Netflix の広告付きプランに対する5つの新たな疑問:業界幹部らの匿名回答から読み解く

DIGIDAY

今年の第4四半期からストリーミングプラットフォームに広告を加えるというNetflixのプランの詳細を待つうちに、メディアバイヤーと広告主のあいだで期待が高まっている。Netflixのコンテンツの多くは高品質だと広く認識されており、日ごとに軟調になりつつある市場で高い広告レートで販売できる可能性があるからだ。

デジタルファーストの世界では、広告販売を取り入れる動きは避けられないものと感じられる。「インターネットの主要なビジネスモデルは広告であり、サブスクリプションではない」とNetflixのパートナー候補のSSP、パブマティック(PubMatic)でCEOを務めるラジーブ・ゴエル氏は語る。「広告の美点は、ジャーナリズムやニュース、エンターテインメント、スポーツのどれであろうと関係なしに、コンテンツへのアクセスを民主化していることだ。広告モデルがサブスクリプションモデルよりもはるかにスケーラブルなのは明らかだ」。

Netflixは、プランの詳細をまだ公表していないため、(匿名を条件に)米DIGIDAYがインタビューした業界の幹部数人は、加入者数の減少に直面して重要な収益源と見られているものを秘密裏に構築しようとする取り組みをめぐって、多くの疑問に回答した。

また、DIGIDAYのシニアメディアエディター、ティム・ピーターソン氏は4月に、Netflixに関する5つの疑問を投げかけたが、今回の質問では、以下に挙げる点に焦点を絞っている。

疑問その1:Netflixはどのアドテクパートナーを選ぶのか?

Netflixは、第4四半期のスタートに間に合うように、オーダーメイドの広告販売事業を構築するのではなく、アウトソースの自動化ベースで広告販売事業を開始する計画を立てているらしい、とうわさされている。可能性が最も高いパートナーとしては、 ザ・トレードデスク(The Trade Desk)の名がもっともよく挙がっている。また、(ザ・トレードデスクの)CEOのジェフ・グリーン氏は最近、決算報告で次のように表明している。「(元NetflixのCFOで、約5年前にザ・トレードデスクの取締役になったデビッド・ウェルズ氏のおかげで)Netflixとはこれまで素晴らしい関係にあった。当社がパートナーになる可能性については、極めて楽観視している」。

だが、Netflixは、市場に広告機会を提供するためにはSSPが必要となるため、Netflixのプランについてある程度知っている情報筋は、コムキャスト(Comcast)傘下のフリーホイール(FreeWheel)やGoogleなどの名を挙げている。Netflixに精通しているあるメディア幹部は、Amazonがパートナー候補だとほのめかし、「シアトルではサプライズになるかもしれない」と述べている。

Netflixは6月中にパートナーを選ぶ見込みだ、とプランに詳しいある情報筋は言う。

疑問その2:広告販売担当責任者も現れるのか?

Netflixのプランに詳しい幹部2人は、Facebookの元広告営業責任者キャロライン・エバーソン氏や、Hulu(フールー)の元販売責任者で現在はスナップ(Snap)で販売担当バイスプレジデントを務めるピーター・ネイラー氏、Googleのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるタラ・ウォルパート・レビー氏など、話題にされてきた上級幹部のひとりに白羽の矢が立つ見込みは薄いと語った(なお、Netflixは、物事を決定する前に何度も考えが変わることで有名であり、Netflixのプランに詳しいといっても、現時点での話だ)。少なくとも、今年はないという。

大手エージェンシーグループのある最高投資責任者は、第4四半期の広告開始に間に合うよう、新しい広告販売責任者と優秀なエンジニアを採用するのに十分な時間がない、と指摘した。

疑問その3:広告付きプランはどのようなものになるのか?

現時点では、Netflixは広告が含まれる月額5.99ドル(約800円)のサブスクリプションオプションのプランを提供するかのではないかと推測されている。その形式については、スポット広告が番組の妨げになることはないという報道から、コンテンツの前後のスポット広告になると見られている。Netflixのプランについて知る幹部によると、同社は米国のような市場で注目されるのを避けるため、おそらく世界市場で、こうしたプランのテストを検討中だという。

前述の幹部が話した内容を口にはしなかったが、パブマティックのゴエル氏は広告戦略の実行方法に影響しうるNetflixの世界展開の野望についてこう語っている。

「インドやインドネシアのような発展途上の市場に目を向けると、可処分所得が英米の平均的な人よりかなり少ない人々がこの2カ国に約20億人おり、コンテンツのサブスクリプション料金に対する彼らの支払い能力は大幅に低い。広告付きモデルがあれば、もっと多くのユーザーにコンテンツモデルが開放される」。

疑問その4:Netflixはどれだけのデータを共有するのか?

Netflixはそれでなくても、データについてはガードが極めて高いと評判であり、有名番組がどれほど好調かを知るための手がかりはめったに公表されていない。当然ながら、メディアエージェンシー幹部は、Netflixで広告を購入したらどの程度のデータが共有されるのか疑問に思っている。

「Netflixはデータを共有することを好まないのに、パートナーがどの企業であれ、どうやってデータを共有するつもりなのか? (パートナーは)そこで起きている事についていろいろ知る必要があるのだから」とあるメディアエージェンシー幹部は述べ、取引の仕組みについても思いめぐらせた。「難しい問題だ。広告主は、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の一部に対していくらかの対価を払うだけなのか? この世界で誰がそんなことをするのだろうか」。

疑問その5:ロングテール型か、インテリ向けか

NetflixのCEO、リード・ヘースティングズ氏は、エンジニアリングの視点から問題に取り組むことで知られており、それが、ユーザーの心に深く入り込むアドレサブル広告の機会の提供につながる可能性がある。だが、Netflixには、「ブリジャートン家」や「ストレンジャー・シングス 未知の世界」など、人気を考慮すると高い広告料を得られるであろう番組も豊富にある。

「連続殺人犯がテーマであるドキュメンタリーの第7回の視聴者をターゲットにして、すべてをアドレサブルにできるのだろうか? あるいは、支出対象であるトップランクの番組でもっとHulu路線のアプローチを採るのか?」と、あるメディアエージェンシー幹部は問いかけた。幹部らは、NetflixがHulu路線に傾くと確信している。

[原文:The Rundown: Five (new) questions to ask about Netflix’s ad-supported plans

Michael Bürgi(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)

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