「『 プライスレス 』メッセージはマーケティング基盤に」:マスターカード 最高マーケティングコミュニケーション責任者 ラージャ・ラジャマナー氏

DIGIDAY

10月第5週、マスターカードの「プライスレス」キャンペーンが25周年を迎えた。このキャンペーンは長い年月をかけ、同社にとってマーケティングの基盤となった。DIGIDAYは、同社の最高マーケティングコミュニケーション責任者に取材し、同社が従来の広告形態よりも体験に焦点を当てていることについて語ってもらった。

10月第5週、マスターカード(Mastercard)の「プライスレス(Priceless)」キャンペーンが25周年を迎えた。

長年のあいだに、「プライスレス」はブランドの宣伝キャッチフレーズにとどまらず、同社におけるマーケティングの基盤となった。DIGIDAYは、同社の最高マーケティングコミュニケーション責任者であるラージャ・ラジャマナー氏に取材し、同社が従来の広告形態よりも体験に焦点を当てていることについて語ってもらった。同氏はまた、現在の経済の不確実性をどう管理していくか、メタバースについてどう考えているか、についても語った。

以下の文章では、読みやすさのために編集および要約が加えられている。

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――現在のマーケティングと広告の状況に合わせて、「プライスレス」をどのように進化させているか?

(「プライスレス」の精神は)広告にしか使われていなかったため、十分に活用されていなかった。しかし、それが本格的なひとつのマーケティング基盤になる可能性があることは分かっていた。広告主導から体験主導に移行したときに「プライスレス」が大きなマーケティングの指標となった。顧客が個人的に持つ、「プライスレス」な瞬間を捉えて、広告においてそれを祝うだけではなく、顧客と消費者のためのプライスレスな体験をキュレーションし、可能にしている。

――近年では、従来の広告よりもレストラン、香り、オーディオアルバムなどの制作に力を入れるようになっている。その理由は?

我々がおこなっているのは従来の広告ではない。実際、広告費のかなりの部分を体験型マーケティングに移した。これを実現したかった根本的な理由のひとつは、現在の消費者は平均して毎日5000件のコマーシャルメッセージを受け取っており、それを人間が処理するのは不可能だ、という点にある。現代における人間の注意力のスパンは金魚の注意力よりもわずかに短くなっている。つまり、人の注意が留まる範囲は非常に狭く、そんな状況で5000の広告が表示されている。状況は極めてとっ散らかっており、消費者は広告やブランドに対して深い不信感を抱えている。

おそらく広告は、私たちが消費者とつながる主要な方法にはならないだろう。コミュニケーションの必要性はなくならないが、コミュニケーションの方法は進化しなければならない。だからこそ、広告を活用しなければならない。我々は実際に広告を活用しており、かなりの金額を使っているが、実際には大部分を体験に移している。

――今、体験(広告)にいくら使っているか。また、従来型の広告にはどれくらいお金をかけているか?

残念ながら、さまざまな理由で数字を明らかにすることは禁じられているが、私が言えることは、私たちは大きな支出をしているものの、上位の支出者ほど大きくはない。

――現在、我々が抱えている経済的な不確実性を考慮しても、マスターカードは体験(広告)に今後もお金を使い続けると言えるか?

(景気が悪化しても)体験の必要性はなくならない。人々は実際に、物よりも体験を重視しており、私たちはその分野で展開している。私たちは物に集中していないし、これを買え、あれを買え、と訴えることもない。そういうもの(体験)をキュレーションしようとしている。

――メタバースのような新しい分野についてはどう考えているか?

重要なのは、メタバースがまだゆっくりと規模を拡大している最中だということだ。何がうまくいくのか、何がうまくいかないのか、メタバース経済がどのように機能するのか、などを観察してきた。私たちが発見したのは私たちの現実世界の体験を、かなり大きなスケールに拡大できるということだ。

たとえば、グラミー賞のスポンサーを17年ほど続けており、カード会員向けの体験をキュレーションしている。彼らは会場に来て、レッドカーペットを歩き、階段の前でセルフィーを撮影する、といったことを何度も体験している。グラミー賞のコンサートに来場して、舞台裏にも行っている。私たちはこのグラミー賞の経験をインド、ブラジル、オーストラリアなど世界中の何十万もの人々に広げた。彼らは、グラミー賞を、実際に会場で体験した人しか持てないような没入感を持って体験することができるようになった。完全に率直に言えば、メタバースは物理的な現実を代替するものではない。しかし、物理的な体験ができないケースにおいては、魅力的である。

――景気後退に備えてどのように計画をしているか。エージェンシーたちに不測の事態に備えた計画を求めているのか?

私たちはいつも支出に関してとても倹約してきた。私たちの計画は非常にダイナミックなので、市場の変動に応じてオンにしたりオフにしたりできる。

[原文:Marketing Briefing: Why Mastercard has transitioned 25-year-old ‘Priceless’ from ad tagline to focus on experiences

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)


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