怪しい伝説「 CTV 」編:成熟しながらも謎に包まれた存在に迫る

DIGIDAY

コネクテッドTV(以下、CTV)広告は、ここ数年で成熟を遂げてきた一方、この新しいメディアはまだまだ謎めいた存在であり、否定されるべき迷信を生みだしている。

CTV広告にまつわる主な迷信・伝説をいくつかご紹介しよう。

伝説1:CTVにはCookieの問題がない

確かに技術的な意味では、ウェブの実質的なID技術であるCookieが機能しないため、CTVにCookieの問題は存在しない。しかし、CTVにもIPアドレスという形をとったIDの問題はある。

IPアドレスは、いわばCTV版のCookieだ。これはIDの基盤を提供しているというだけでなく、プライバシーの問題に向けられる目が厳しくなるなかで、その基盤が脆弱になっている点からも当てはまる。ID技術を提供するLiveRamp(ライブランプ)のCSOジェイ・プラサド氏は、「独立した識別子としてのIPアドレスは、Cookieと同じく終わりを迎えるだろう」と述べている。

カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のようなプライバシー保護法が、IPアドレスを個人情報に分類しているだけではない。AppleとGoogleも、人々のデバイスに関連付けられたIPアドレスに企業がアクセスする能力を制限し、デバイスフィンガープリンティングという物議をかもしている手法で人々を特定するのを防ごうとしている。「IPアドレスを関連付け、それを使って誰かを理解しようと試みれば、それはフィンガープリンティングに該当する」とプラサド氏はいう。

サードパーティCookieがしぶとく生き残っていることを考えると、IPアドレスもそうなる可能性はある。しかし、IPアドレスをめぐる規制が厳しくなっていることから、企業はできるだけ早くIPアドレスから手を引き、コンテクスチュアルターゲティングやファーストパーティデータを用いたCTV広告戦略の導入に取り組むのが賢明だろう。

伝説2:プレミアムなCTV広告のインベントリはプログラマティックで販売されていない

プログラマティックは残り物のインベントリを扱っているイメージがあり、いわゆる「TV品質」の広告枠とは対極にあるように思える。しかし、コンピューターベースの買い付け方法であるにもかかわらず、プログラマティックはそれほど単純に割り切れるものではない。

TVネットワークやストリーミング専門のセラー、すなわちAmazonやRoku(ロク)、ストリーミング型の有料テレビサービスfuboTV(フーボTV)などは、もっとも質の高いCTVインベントリーをプログラマティックで購入できるようにしている。通常は、プログラマティックギャランティード(PG)およびPMP取引の形をとり、それによってセラーはある程度の希少価値を維持しつつ、プログラマティックのオープンオークションで最低入札者に自らを開放しないようにできる。「直接取引のプログラマティックは、CTVの側からみると過半数を占めている」と、fuboTVの広告販売担当シニアバイスプレジデント、ダイアナ・ホロウィッツ氏は述べている。

しかし、これら大手の広告セラーは、PMPでバイヤーが手を出さなかったプレミアムなCTVインベントリーを、プログラマティックのオープンオークションに開放することもある。

「TVネットワークが(従来の直接取引)またはPG限定と主張するプレミアムインベントリーは多いが、我々のプログラマティック広告購入は、その逆の事実を告げている。PMPまたはオープンエクスチェンジで手に入るプレミアムインベントリーはそれなりにある」と、あるエージェンシーの幹部は述べている。

伝説3:ビューアビリティの問題はCTVには存在しない

広告のビューアビリティ、すなわち広告が人に気づいてもらえる状態で長く画面に表示されるかという問題は、広告が流れる際に、通常はSOVの100%、テレビ画面の100%が広告に割かれるCTVには当てはまらないように思える。それでも、広告が流れているのに閲覧できないという状況は起こりうるのだ。

広告の検証を手がける企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)の2月の発表によると、上位のCTV環境(デバイスとアプリ両方を含む)の4つにひとつは、「テレビの電源を切った後も番組コンテンツを再生し続け、そのあいだの広告インプレッションも記録されていた」という。

テレビ広告のターゲティングを手がけるサイマルメディア(Simulmedia)のCEO、デイヴ・モーガン氏は、テレビを消した後もCTVの番組や広告が流れ続ける問題は、開いているウェブページが自動的に更新され、新しい広告インプレッションを提供しているのに、そのページを開いているタブがコンピューター画面の前面に表示されていない問題に似ているとして、次のように述べている。

「(CTVには)より説明可能な世界が存在するという考えがあるが、問題はまだ解決されていない。キャンペーンを実施しても、画面がオフになっているときに配信されたものが25%を占めるということがありうる。市場全体のすべての(CTV)広告がそうだというわけではないが、そのようなことは実際に起こっている」。

伝説4:CTVにおける透明性の問題は技術的なものだ

長らく広告主やそのエージェンシーは、従来のテレビに比べて、CTVには相対的に透明性が欠如していることに不満を覚えてきた。従来のテレビでは、広告主は広告がどの番組で流れたのかを正確に知ることができる。

一方、CTVでは通常、広告が流れたのがどのストリーミングアプリか、または無料の広告付きストリーミングTVサービスのどのチャンネルであるかがわかるにすぎず、広告が流れた番組のカテゴリまでわかればいいほうだ。しかしこの問題は、CTVの広告インフラがいまだ発展途上であるせいではない。

「確かに問題だが、そもそも問題のままであってはならないことだ」と、前出とは別のあるエージェンシー幹部はいう。「これは技術的な制約ではない。提供しようと思えばできるのだから、これはパートナーへの提供面での制約だ。我々としては、入札ストリームで提供される情報についての標準的な取り組みとして、そうしたものが知らされてほしい」。

伝説5:CTVとOTTは同じものである

これは迷信や伝説というより誤用かもしれないが、CTVとOTTがいまだ混同して用いられているため、このリストに載せた。実際には、両者は同じではない。CTVが、インターネットに接続されたテレビ、すなわち番組や映画、動画をストリーミングするタイプのデバイスを指すのに対し、OTTは、番組や映画、動画をストリーミングできるようにする手段を指す。

こうした定義の違い以前に、OTTはもはや時代遅れの用語だ。OTTは、2000年代初めにTVネットワークが、セットトップボックスや衛星放送受信アンテナを使わずに番組を視聴可能にすることを指す言葉として生まれた(セットトップボックスを飛び越えるのでオーバー・ザ・トップ:over-the-top=OTTという)。

あれからもう20年経った。この略語はもう引退させ、代わりに誰もが理解でき、すでに使っている用語に置き換えてもいいだろう。そう、「ストリーミング」という用語だ。

[原文:Myth buster: Connected TV advertising’s major misperceptions

Tim Peterson(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)

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