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ザ・スマイリー・カンパニー(The Smiley Company)という欧州の会社は、半世紀にわたり、黒色と黄色のスマイリーフェイスをアパレルや製品に使用することを求めるすべての小売企業にとって、目立たないが不可欠なパートナーだった。
ライセンス企業のスマイリーは最近、創設50周年を迎え、それを記念して50社以上との共同ブランドを発表している。
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ザ・スマイリー・カンパニーは、「スマイリー(Smiley)」という用語と、黒色と黄色の顔文字の商標を保有しており、ライセンス供与した商品は約6800万にのぼり、ブランドパートナー間での年間売上額は5億7300万ドル(約704億円)に達する。多くのライセンス企業とは異なり、スマイリーはディズニー(Disney)のベビーヨーダ(Baby Yoda)やミッキーマウス(Mickey Mouse)のように有名なメディア資産やキャラクターとは関係がなく、その代わり、多くの人が商標登録されていることさえ知らないようなシンボルを使用している。
創設50周年 有力ブランドとの限定商品を続々発表
同社は、自社のビジネスと名前に対する認知を広めるため、積極的に企業への売り込みを行っている。シーズンごとに25冊以上のスタイルガイドを発行し、各ブランドに商品の既存のアイデアを提供することで、生産後のプロダクトやマーケティングのサポートを行っている。これにより同社は、ラグジュアリーハウスのラフシモンズ(Raf Simmons)から、アパレル小売のエイチ・アンド・エム(H&M)まで、全世界で約400のライセンシーと契約を結んでいる。
スマイリーのCEOを務める二コラ・ルフラーニ氏は、一般的にブランドの記念日というものは、「誰も気にも留めず」、ブランド自身にしか興味を示さないと述べている。そこで同社は創設記念日を祝うため、百貨店を中心にラグジュアリーブランドを募集し、限定商品をリリースすることで話題を集めようとした。同社はこれらの商品を、全米10カ所におけるノードストロームのポップアップの店舗内ストアとオンラインストアで、プロモーションを行った。また、全世界でほかの百貨店とも提携した。
ルフラーニ氏は、それぞれの商品について、そのカテゴリーで有名なブランドを起用したかったのだという。参加したブランドには、パジャマブランドのスリーピージョーンズ(Sleepy Jones)や、デニムメーカーのリー(Lee)などが含まれている。
同氏は次のように述べている。「50周年に向けて私が構想したのは、それぞれの商品について象徴的なブランドが参加することだった。一般の人たちは、それが情熱をもって行われたことを感じ取るだろう。また、当社はユニークな商品を開発するために手間を惜しまないようなブランドを求めている」。
スマイリーフェイスが小売で見られるようになるまで
商標マーケットプレイスのコミュナー(Communer)と企業JPGリーガル(JPG Legal)の商標代理人兼ブローカーであるジェレミー・ピーター・グリーン・エーチ氏は、現在では普遍的なもののように感じられるこのシンボルをスマイリーが所有しているのは、1970年代の登録の結果だと説明している。
エーチ氏は次のように述べている。「このシンボルが非常に有名で広まっているとしても、元は固有のブランドだった事実は変わらない。ただし、この事例は明らかに携帯電話のキーボードにまで使用されているという点で特殊なものだ。あまりにも普遍的に使われているため、私にも商標代理人として把握するのが困難だ。これは商標法の歴史における変わった事例のひとつだと考えている」。
現CEOの二コラ・ルフラーニ氏の父親であるフランクリン・ルフラーニ氏は、ジャーナリストとして働いていた1971年に、スマイリーという用語と、具体的な黒色と黄色のデザインの特許をフランスで取得した。このシンボルが有名になってから、同社はキャンディのブランドのマーズ(Mars)や、デニムメーカーのリーバイス(Levi’s)と、ブランドのライセンス契約を締結した。息子の二コラ・ルフラーニ氏が1996年に同社に入社したとき、同氏はスマイリーという名前をほかの数百の国で商標登録し、公式なザ・スマイリー・カンパニーを設立した。
