結局のところ新型コロナワクチン追加接種はどれくらい効果があったのか?4回目の接種を受ける必要はある?

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厚生労働省が2022年4月27日に、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種から5カ月たった人に4回目の接種を行う方針を示しました。そもそも、2回で「完全接種」だったはずのワクチンを3回接種した効果はどうだったのかや、4回目の接種の必要性、そして新型コロナウイルス感染症にかかっことがある人がさらにワクチン接種を受けたことで獲得する「ハイブリッド免疫」について、疫学の専門家が検証しています。

Do you need a second booster shot? An epidemiologist scoured the latest research and has some answers
https://theconversation.com/do-you-need-a-second-booster-shot-an-epidemiologist-scoured-the-latest-research-and-has-some-answers-180488

◆追加接種(3回目の接種)の限界
テキサス大学ヘルスサイエンスセンター公衆衛生学部の疫学者であるケイトリン・ジェテリーナ氏によると、3回目のワクチン接種、つまり1回目の追加接種から15週間後の追跡データをまとめたイギリス健康安全保障庁の(PDFファイル)レポートからは、「感染に対するワクチンの有効性は3回目の接種後に大幅に低下する一方で、入院リスクに対する有効性は感染に対する有効性よりはるかに優れている」ということがうかがえるとのこと。しかし、入院に対する予防効果でさえ、時間の経過とともにわずかずつ減少しているそうです。

モデルナのワクチンの追加接種に関する調査でも、ワクチンの追加接種から6カ月で中和抗体のレベルが低下していることが分かりました。これは、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレイクスルー感染が65歳の人で特に多かったことの裏付けとなります。

また、アメリカ疾病予防管理センターの調査では、追加接種から5カ月後に救急医療や緊急医療機関にかかる予防効果が著しく低下している一方で、入院に対する予防効果はわずかに低下しただけでほぼ維持されていることが分かっています。

こうした研究はあらゆる年齢層を対象としたものですが、高齢者を対象とした研究では若者より免疫反応が鈍いことが示されました。この研究の対象者である76~96歳の人に3回目の接種を実施したところ、中和抗体のレベルが大きく改善したものの、接種から3~5カ月が経過すると、特にオミクロン株に対する抗体のレベルは大幅に低下しました。


◆2回目の追加接種(4回目の接種)の必要性
イスラエルでは、世界各国に先駆けて高齢者や免疫が弱い人などを対象とした4回目接種が実施されており、その効果に関する研究結果もこれまでに4件報告されています。

そのうちの1つである、ファイザーとBioNTechのワクチンに関する研究では、イスラエル在住の60歳以上の人100万人以上を対象とした4回目の接種、つまり2回目の追加接種を行った後の感染や重症化の傾向について評価しました。その結果、4回目接種の直後の感染率は3回目の接種後に比べて半分まで軽減されていたことが分かりました。しかし、この予防効果は6週間後には急速に低下してしまったとのこと。他方で、重症化率は3回目に比べて4分の1程度まで減少し、予防効果も接種から6週間は低下しませんでした。なお、感染率を調べたグループと重症化率を調べたグループのどちらも、入院者数は非常に少なかったとのことです。

まだ査読を受けていませんが、60~100歳のイスラエル人56万3465人を対象とした大規模な研究も発表されています。この研究によると、イスラエルの医療システムに登録されている患者のうち58%が4回目接種を受け、そのうち新型コロナウイルス感染症で死亡したのは92人でした。一方、3回しか接種を受けていない人では232人でした。この結果から、2回目の追加接種は1回のみの追加接種に比べて、死亡率を78%減少させる効果があることが示されています。

ジェテリーナ氏が最も重要視しているのは、中高年の人ではなく若い医療従事者への4回目接種の有効性を調べた研究です。この研究では、3回目の接種から5カ月後には抗体のレベルが有意に低下していることが確認されました。この結果からジェテリーナ氏は、「残念ながら、若手医療従事者のグループでは、4回目の接種の有効性は3回目と変わりませんでした。つまり、若くて健康な人に同じ追加接種を2回行っても、意味がない可能性があります」と指摘しています。


◆新型コロナウイルス感染症にかかったことがある人への追加接種
ジェテリーナ氏によると、新型コロナウイルス感染症にかかったことで得られた免疫と、ワクチン接種で得られた免疫の両方を持っていることを「ハイブリッド免疫」というとのこと。

35以上の研究により、ハイブリッド免疫は幅広い予防効果を提供することが示されています。これは、ワクチンによる免疫は新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を狙い撃ちにする一方で、感染からの免疫はウイルス全体を標的としており、それぞれの免疫が補完的な役割を果たしているからだと考えられています。

ハイブリッド免疫の効果について、ジェテリーナ氏は「これまでワクチン接種を受けている人がオミクロン株に感染してしまったのが分かった場合、『2回目の追加接種はスキップする』というのはあながち不合理ではありません。さすがに、ハイブリッド免疫を獲得するためにわざとウイルスに感染するというのは本末転倒ですが、ハイブリッド免疫がウイルスから身を守る上で有効なのは明らかです」とコメントしています。

◆まとめ
ジェテリーナ氏は、上記の知見のまとめとして「4回目の接種、つまり2回目の追加接種が60歳以上の人を含めた新型コロナウイルス感染症に弱い人を確かに保護するという強いエビデンスがあります。従って、そういう人たちにとっては、2回目の追加接種を受けるのが妥当でしょう。ただ、それよりもはるかに重要なのは、多くの人々が1回目、2回目、3回目の接種を受けることです」と述べて、リスクが高い人の2回目の追加接種を推奨しつつ、それ以外の人々はまず1~3回目の接種を受けることを徹底すべきとの見方を示しました。

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