富士通と理化学研究所は5月17日、創薬プロセスにおける新領域の開拓と開発期間や費用の劇的な削減を目指し、スーパーコンピューター「富岳」を活用した次世代IT創薬技術の共同研究を開始したと発表した。
共同研究期間は、5月17日から2025年3月31日まで(2025年4月以降も継続予定)。
昨今、新型コロナウイルス感染症などの未知の病気に対するワクチンや新薬開発では、薬効が高く副作用が少ない中分子薬や高分子薬の開発も強化されている。中・高分子薬の創薬プロセスでは、IT活用による効率化が求められており、スーパーコンピューター富岳をはじめ、両者の創薬分野における最先端のシミュレーションおよび、コンピューティング・AI技術を融合させることで、ターゲットとするタンパク質と薬剤候補分子の未知の複合体構造の予測を可能とし、創薬プロセスにおける新領域の開拓と開発期間や費用の劇的な削減を目指した共同研究を開始することになった。
具体的には、複雑なデータから定量的特徴を教師データなしで正確に獲得する富士通のAI技術 「DeepTwin」と、理化学研究所のAI創薬シミュレーション技術を適用した分子動力学シミュレーションなどを組み合わせたシミュレーション融合型AIを作成。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術と富岳を活用し、効果的に動作させているという。
これにより、分子動力学シミュレーションの高精度化と高速化を図り、ターゲットとするタンパク質構造の変化を広範囲に予測する革新的な技術の確立を狙う。
また、同研究で開発した次世代IT創薬技術により、中分子薬や高分子薬を視野に入れた新たなIT創薬プロセスを2026年度末までに構築。広く製薬企業などに普及させることで、新薬開発に必要な期間や費用を劇的に削減させ、創薬分野におけるDXの実現を目指す。
富士通では、同研究を通じてAIおよび、HPCを組み合わせた技術開発を行うことで、医療分野における社会問題の解決に貢献。さらに、高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を誰もが容易に利用できるサービス群「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」の創薬分野でのユースケース創出に取り組んでいくという。