ラグジュアリーパートナーシップ責任者であるクリスティーナ・カラソリス氏は、ブランドがTikTokへのアプローチ方法を変化させていることを目にしている。ネイティブブランドキャンペーンを作成するときに重要な要素やクリエイターとの提携がどうTikTokの成功につながっているかを分析している。
2年前、ファイナンシャル・タイムズ紙の広告部門からTikTokに入社して以来、ラグジュアリーパートナーシップ責任者であるクリスティーナ・カラソリス氏は、ブランドがTikTokへのアプローチ方法を変化させていることを目にしている。現在ではブランドは消費者とつながるためにエンターテイメントを活用して付加価値を加えている。グッチ(Gucci)やバーバリー(Burberry)ようなラグジュアリーファッション企業は、トレインスポッター(鉄道ファン)のフランシス・ブルジョワ氏(別名ルーク・ニコルソン氏、フォロワーは260万人)や、シア・ヴォン・エンゲルブレクテン氏(フォロワー190万人)が制作するシルバニアンドラマ(Sylvanian Drama)などのコメディアカウントとのパートナーシップのように、既成概念にとらわれないアイデアを取り入れてTikTokで成功を収めている。
以下で、カラソリス氏は、ネイティブブランドキャンペーンを作成するときに重要な要素や、ファッション分野以外のクリエイターと提携することがTikTokの成功の秘訣である理由を分析している。
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ーーTikTokの認識について、変化したことは?
「TikTokはZ世代とミレニアル世代向けだと思われている。だが、実際にはTikTokというのはマインドセット。オーディエンスの67%が25歳以上であることが判明している。特にラグジュアリーブランドに関しては、フィルタリングされていないストーリーテリングと、ハイ(高)カルチャーとロー(低)カルチャーの融合を活用することが重要だ」。
ーーラグジュアリーブランドのキャンペーンでもっとも優れた例は?
「TikTokのファッション分野に最初に進出したブランドはグッチとバーバリーだった。ハッシュタグ #accidentalinfluencer キャンペーン(視聴回数は260万回)を行ったグッチ、そして次にバーバリー。バーバリーはTikTokでのモノグラムキャンペーンで成功を収めて、新しいオーディエンスにアプローチできた。TikTokはこの2年間バーバリーと協働している。昨年にはバーバリーエフェクトをローンチした。これは、バーバリーのARテクノロジーフィルターを使って指で絵を描けるモノクロツールだ。最終的には37億回視聴され、フィルターも70万を超える人々から使われた」。
ーーラグジュアリーファッションブランドはTikTokで成功するキャンペーンをどのように作成できるか?
「型にはまらない考え方をするべきだ。なぜなら、TikTokはソーシャルプラットフォームではなくコンテンツプラットフォームだから。ラグジュアリーの購入者がいつもファッションの話題に興味があるとは限らない。それが、グッチのコラボレーションが示しているように、トレインスポッターのフランシス氏のような特別な場合が成功する理由だ。このコラボレーションで非常に興味深かったのは、ライブストリーミングを開始したとき、リアーナ氏を含むセレブリティたちも関与していたのに、「フランシスはどこ?」というコメントばかりだったことだ。フランシス氏とのコラボやシルバニアンドラマとのバーバリーのコラボ(視聴回数2万回)は、TikTokが何であるかの縮図だと言える。ラグジュアリーブランドにとって拡大することが重要なのは、TikTokでは(ブランドの主要顧客層とは違う)幅広いオーディエンスにアプローチできるからだ。バーバリーにとってさえもローラバッグ(Lola Bag)は記念すべき瞬間だった。おそらく視聴者がこれまでにチェックしたことがないと思われるアカウントでバーバリーのこのバッグが紹介されているのを見て、視聴者は購入したいと思ったのだった。
ファッションにフォーカスするだけでも成功を収められるブランドはある。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)は常に新しいことに取り組んでいるブランドだ。ディオールは、カーラ・デルヴィーニュ氏に同社のジョエアルリー(Joaillerie、フランス語のジュエリーの意味)を間違えて発音させたり、ASMRも利用している。ファーフェッチ(Farfetc)は最近TikTokに進出した(フォロワーは9000人)。eリテーラーがラグジュアリー分野でどのように目立つことができるかがいまでは重要だ。ファーフェッチには、レニー・クラヴィッツ氏(視聴回数170万回)やヒース・レジャー氏のようなセレブの外見を再現する方法についてのビデオシリーズもあった。同社のeリテーラーとしての実体は変わっていないが、TikTokで流行しているように懐かしさを取り入れようと試みている」。
ーーTikTokでラグジュアリー企業はどんな課題に直面しているか?
「ラグジュアリーブランドはそれぞれの感性で知られているが、ではそれを手放すべきなのか? 我々は『ブランドとしての本質を変えるべきだ』と言っているのではない。『ストーリーの伝え方を変えるべき』ということなのだ。結局、グッチやカルバン・クライン(Calvin Klein)やバーバリーというブランドの真の姿は変わらない。ストーリーを語るときには、参加型で、ネイティブで、その消費者にとって付加価値をもたらす方法を取る必要がある。いまではオープンな競争の場なので、これらの企業は枠にとらわれずに考え始めるべきだ。
(ブランドは)チャレンジャーのブランドやハイファッションブランドらと競合している。先日、カルバン・クラインとのキャンペーンを行った(視聴回数13.4万回)。それがチャレンジとしてどのように機能したかを振り返ってみると、カルバン・クラインというのはどんなモデルからも起用されたいと思われているブランドだ。カルバン・クラインに起用されれば、モデルとして成功を収めたことになる。カルバン・クラインは #onlyinmycalvins というチャレンジを開始して、2週間で世界中で200億回視聴された。それは実にシンプルなアイデアだった。素晴らしいサウンドからスタートして、視聴者は象徴的なカルバン・クラインの白黒の背景(フィルター付き)という舞台裏に移動する。新しい世代の人々がインスピレーションを受けて、『私もカルバンクラインのモデルになれる!』と言いながらカルバン・クラインの下着やTシャツ姿で祝った」。
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)
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