eスポーツ 団体は、なぜ TikTok での成長を最重要視するか? : 要点まとめ

DIGIDAY

TikTokにおけるゲーム人口の成長が著しい。そしてeスポーツ団体はこぞってその恩恵に預かろうと動きはじめている。ソーシャルオーディエンスの拡大をめざして、TikTok向けの動画制作に予算と時間を投じるeスポーツチームが増えており、なかにはTikTokを最優先に位置づけるチームも出てきている。

TikTokを利用するゲーマーが増えている。調査会社のニューズー(Newzoo)とTikTok for Businessが共同でまとめた「2021年版世界のモバイルゲーム人口に関する報告書(2021 Global Mobile Gamers Whitepaper)」によると、TikTokを利用するモバイルゲーマーの90%がTikTokのゲーミングコンテンツを視聴しており、eスポーツに関心があるという回答も33%にのぼった。同報告書によると、TikTokのeスポーツコンテンツは特にアジアで人気が高く、どの地域市場でも1位もしくは2位にランクインしている。

eスポーツ団体の幹部たちは、TikTokの世界とまったくの無縁ではない。にもかかわらず、もっとも著名なチームでさえ、比較的最近になるまでTikTokというプラットフォームに本気で取り組んではこなかった。

TSMが2019年にTikTokアカウントを開設した当時、TikTokにアカウントを持つ大手のeスポーツ団体といえば、クラウドナイン(Cloud9)とチームリキッド(Team Liquid)くらいのものだった。TSMが初めてTikTokに動画を投稿したのは2019年12月25日のことだが、その翌年、2020年7月には、TikTokのフォロワー数を100万人の大台に乗せた最初のeスポーツ団体となっていた。

「2020年の7月23日段階では、フォロワー数は32万1000人だった。だが、ある動画の視聴回数が1450万回におよび、フォロワーの増加に拍車をかけた」。そう語るのは、TSMのソーシャル活動をグローバルに統括するダンカン・コックス氏だ。「その週の終わりには110万人に達していた」。

eスポーツ団体がTikTokに対して取るアプローチはまさに百社百様だ。カスタムコンテンツを多用する団体がある一方で、ほかのプラットフォームのコンテンツを再加工して、短編動画を試験的に運用する団体もある。TikTokを活用してオーディエンスをほかのソーシャルチャネルに誘導したい団体もあれば、TikTokで直接エンゲージメントを獲得することに注力する団体もある。米DIGIDAYは有力な5つのeスポーツ団体にインタビュー取材し、TikTokに力を入れる理由と、その活用方法について詳しく聞いた。

キーポイント

  • ブランドはTikTokを溺愛している。ところが、ほとんどのeスポーツ団体はTikTokに備わるブランドパートナーシップの潜在力を十分に理解していない。韓国の強豪チームとして名を馳せるT1は、有力企業との広範なブランドパートナーシップを自負するが、これまでのところ、T1のTikTokに登場したブランドはひとつもない。ただし、T1のソーシャルメディアコーディネーターを務めるジャレッサ・モンタキュー氏によると、現在、TikTok向けにT1のブランデッドコンテンツを制作中だという。また、フェイズクラン(FaZe Clan)のソーシャル責任者を務めるサバスチャン・ダイアモンド氏も、「我々との取引の有無にかかわらず、どのブランドも話をすれば必ずTikTokについて聞いてくる」と述べている。「我々クリエイターがTikTokの価値を理解しているのと同じように、世の中のあらゆるブランドや企業もTikTokの価値を理解している」。
  • インフルエンサーやタレントを中心にTikTok動画を制作するeスポーツ団体もあれば、主にトレーラー映像やゲームの見せ場を使ってコンテンツを作るチームもある。どちらのタイプのコンテンツにも長短がある。たとえば、インフルエンサーのトーク映像は比較的エンゲージメントを獲得しやすいが、ゲームの見せ場のクリップ映像を活用すれば、コンテンツを量産したいソーシャルメディアの担当者は作業負担を軽減できる。ヨーロッパ屈指の名門eスポーツチーム、ファナティック(Fnatic)のマーケティング責任者を務めるジョシュア・ブリル氏はこう述べている。「いまのところ、私の方針は五分五分といったところだ。既存のオーディエンスの育成にも力を入れたいが、SNSでの拡散はファナティックの世界への新たな入り口ともなるだろう」。
  • TikTokでは、投稿の頻度が高いほど、拡散の機会が大きくなるアルゴリズムを採用しており、それはどのeスポーツ団体も同意するところだ。「毎日投稿することがベストだ。毎週、安定したペースで投稿することにより、既存のファンのエンゲージメントを維持する一方で、常とは異なるユーザー層にも機動的に対応している」と、T1のモンタキュー氏は話す。「一律のペースで投稿するほど、『おすすめ(For You)』ページに載りやすくなる。しかも、TikTokのコンテンツ表示は時系列ではない。つまり、2週間前に投稿した動画が、明日突然表示されることもある」。
  • 戦略の違いはあれ、米DIGIDAYが本稿執筆のために取材したすべてのeスポーツ団体は、TikTokを最優先、またはほかのソーシャルチャネルと同等に重要と位置づけていた。eスポーツ団体の100シーヴス(100 Thieves)で最高コンテンツ責任者を務めるジェン・シモンズ氏はこう述べている。「実質的に最優先のチャネルだ。これから本格的なシフトが始まるだろう。流れはショートフォームに向いている。もちろん、インスタグラムのようなプラットフォームにメリットがないとはいわない。YouTubeだって重要だし、なんだって重要だ。それでも、我々の成長戦略に関する限り、いま現在の最優先はTikTokだ」。

