CoD リーグ、数千人規模のリアルイベントを再開へ:「観客でいっぱいの会場を超える体験はない」

DIGIDAY

ライブでのeスポーツイベントが再開され、ブランド各社の注目が集まっている。コールオブデューティ・リーグ(Call of Duty League、以下CDL)の各チームは、LANプレイ(各プレイヤーのコンソールをLANケーブルでつないで対戦する方式)でファンをアリーナに呼び戻し、ライブイベントを新たなスポンサーの開拓や既存のパートナーとの新たな契約締結のために活用しようとしている。

COVID-19のパンデミックによる中断の後、CDLは暫定的ながら2021年7月にライブイベントを再開させ、テキサス州アーリントンで行われたCDL2021第5回メジャー大会は観客を入れて実施された。それ以降、対面イベントはほとんど行われていなかったが、CDLは2022年のオフラインイベントの開催に力を入れるという。ごく最近では3月に、CDL2022第1回メジャー大会がアーリントンのeスポーツスタジアムにおいて、CDLのチームの運営組織であるオプティックゲーミング(OpTic Gaming)の主催で行われた。

ライブイベントが契約締結を後押し

4月第1週の週末には、人気FPSゲーム、コールオブデューティ(以下、CoD)のプロチームのひとつであるミネソタ・ロッカー(Minnesota RØKKR)主催で、CDL第2回メジャー大会が開催された。12のCODプロチームがミネソタ州プライアー・レイクのミスティックレイク・カジノホテルに招集され、数日間にわたって、このFPSゲームでの熱い戦いを繰り広げた。LAN上でのプレーでは、各チームごとのプレイの遅延が削減され、トーナメントにおける競技の公正さの向上も期待できる。

「eスポーツ産業としては、オンライン上でも競技が続行できたことは幸運だった。とはいうものの、CoDというゲーム製品の最高の舞台はやはりライブイベント。ホスト側の技術的な理由からいえば、最も正当な競技の形というのはLAN上でのプレイだ」と、ロッカーとその親会社バージョン1(Version 1)のCEOであるブレット・ダイアモンド氏は語る。「いちファンという立場からすれば、観客で埋め尽くされた会場に身を置くという体験を超えるものはない」。

この業界に興味を寄せるブランド企業からみれば、ライブイベント会場で熱狂するファンの様子は、競技としてのゲーム、すなわちeスポーツ人気の高まりを証明する貴重な事実であり、ダイアモンド氏を含め各CDLチームの代表ごとに出した視聴率、デジタルイベントの参加者数、アクティベーション数といった数字よりも実感を伴うものである。カナダの通信会社ベルカナダ(Bell Canada)はCDLチームのトロント・ウルトラとパートナー契約を締結したが、その契約を後押しする大きな理由となったのは、ライブイベントの開催と対面ゲームイベント用アリーナの存在だったと、同チームの親会社オーバーアクティブ・メディア(Overactive Media)のCCOであるアリソン・ウォーカー氏はいう。

「ショッピングモールの小売店舗で行われるライブイベントであろうと、CDLのメジャー大会として行われる大規模ライブイベントであろうと、形こそ違ってもすべてファンを対面で参加させるための手段だ。ベルカナダはパンデミック下でも素晴らしいパートナーだったが、今後は対面イベントの機会が持てるので、きっとワクワクしているだろう」。

より魅力的で、よりクリエイティブに

専門家の中には、対面イベントの再開がeスポーツ関連団体にとっても彼らのブランドパートナーにとっても有益であることは認めつつ、ライブイベントというのは現実世界で行われるものであるだけに、本質的にデジタルアクティベーションより優れているとは言えないのだと、警鐘を鳴らす人もいる。むしろ、対面イベントのアドバンテージとは、eスポーツ企業側がブランドアクティベーション活動を展開する機会が増え、しかもそれがライブ配信ではかなり限定されてしまう魅力的な要素をたくさん詰め込んだクリエイティブな形で行えるという点である。

2022年4月第1週末に行われる第2回メジャー大会では、来場者が参加できる「チャレンジャー」向けオープントーナメントといった特別な企画も含まれている。6月には、トロント・ウルトラが第3回メジャー大会の開催を計画しているが、地元の食べ物を売るフードトラックや、ブランドの物販コーナーの設置など競技以外の企画も用意されているという。

「ライブか否かに関わらず、こうしたコンテンツイベントにこそ未来がある」と、ソーシャルメディアとインフルエンサーのマーケティングエージェンシーであるファンバイツ(Fanbytes)のシニアパートナーシップマネージャー、ハリー・ティズウェル氏はいう。ファンバイツはユービーアイソフト(Ubisoft)や2Kといったゲーム開発会社と協力している企業だ。「だが何かをライブで行うときは、その制作価値を高めることができる。そこからより価値のある瞬間を引き出すことができる」と同氏は話している。

現実世界における懸念

CDLのライブイベント再開が、完全にさい先のよいタイミングだったわけではない。現実世界ではウクライナで残忍な紛争が勃発しており、ゲームでリアルに再現されたバイオレンスシーンのすぐそばに名前が表示されることを考えると、躊躇するブランドもあるかもしれない。

しかし、ダイアモンド氏によれば、次回メジャー大会のブランドパートナーの中には、特に具体的な懸念を訴える企業は1社もないそうだ。だが、ワクチンの普及によりオフライントーナメントがスーパースプレッダーイベントになる可能性は低くなったとはいえ、COVID-19も引き続き、ブランドセーフティを脅かすリスク要因となりえる。

「ゲーム開発者との間で、コンテンツクリエーターに戦争ゲーム用のコンテンツ制作を依頼する件について話し合っているが、私たちの判断でそれを見合わせることに決めた。共に仕事をするクリエーターたちへの配慮義務としての判断だ」とティズウェル氏。「彼らを世間の厳しい批判にさらされるような立場に追い込みたくはない」。

週末を前に、ダイアモンド氏とロッカーは、数週間で完売したイベントのチケットを手にした5000人のファンがミスティックレイク・カジノホテルの周りに押し寄せるだろうと予測する。「土日のチケットが数週間前に完売したという事実だけを考えても、おそらく実際に用意した枚数の倍は売ることができたんじゃないかと思う」とダイアモンド氏は話している。

「イベント開催は目の前で宣伝できる機会」

ウォーカー氏も、ウルトラ主催の次回のイベントについては同様に楽観視している。「トロントのマタミー・アスレティック・センターの観客収容数は、使用できない座席やフロアに並べる椅子の数によっても変わるが2000から2500人。私たちの目標は、4日間すべて満席にすることだ」。

入場券が完売したことで、ダイアモンド氏は、この週末イベントのインパクトのある観客動員を活かして、今後ブランドパートナーになる可能性のある潜在企業にロッカーのファン層の広さやリーチについて伝えていきたいと考えている。

「多くのブランド関係者を会場に招待しているので、その目でイベントを見てもらうことができる」と同氏は語る。「こうしたイベントの開催は、eスポーツとは何か、またそれがいかに素晴らしいファン体験を届けることができるのかを、実際に目の前で宣伝できる素晴らしい機会なのだ」。

[原文:How Call of Duty League teams are using the return of in-person events to generate brand interest

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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