アウェアネス向上を重視した、ベビーリストの TikTok 戦略:「はるかに大きな費用を投資する」

DIGIDAY

オンライン上のベビーレジストリであるベビーリスト(Babylist)は、2022年の今年、TikTokの動画を活用したブランドアウェアネスの向上という大きな賭けに出ようとしている。マーケティング及びレベニュー担当バイスプレジデント、リー・アン・グラント氏によると、カリフォルニアを本拠とする同社では、2021年末にTikTok専任のエディターを雇うなど準備を進めているという。

このトレンドは今、広がりをみせている。TikTokの人気が高まるにつれ、Amazonやボランティアマッチングサイトのボランティアマッチ(VolunteerMatch)など、アプリ上での存在感向上を期待するブランド各社は、ソーシャルメディアとしてのTikTokを担当するマネージャーの雇用に関心を寄せている。

2011年創立のベビーリストは、2021年8月ごろにTikTokのブランドアカウントを開始し、現在までに41万6000人を超えるフォロワーを獲得している。同社の動画はコンスタントに1投稿あたり数千回の再生回数を記録していて、なかには爆発的に拡散するものもあり、わが子の出産を手伝う父の動画は800万回も再生された。

「ベビーリストの6つの最重要マーケティング目標のひとつは、成長を続けるTikTokをベースにしたものだ」とグラント氏はいう。「当社としては今よりもはるかに大きな費用を投資する予定だ」。

ブランドア認知のためのチャネル

2022年末までには、ベビーリストの広告チャネルの上位3つにTikTokが入ると見込まれている。グラント氏はさらに、2022年度には、ほかのどの広告チャネルよりもかなり多くの広告費をTikTokにつぎ込む計画だと付け加えた。

2022年にベビーリストがTikTokに費やす金額は、マーケティング費全体の7%をわずかに上回る予定で、前年の2%から上昇している、と同社の広報担当者は話しているが、具体的な金額については示されなかった。リサーチコンサルティング会社カンター(Kantar)によると、ベビーリストが2021年にメディアに費やした費用は29万1000ドル(約3640万円)で、2020年の14万5000ドル(約1820万円)を上回っている。これらの数字には、カンターがトラッキングしていないソーシャルメディアへの出費は含まれていない。広告トラッキングを行うパスマティックス(Pathmatics)の報告によれば、ベビーリストが2021年にFacebookとインスタグラムでの広告にかけた費用は510万ドル(約6億4000万円)で、2020年の480万ドル(約6億円)からわずかながら増加している。

ベビーリストのTikTok戦略にはふたつの側面があり、ペイドとオーガニックの両方のエフォートを行っている。グラント氏によると、同社の動画は、ユーザーが作成したコンテンツ、クリエイターの手によるもの、および自社内で作成された動画によって構成されている。

動画のターゲットとなるオーディエンスは子どもを迎える予定の親たちで、妊娠中の人から養子縁組、里親、代理出産を予定している人まで、その形は問わない。こうした人々に狙いを定めてユーザー基盤を拡大するため、ベビーリストでは機械学習とTikTokのターゲティング機能を使用している、とグラント氏はいう。

ベビーリストのTikTokを使ったエフォートは、ダイレクトセールスの推進だけにとどまらない。グラント氏によれば、担当チームはこのプラットフォームを、ブランドアウェアネスと顧客獲得およびセールスをもたらすものと捉えているそうだ。この取り組みの成功度は、ベビーレジストリに何人登録したかで測ることができる、と同氏は付け加えた。TikTokをパフォーマンスマーケティングのチャネルではなく、ブランドアウェアネスのためのチャネルととらえてアプローチするブランドがどれほどあるのかは、よく取り上げられるテーマだ。事実、DIGIDAYの過去の記事をみると、多くの広告主は、TikTokをFacebookやインスタグラムと同じようなブランディングやパフォーマンスのチャネルとは見なしていない。

「私たちは、より多くの人にベビーリストのことを知ってもらい、登録してもらうことを期待している」とグラント氏。「具体的な数字は言えないが、これが効果を上げていて、かつ結果に結びついているという感触は確かに得ている」と話している。

TikTok依存を回避した戦略

TikTokを活用しているのはベビーリストだけではない。化粧品会社のロレアル(L’Oréal)ドクター・スクワッチ(Dr. Squatch)、旅行予約サイトのホットワイヤー(Hotwire)などのブランドは、拡大するTikTokオーディエンスに目をとめてもらおうと、費用とコンテンツ提供の両面を強化している。実際のところ、市場調査会社イーマーケター(eMarketer)の報告では、2022年度、TikTokの全世界における広告収入は3倍に増加し、116億4000万ドル(約1兆4600億円)にのぼるという。

TikTokはパンデミックによるロックダウンのあいだに人気を獲得し、その後の2年間に、メディア消費における主要プラットフォームへと成長を続けた。そしてさらに多くのマーケティング費を食い尽くそうとさえしている。2022年初頭のDIGIDAYの記事にあったように、中国のテクノロジー企業バイトダンス(ByteDance)が運営するこのTikTokというプラットフォームをめぐっては、試しに利用してみようというパフォーマンス広告主が増えているだけではなく、より大きな広告主もさらに多大な費用をつぎ込もうとしているのである。

セールスやコンバージョンをTikTokに依存するのは避けたという点で、おそらくベビーリストは正しい方向性を選んだといえるかもしれない、とインフルエンサーマーケティングエージェンシーのQYOUメディア(QYOU media)のプレジデント、グレン・ギンズバーグ氏は話している。

「ソーシャルプラットフォーム上のネイティブ広告やインフルエンサーのコンテンツが、ビュースルー、エンゲージメント、クリックスルーの3点で、従来型の広告ユニットを一貫して上回っている、というのがちょうどよい折衷形だ」とギンズバーグ氏はいう。「グロースマーケティングとコンテンツストラテジーはD2Cブランドのアウェアネスや顧客との関係性を新たなレベルに一気に押し上げてくれる可能性がある」。

全体的に見て、ベビーリストとしては動画視聴数を倍増させたいと考えており、TikTokへの広告費の投資とYouTubeのフットプリントの拡大を続けていく計画だと、グラント氏は語っている。2022年末までに、同社のTikTokのフォロワー数を100万人に乗せることを期待しているという。

[原文:‘Our plan is to spend a lot more’: Inside online baby registry Babylist’s TikTok strategy

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:長田真)

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