直接的なエンゲージメントの機会

TikTokでは、ほかの多くのソーシャルプラットフォームに比べて、eスポーツ団体やブランドがファンとより直接的に交流できる。個々のコメントを動画に展開できるため、チームやブランドのファンコミュニティでユーザーが投稿した動画にコメントすれば、ファンとの会話に参加できる。小規模なユーザーが投稿した動画でも、それが大きく拡散すれば、チームやブランドのアカウントにトラフィックを誘導することにもつながる。

「ある動画が拡散する。その動画にTSMがコメントしていれば、投稿者はまっさきに返信してくれるだろう」とコックス氏は話す。「たったひとつのコメントから、我々のリーチは一気に拡大しうるのだ」。

コンテンツハウスは絶対王者

2020年の初頭、フェイズクランが初めてTikTokに動画を投稿すると、フォロワー数は瞬く間に増加し、ダイアモンド氏の見立てでは、ものの数日で100万人の大台に乗せた。この成功はフェイズクランハウスの貢献によるところが大きい。一時期、同チームの人気クリエイターの多くが、このカリフォルニアの大邸宅に暮らしていた。フェイズクランはこのハウスで共同生活する優秀なクリエイターを主役として、数多くの動画を制作した。初期の作品は、ほぼすべて数百万回の視聴回数を達成している。

TikTokでは、クリエイターの共同体が非常に大きな役割を果たしている。eスポーツのTikTokも例外ではない。フェイズクランと同じ規模の成功をめざすなら、チーム独自のコンテンツハウスに投資するのも賢明な選択肢かもしれない。

「TikTokが爆発的にブレイクした当時、このコンテンツハウスで生活するクリエイターたちに、ほかでは真似のできない独特な方法で光を当てた」とダイアモンド氏は話す。「コンテンツハウスの内部にレンズを向けるだけのことだったが、我々のTikTokの活動に弾みがついたのは確かだ」。

eスポーツ団体にとって魅力的なユーザー属性

TikTokは、ゲームやeスポーツでもっとも望ましいとされるユーザー層に人気がある。具体的には10代の子どもたち、および18歳から24歳の青年層だ。eスポーツとブランドが事業提携する際の主要なターゲット層とも重なる。また、TikTokは一般的なゲームファンに人気がある。eスポーツ団体の多くは、この一般的なゲームファンを、競技ゲームのファンにシフトさせたいと考えている。前述のニューズーの報告書によると、米国のモバイルゲーマーの47%がTikTokを利用している。

eスポーツ団体にとって、ユーザー属性の観点から見たTikTokの最大の魅力は、女性からの支持だろう。ニューズーによると、TikTokのモバイルゲーマーの47%は女性だ。一方、eスポーツのオーディエンスは圧倒的に男性が多い。どのチームもこの男女の不均衡を解消したいと考えている。女性が気持ちよくゲームを楽しめる場所で女性ファンを増やすなら、TikTokでのプレゼンス拡大は理に適う。「いまや誰もがTikTokを利用している。Z世代に限らない」とシモンズ氏は指摘する。「TikTokは、年齢を問わず、誰もが集う場所となった。そして、ゲームはいまや世界共通の言語といっても過言ではない」。

[原文:The Rundown: Why some esports organizations are prioritizing growth on TikTok

Alexander Lee(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)

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