追跡トラッカーを付けてノートPCをリサイクルしたところ正しくリサイクルされず転売されたり盗まれたりしている実態が明らかに

GIGAZINE
2023年06月02日 16時00分
メモ



PCなどの個人で処分するのが難しいデジタル機器などは、リサイクル業者に引き取ってもらうというのが一般的です。リサイクル業者は古いPCをどのように処分しているのかを経済紙のFinancial Timesが調査したところ、リサイクルされないまま売られたり、盗まれたりするケースがあることが発覚しています。

Throwaway Britain: what happens to our old tech? | Financial Times
https://www.ft.com/content/5be1f17f-0242-4ee3-89fa-0c3f0aba01fa


リサイクル支援団体であるMaterial Focusの調べによると、イギリスでは毎年約3万トンもの電子廃棄物が違法に国外に搬出されているとのこと。この電子廃棄物の多くは発展途上国に輸送されている模様。また、これとは別に毎年8万7000トンもの電子廃棄物がイギリス国内の違法な廃棄物処理場に運ばれているとも推定されています。

しかし、どの小売業者やリサイクル業者も、正しくリサイクル処理を行っていると主張しています。そこで、リサイクル業者に回収される不要な電子廃棄物は一体どのように非正規ルートへ流れていくのかを、Financial Timesが調査しました。

調査方法は簡単で、古い壊れたノートPCを用意し、これに追跡用のトラッカーを取り付け、ストレージ内のデータをすべて削除したうえで「新品購入時に顧客から古いデバイスを引き取ることを法的に義務付けられたイギリスの小売業者(6社)」に回収してもらうというものです。


Financial Timesは14台の古いノートPCを用意し、小売業者の正規サービスでリサイクルに出しました。回収した小売業者はすべて正しくリサイクルすることを約束したそうですが、リサイクルされたのは14台中10台のみだったそうです。具体的には、Amazonで回収してもらった3台、Appleに回収してもらった3台、Dellで回収してもらった2台、Currysで回収してもらった1台、John Lewisで回収してもらった1台という合計10台のノートPCは、リサイクル業者に回収されたことが追跡トラッカーで確認できた模様。

John Lewisには2台のノートPCを回収してもらったそうですが、1台は正しくリサイクルされたものの、もう1台はイギリス・バークシャーにある大手リサイクル業者・WasteCareの工場に運び込まれてから1カ月後に、315km離れたノーフォーク州グレート・ヤーマス・ビーチに存在することが位置情報により明らかになりました。この件についてFinancial TimesがJohn Lewisに問い合わせたところ、同社からは「従業員が当該ノートPCを盗み、海辺の町への旅行に持って行った」という返答が得られたそうです。なお、WasteCareは「24時間365日稼働する監視カメラが車両に取り付けられているため、事務所から廃棄物が盗まれることはまれです」とも説明しています。

また、イギリスのスーパーマーケットチェーンであるArgosに回収してもらった2台のPCは、どちらもインターネットオークションサイトのeBayに出品されたことが確認されています。


電子機器のリサイクル工場・Sweeep Kuusakoskiでコマーシャル・マネージャーを務めるジャスティン・グリーンアウェイ氏は、「電子廃棄物が盗まれた場合、海外に違法に輸出されるケースが多いです」と語り、廃棄物が集められるリサイクルセンターが犯罪者に定期的に狙われていると明かしました。

また、非営利の電化製品リサイクル団体であるMaterial Focusが発表したレポートによると、イギリスでは毎年約11万4000トンもの電子機器がリサイクルの過程で盗難されているそうです。


Financial Timesが業者に回収させたPCのうち、違法に国外に輸出されたものはなかったものの、イギリスの環境庁は「古い電子機器が違法輸出用の船舶に積み込まれる可能性はある」と回答しています。具体的には、「チャリティーショップが売れ残った衣類と一緒に寄付された電子機器を繊維輸出業者にわたすケース」や「小規模な産業ユニットのオペレーターが西アフリカ諸国に廃棄物を送るケース」があると、環境庁は説明したそうです。

また、故障や破損といった合理的な理由から小売業者に返品された電子機器が、小売業者または小売業者から電子機器を購入する企業によって、「大量に競売にかけられるケース」も存在すると環境庁は指摘しています。

なお、イギリス環境庁にはこのような不正な流れを阻止する能力がないそうです。実際、環境庁による「違法な電子廃棄物の輸出に関わりがあると疑われる港への調査」の件数は、2016年(172件)以降ほぼ毎年減少しており、2022年にはわずか33件しか行われていません。

環境庁の担当者は不法輸出を取り締まるチームについて「問題の規模を鑑みても、不法輸出を取り締まるチームは比較的小さなチームです」と説明しました。また、「電子廃棄物の違法輸出を行う犯罪グループは、環境庁が定期的な検査を行っていない港をターゲットに活動を行っていると思われます」とも述べています。


アメリカのBasel Action Networkも2017年に「イギリスのリサイクルセンターに故障したPC・モニター・プリンター39台を預けてその位置情報を追跡する」という調査を実施しており、この調査により預けた端末のうち5台が発展途上国に輸出されたことが判明しました。Basel Action Networkはイギリス以外にもヨーロッパの10カ国で同様の調査を行っていますが、「壊れた電子機器を輸出する」という違法行為を行った割合は、イギリスが最も高かったそうです。

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