広告事業における Google の「戦略的優先事項」とは?:Google Marketing Liveまとめ

DIGIDAY

5月25日、広告最大手のGoogleが最新商品と開発の方向性を発表する恒例のGoogleマーケティングライブ(Google Marketing Live:以下、GML)が開催された。今年のGMLは、議員や司法関係者など外部からの介入圧力の兆しがみられるなかでおこなわれた。

リテールメディア分野では、YouTubeショート(YouTube Shorts)の広告を拡大する方針が正式に発表されたが、TikTokに対抗した動きでもあり、この分野の競争激化が予想される。また、Googleにとっては逆風も吹いている。広告大手の事業分割を狙う米超党派議員が5月第3週、「デジタル広告の競争と透明性に関する法案(Competition and Transparency in Digital Advertising Act)」を上院に提出したのだ。

GML2022まとめ

Googleはショッピング広告の新フォーマット導入を計画中だが、GMLでは小売業者向けに、AR(拡張現実)を利用して商品の3D画像を生成できる機能や、ロイヤルティプログラムの情報をGoogle広告フォーマットに組み込む機能などが紹介された。

また、パフォーマンス最大化キャンペーン(Performance Max campaign)に関するプレゼンテーションでは、デスクトップPCとモバイル機器に配信される広告キャンペーン施策について、アプリ内およびモバイルサイト両方でのA/Bテスト強化の方針が示された。

一方、Googleは広告効果計測とアトリビューションのサービス向上を目指し、「インサイトページ(Insights page)」でマーケター向けの情報を提供する。キャンペーン最適化を支援するツールとして現在ベータテスト中のこのページにより、キャンペーンで数値目標が達成できない理由の特定につながるデータを入手できるという触れ込みだ。

各種サービスの新たな機能とは

Googleで広告事業部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるジェリー・ディシュラー氏が米DIGIDAYの取材に応えて語ったところによると、GMLで発表された計画には、広告主がユーザーのニーズをとらえて商品・サービスを訴求できるよう支援する自動化ツールの開発も含まれるという。

またディシュラー氏は、Googleが今後、広告運用における「アカウントごと、キャンペーンごとのインサイト」を提供できる予測ツールの開発を進める意向を示した。

ディシュラー氏は次のように述べている。「広告主が広告の透明性向上を求めているのは明らかだ。我々はそのニーズに応えるべく、機械学習を応用したソリューションなどを開発している。また、現行サービスのローカルキャンペーン(Local Campaigns)スマート ショッピング キャンペーン(Smart Shopping campaigns)は、2022年中にパフォーマンスを最大化させるサービスへとアップグレードする予定だ」。

YouTubeショートで動画広告を展開

GMLではすでに利用可能な広告主向けサービスもあらためて紹介されており、たとえばビデオアクションキャンペーン(Video action campaigns)とアプリキャンペーン(App campaigns)により、YouTubeショートにキャンペーン動画を自動配信する機能がそれに当たる。2022年後半にはYouTubeショート上のキャンペーン動画コンテンツに商品フィードが表示されるようになり、コンバージョン率の改善が期待できるという。

YouTubeショートは、Googleが新たな広告フォーマットの試験運用の一環として2020年中ごろに導入した短尺動画共有プラットフォームだ。TikTokの競合とみなされ、2021年の実績を受けてGoogleにとってソーシャルメディア分野最大の成功と評価されている。

ディシュラー氏によれば、YouTubeショートの再生回数は前年比で4倍に増加し、すでに1日平均300億回以上に達したという。視聴回数の大幅な伸びは、動画フォーマットとして長尺・短尺両方の需要があることを示している。

「当社では現在、アプリ内のインストリーム動画広告と、YouTubeショート上のビデオアクションキャンペーンの試験運用をゆっくりとしたペースでおこなっている。いまのところ順調に進んでいるので、規模を拡大することにした」とディシュラー氏は語る。「ただし、YouTubeショートの縦型動画を通じてエンゲージメントを促すのに適した新たな広告フォーマットが必要かどうかは、まだ判断がつかない。現時点では、既存のフォーマットでも一定の成果が上がっている」。

