スナップ とゲームデベロッパーがAR「死霊のはらわた」表紙を作った理由:「雑誌の体験を斬新な『なにか』で破壊したかった」

DIGIDAY

映画「死霊のはらわた(Evil Dead)」から派生したゲーム「Evil Dead: The Game」の発売を販促するべく、ゲームデベロッパーのセイバー・インタラクティブ(Saber Interactive)は、Snapchatで知られているスナップおよび米コンピュータゲーム雑誌ゲーム・インフォーマー(Game Informer)と提携し、ゲーム由来のオーディオおよびビデオアセットを擁する、同誌のAR表紙を制作した。

ゲームの発売は2022年5月13日だった、AR表紙を配したゲーム・インフォーマーは4月から店頭に並べられた。Snapchatユーザーが表紙のスナップコードをスキャンすると、「死霊のはらわた」の主人公アッシュ・ウィリアムズが代名詞のチェーンソーアーム(アッシュは切断された右腕にチェーンソーを装着している)で雑誌に穴を開け、続いて声優の声と共にゲームのさまざまなシーンや登場人物が現れる、という没入型アニメーションが見られる。これまでにスナップコードをスキャンした人数について、スナップから回答はなかった。

「Snapchatは極めて合理化されたプラットフォーム」

このアクティベーションはスナップとセイバー・インタラクティブ双方の考案によるもので、両社のクリエイティブチームが2022サウス・バイ・サウスウェスト(2022 South by Southwest)で杯を酌み交わすなかで、着想を得たという。

「昔からの友人、スナップのチーフビジネスオフィサーのジェレミー・ゴーマンと飲んでいたとき、その場で素晴らしいアイデアが次々と溢れてきたんだ」とセイバー・インタラクティブのミュージックディレクター、スティーブ・モーリッツ氏は話す。同氏はこのアクティベーション用の音楽を創るとともに、サウンドデザインも担った。「あの表紙は数週間であっという間にできた。アッシュを表紙にしたらどんなにワクワクするか、しかも動き出したらどんなに面白いか話していて、ゴーマンと盛り上がったことがきっかけだった」。

ゲーム・インフォーマーが表紙にAR技術を使うのは、これが初めてではない――サイバーパンク2077(Cyberpunk 2077)といったゲームの販促にも同技術を利用した――が、新規制作アセットとゲームのナラティブ的要素を擁した、本格的なAR販促の実施は、同誌にとって初の試みであり、AR技術の広範なオーディエンスへの紹介に関して業界を牽引する第一人者であるスナップとのARでの提携も、今回が初となる。

「スナップは米国で極めて高い市場占有率とリーチ力を誇る。したがって、彼らがスナップと組んだことに驚きはない」と、没入テクノロジーにフォーカスするエージェンシー、プリティ・ビッグ・モンスター(Pretty Big Monster)の共同創業者ジェイソン・スタインバーグ氏は話す。「Snapchatは極めて合理化されたプラットフォームであり、視覚性に長けている」。

いかにゲーマーとの接点を構築するか

ゲーム・インフォーマーは以前からセイバー・インタラクティブのゲーム作品を表紙に載せており、そんな両社の関係について、セイバー・インタラクティブのマーケティング部門トップ、アダム・テッドマン氏は「伝統」と称する。ゲーマーが没入技術およびメタバースにますます慣れ親しむなか、スナップが自らのAR技術をゲーミングオーディエンスに紹介するべくゲームデベロッパーと手を組むのは、理に適った戦略だ。

「紙版の雑誌は通常、非常に受動的な経験だが、我々はそのカテゴリーを超が付くほど斬新な何かで破壊したいと考えている」と、今回スナップに協力した社内ARクリエイティブスタジオ、アーケイディア・スタジオ(Arcadia Studio)のグローバルディレクター、レッシュ・シドゥ氏は話す。「今回、我々がターゲットとしたオーディエンスはゲームファンというよりも『死霊のはらわた』のファン、あのシリーズをよく知る、あのシリーズが大好きな人々だ」。

「一般に、ゲーマーの姿勢はオープンだ――自身の機器について、それがPCでもスマートフォンでも、障害をひとりで乗り越えていく力がある」とスタイバーグ氏。「今回の障害はスナップコードであり、Snapchatをダウンロードしなければならない人もいると思う――でも、彼らはすぐにそうしてくれるはずだ」。

今回のAR表紙は、モーリッツ氏とセイバー・インタラクティブにしてみれば、比較的新しい類のブランドアクティベーションにおいて、その創造力を発揮できる好機であり、スナップにとっては、Snapchatの通常のゲーミングオーディエンスとは異なる年齢層にリーチし、ゲーミング界へのさらなる進出を図れる機会でもあった。後者の一般的年齢層は現在、13歳から24歳が中心となっている。「ゲーム・インフォーマーファンは、下は16歳や18歳から、上は何歳までだって行くかもしれない――たとえば私は40歳だが、いまもゲーマーであり、いまもゲーム・インフォーマーの愛読者だ」とシドゥ氏。「つまり、我々は今回、それだけ広い層に語りかけることができた、ということだ」。

AR、VRに接近するゲームデベロッパー

ARおよびVR技術がさらなる普及を続けるなか、セイバー・インタラクティブといったゲームデベロッパーがこの種の没入型アクティベーションに今後も傾倒する可能性は高い――そして、いま現在、Snapchatはゲーミングオーディエンスを擁する、最も高度で、最もアクセスしやすいARプラットフォームと言える。

「我々はセイバー・インタラクティブだ」とテッドマン氏。「そして、実験的マーケティング戦略に関して言えば、ARほど完璧なインタラクティブにできるものはない」。

[原文:Why Snap and Saber Interactive are promoting the release of Evil Dead: The Game with an AR magazine cover

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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