショナルサービス(Adobe Professional Services)に特化したターン・トゥー(Turn Two)という会社を立ち上げるつもりだ。私たちの顧客の多くがアドビ(Adobe)の技術スタックを利用しており、その製品に対応したサービスを求めている。ただコートアベニューの一部門にするのではなく、CEOを雇った方がいいと判断した。私たちのために事業を運営してくれる素晴らしいCEO兼創業者をすでに見つけている。

──ビジネスを進めるうえで競合している相手は?

AKQA、VMLY&Rのような最大手のエージェンシー、さらには、アクセンチュア(Accenture)と競合している。そして、起亜自動車(Kia Motors)、デル(Dell)、ユナイテッドヘルスケア(UnitedHealthcare)、エプソン、米空軍といった、かなり良い顧客リストを私達は持っている。パートナーシップに何億ドルも投じる顧客たちだ。私たちはオーガニックな成長でこれを成し遂げた。別のロゴに頼らなくても、このビジネスを10倍の規模にする余地はあると私は考えている。

ただ、間違いなくそれだけで10倍に達することはない。新しい顧客を増やすこともひとつの道だ。しかし同時に、よいパートナーであること、よい人材を採用すること、コスト面で公正であることなどによって、オーガニックな成長を遂げることができる。私たちの望みは、先に挙げたブランド、すでに仕事をしているほかのブランド(マスターカードなど)すべてにとって、そのようなパートナーになり、毎年、彼らとの関係を大きくしていくことだ。

──厳しい状況のなか、人材確保にどのように取り組んでいるのか?

私たちの業界は人材採用が多く、私たちも積極的に採用している。現在の状況を踏まえて、年末までに(フルタイムの従業員約70人、請負業者約30人から)さらに30人ほどを増員するつもりだ。今のところ、私たちの顧客は経済を注視しながらも、プロジェクトを控えるというような意思表示はしていない。私たちは現実的に、そして、注意深く行動している。しかし現在、年末までに行う仕事で、最低25~30人はチームを大きくする必要がある。そのため、おそらくフルタイムの従業員100人程度と多数の請負業者で2022年を終えることになるだろう。

[原文:Media Buying Briefing: Court Avenue’s Kenny Tomlin explains how the network will grow in a recession

Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)

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