検索とショッピング体験の統合を目指すGoogle

今年2月、米DIGIDAYに掲載されたレポートによれば、2022年の全世界オンライン広告市場のシェアは、Google、Facebookを所有するメタ(Meta)、Amazonの3社合計で50%以上を占める見通しだ。そのなかで、マーケターによるリテールメディアへの広告費投入増の恩恵を受けているのがAmazonだ。

米DIGIDAYによる2019年の調査レポートでは、Amazonの広告事業はGoogleを踏み台にして伸びていると指摘された。企業がGoogleの検索連動型広告用に確保しておいた予算をAmazon広告に回したとみられるケースが多かったからだ

一方、GoogleはAmazon広告の成長について、一方の利益が他方の損失になる「ゼロサム・ゲーム」ではないと主張している。Googleの検索エンジンが消費者の購買意図を多く創出しており、それが誘因となって企業がeコマースプラットフォームに広告予算をつぎこむのだという。

「新型コロナの感染拡大で我々が教えられたのは、ショッピングといえばeコマース、ということだ」とディシュラー氏は語った。「オンラインで注文した商品を自宅に配達してもらう場合だけではない。店舗へ足を運ぶ場合も、あらかじめオンラインで検索し下調べをした商品を実店舗で購入することがある。Googleはそうした消費者行動をすべて支援できる」。

米連邦議会の脅威

オンライン広告最大手のGoogleは、事業活動をつねに監視され精査される立場にあり、最近はオーストラリア、欧州経済領域、そして本拠地である米国からの圧力を受けている。

Googleは2022年2月、テキサス州司法長官などが同社を反トラスト法違反の疑いで提訴した訴訟について、裁判所に訴えの棄却を申し立てた。この件とは別に、同社の検索事業に対しても反トラスト法訴訟が提起されている。さらに5月17日、米超党派上院議員がデジタル広告の競争と透明性に関する法案(以下、デジタル広告法案)を上院に提出したため、Googleにとっては法的問題がますます重くのしかかる。

今回の法案は、Google、Facebook、Amazonなど広告大手によるオンライン広告市場の独占状態を、各社の事業運営における「利益相反の排除により」阻止することを狙いとしている。折しもGoogleは、オンライン広告業界にとって不可欠なツールであったサードパーティCookieのサポート廃止(2023年末)に向けて準備中だ。司法・立法の脅威が増してきたことで、Cookie関連の取り組みが遅れるのではないかと疑問に思う向きもあるだろう。

いずれにせよ、当事者側の一方的な、または一方的とみなされるような動きは、オンライン市場で活動する多くの企業を危険にさらしかねず、議会からの圧力がさらに強まる恐れがある。Googleアメリカズ・プラットフォーム部門バイスプレジデントのショーン・ダウニー氏は5月第3週、ルマ・パートナーズ(LUMA Partners)主催のデジタルメディア・サミット(Digital Media Summit)で講演した際、外圧への対応について質問を受けた。

ダウニー氏は明言を避けながらも、次のように答えた。「ユーザーのプライバシーと市場競争という両方の課題を解決しなければならない、というのが基本的前提だ。安全な環境を整え、消費者の選択権を尊重したうえで、しっかりとしたプライバシー基準を確立できるか? イエスかノーか。いずれにしても、当社としては、基本的前提にもとづいて意思決定を下す」。

これはつまり、ダウニー氏直属の広告商品チーム(サードパーティCookieサポート終了の時期を最終的に決定するGoogle Chromeチームとは別部隊)が、現状を打破する必要があることを意味する。

「我々は課題解決のため努力を続ける。どう対処すればうまくいくか? プライバシーを尊重しながら、それ以上の成果を上げるにはどうすべきか? と、自らに問いかける。新商品の市場投入前には法規制への準拠を確認し、皆にメリットをもたらす商品になるよう力を尽くす」。

GoogleはサードパーティCookieのサポート廃止の再延期について、会社としては正式に可能性を否定していないものの、2023年末という現行の廃止期限に向けて全速力で準備を進めていると、経営幹部は語っている。

[原文:The Rundown: Google’s Marketing Live announcements signal strategic priorities

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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