米西部ピンチ。干ばつによるパウエル湖の水位低下で厳しい決断を迫られる連邦政府

GIZMODO

求む、雨天の子。

乾燥したまま春本番を迎えたアメリカ西部。連邦政府当局は、危機的状況に陥っている水不足の対応に追われています。数百万人の生活を守るために、アメリカ最大級の貯水湖の放流をどう調整するのか。連邦政府は厳しい決断を迫られているようです。

干ばつと雪解け水の不足で貯水湖が記録的な低水位に

アメリカで2番目に大きな貯水湖であるパウエル湖は、過去1年間で水位が黙示録的なレベルまで低下しました。4月18日現在の水面標高は1,073メートルで過去最低に。春の雪解けで水位が上昇する可能性も残されてはいるものの、当局によればすでに雪は解けてしまったらしく期待薄。さらにここ1,200年で最悪の干ばつが追い打ちをかけています。

内務省のTanya Trujillo氏は、パウエル湖から取水している7州(アリゾナ、コロラド、ネブラスカ、ネバダ、ニューメキシコ、ワイオミング)に宛てた書簡の中で、「現時点で最も信頼できる科学は、気候変動が今後も流域に悪影響を及ぼし続けることを示しています」と記していたそう。

これは水の供給や気候変動に限った問題ではありません。パウエル湖から西部各州の約580万世帯と企業に電力を供給しているグレンキャニオンダムにとってもバッドニュースです。パウエル湖の水位が1,063メートルを切ると、同ダムは電力供給が困難になり、周辺都市の住民に影響が及んでしまいます。もうあとちょっとしか余裕がないため、連邦政府はダムの運用を維持するために早急な対策が必要と判断したようです。

放流を止める以外に方法がない?

連邦政府の対策のひとつが、約100万世帯分に当たる59万2000立方メートルの供給を控えることだそう。政府はコロラド川下流に位置する西部の州に対し、もうひとつの重要な貯水湖であるミード湖への放流を停止するこの計画へのフィードバックを4月22日までに送るよう要請しています。「止めないで」しかフィードバックのしようがないのでは…。

パウエル湖は、ミード湖を経由してアリゾナ、ネバダ、そして隣国メキシコの一部地域へ、フーバーダムからは発電のためにアリゾナ、カリフォルニア、ネバダの一部地域に合わせて毎年10.15立方キロメートル(オリンピックサイズのプール406万杯分)の水を放流しています。ミード湖の水面標高は4月18日現在で322.4メートルと、過去数カ月ずっと記録的な低さを更新していて、パウエル湖からの放流がなければ、もうずっと低いままになってしまうかもしれないとのこと。

フーバーダムは282~290メートルの水位を保てれば発電可能とのこと。過去にこんなことがなかったため、放流を止めることで各州にどんな影響が出るかはわからないまま対応しなければならないくらい事態は差し迫っているようです。

ユタ州立大学コロラド川研究センター長のジャック・シュミット氏はAP通信の取材にこう答えています。

私たちは水力発電量の確保を含め、人々の健康と安全を優先させる中で危機管理を行っています。もう水位を回復させるどころの話ではなくなってしまっているのかもしれません。

たった1.1度の気温上昇とラニーニャの組み合わせでこんなことなってしまうのに、1.5度や2度、さらにそれを超えて気温が上昇したらいったいどんなことが起こるのでしょうか…。

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