プログラマティック広告 の透明性向上を巡り、SSPとDSPの代理戦争が激化?

DIGIDAY

効率化への要求が高まり、アドテクの全盛期が幕を閉じつつあるなか、近年はサプライパス最適化(SPO)が重要なテーマのひとつになっている。

このトレンドの最新の動きが、パブマティック(PubMatic)による「アクティベート(Activate)」の発表だ。サプライチェーンのプレーヤーを減らすことで、広告主に市場へのより直接的なルートを、そしてパブリッシャーにより多くの収益を約束する製品だ。

しかし、従来のパートナーとの対立が激化しているとも解釈される一連の動きのなか、この発表がDSPの怒りを買う危険はないのだろうか?

価格の透明性を高めることが狙い

SSPのパブマティックは、バイヤーがパブマティックのプログラマティックプラットフォームで入札なしの直接取引を実行し、「CTVなどの動画インベントリーにアクセスできるアクティベート」を発表した。

立ち上げ時のパートナーには、fuboTV(フーボTV)、LGアド(LG Ads)などのメディアオーナー、マーズ(Mars)などのバイサイド関係者、電通、ハバス(Havas)、オムニコム(Omnicom)ドイツ法人などのメディアエージェンシーが名を連ねる。

パブマティックは、アクティベートを「デジタルメディアのバイヤーとセラーを直接つなぐシングルレイヤーテクノロジー」と位置づけており、2022年にDSPのマーティン(Martin)を買収したことで実現した、プライベートマーケットプレイスやプログラマティックギャランティード(PG)取引を利用する。つまり、バイヤーはSSPのパブマティックに直接ログインし、広告キャンペーンを予約できるようになる。DSPを介したプログラマティックメディアバイイングというオーソドックスな手法とは対照的だ。

パブマティックのCEOであるラジーヴ・ゴエル氏はプレスリリースで、「時代遅れの取引方法への依存を強める市場において、価格の透明性を高めたいというバイヤー、セラーの要求に応えることが狙いだ」と説明している。

また、「私たちはプログラマティック広告市場におけるホップ、不一致、データの増殖、不透明性、複雑さを大幅に低減する」と同氏は述べており、「その結果として、バイヤーのROI向上とパブリッシャーの収益増加がもたらされるはずだ」と記している。

アクティベートは取扱高の拡大をもたらす

ゴエル氏は5月9日、アクティベートはパブマティックに650億ドル(約8兆7500億円)の総取扱可能市場の拡大をもたらす可能性があると、DIGIDAYに語った。

また、「内訳はCTV(広告購入)が370億ドル(約4兆9800億円)(中略)I/O経由で取引されるオンライン動画が280億ドル(約3兆7700億円)だ」と同氏は説明し、アクティベートの発表は「プログラマティックエコシステムに広告費をより多く引き込むことが目的だ」と言い添えた。

パブマティックの評価では2023年、非プログラマティック広告の広告掲載オーダーがCTVの約60%、オンライン動画取引の約18%を占める見込みだ。パブマティックがアクティベートを発表したのと同じタイミングで、SSPのライバルであるマグナイト(Magnite)もクリアライン(ClearLine)を発表している

こうした動きは代理戦争なのか?

SPOの波が押し寄せるなか、DSPも独自のアライアンスを構築しており(おそらく、最も有名な例はザ・トレード・デスクのオープンパス)、こうした動きは市場参加者の対立を激化させているとの見方もある。

DSPがアクティベートの発表を「回避」と捉え、パブマティックとの取引を停止する懸念はないのかと質問したところ、ゴエル氏は平然とした様子で次のように答えた。「私たちがアクティベートによってプログラマティックエコシステムを成長させ、(現在)DSP経由で取引されていない予算を取り込むことができるという点で、間違いなくDSPにとってはよいことになる」。

ハバスのシニアバイスプレジデント兼投資業務グループディレクター、トム・グラント氏はDIGIDAYの取材に対し、SSPとより直接的に連携し始めたことで、これまでとは異なる方法でオーディエンスデータにアクセスする道を探るようになったと認めている。

同氏は、「(広告キャンペーンで発生する)炭素の排出量などを測定し始めてから、アドテクのエコシステムが驚くほど肥大化していることを皆が目の当たりにしている。だからこそ、これらの企業はシングルスタックのソリューションを構築しているのだ」と述べた。

また、「DSPもSSPも、少なくとも公には、相手のビジネスを直接奪っているところを見られたくないのだと思う」と続ける。「だからこそ、皆が策略を練り(中略)中核事業であるプログラマティック(キャンペーン)購入ではなく、直接購入を選択しているのだろう」。

[原文:PubMatic debuts Activate, as the line between demand- and sell-side players continues to blur

Ronan Shields(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)

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