それ以来数十年、絵文字の普及により、スマイリーの顔文字は日常的なコミュニケーションの定番となった。これにより、スマイリーとほかのブランドや小売業者とのあいだでいくつかの衝突が起こり、なかには(意図せず)同社の商標を侵害していた業者もいる。
たとえば、ウォルマート(Walmart)とスマイリーは、ウォルマートがスマイリーの顔を自社のマーケティングに再度採用したあと、2011年に法的訴訟を非公開で終わらせた。スマイリーカンパニーの弁護士であるエマニュエル・オレンガ氏は2016年、「条件は非公開だが、ウォルマートは新しい広告キャンペーンで彼らのロゴを使用することを認可された」とCNNに語った。
スマイリーがどのようにして自社の商標を施行するのかについて問われたとき、ルフラーニ氏は米モダンリテールへのフォローアップメールで、「ほとんどのライセンス企業と同様に、我々のIPはビジネスの基本的な要素であるため、当社はそれを保護して全世界で適用させるため、熱意を持って作業している。これは、世界的なライセンシーとして成功するための当社戦略の根幹部分だ」と述べた。
スマイリーは、自社ウェブサイトの「特許権侵害(infringement)」ページに、2015年に138件の訴訟を起こし、「その結果として数十万の商品が販売中止になった」と記載している。
顔文字からビジネスを生み出す
エーチ氏は、多くのクライアントが商標登録されたロゴや名前から価値を生み出すことに期待して同氏のもとを訪れるが、スマイリーはメディア資産との結びつきなしに価値を作り上げてきた稀有な企業のひとつだと語っている。
「ひとつの画像、ひとつの単語だけのために存在しているライセンス企業はめったに見られない」と同氏は言う。
ルフラーニ氏は、ほかのライセンス企業と差をつけるために、スマイリーは「クライアントへのサービスの充実」に力を入れていると語る。
「多くのライセンサーは漫画の画像を使ったスタイルガイドを提供し、ライセンスを受けた側はそれを使用して使って好きなことをし、四半期末に小切手を支払うだけだ」と同氏は付け加えている。
ザ・スマイリー・カンパニーは一般的に、このプロセスにより深く関わっている。チームには複数の部門があり、ファッションや、食品、家庭など各種のカテゴリーにおける商品の開発に特化しており、シーズンごとにスタイルガイドの作成と更新を行う。
パートナーのマーケティングにも出資
また同社は、ブランドパートナーのマーケティングにも出資している。たとえば50周年記念では、ノードストロームと共同で自撮り用の撮影ブースを設置し、コレクションのプロモーションを行った。
ルフラーニ氏は、多くのライセンサーが、新しい映画や番組などをきっかけに短期的な契約を結ぶなど、メディアの流行に合わせて運用を行うのに対し、スマイリーは、「常に一貫性があり、持続可能な」契約を維持しようと努めている、と付け加えた。
そのためには、ブランドとの提携が必要になる。同社にはこのプロセスにおけるガイドラインが存在する。たとえば、同ブランドにはスマイリーオリジナル(Smiley Original)の商標があるが、これはディスカウントストアや、タバコのように賛否のある商品カテゴリーには使用を認めていない。
同社は今後、人気のあるトレンドを生かした新しいキャンペーンを作り上げ、スマイリーの人気から利益を得続けることをめざしている。同社はすでに、次のキャンペーンと商品リリースとして、スマイリーのマークを付けたサステイナブルな商品に特化した「フューチャーポジティブ(Future Positive)」の立ち上げに取り組んでいる。
また同社は現在、アルディ・アンド・リドル(Aldi and Lidl)などの欧州の食料品店チェーンと協力して、スマイリーブランドを使ったプライベートブランドの強化に取り組んでいる。
ルフラーニ氏は次のように述べている。「プライベートブランドは、現在のインフレとともに大きく成長しつつある。当社は、単にスーパーマーケットのブランド名や、何かほかの退屈なものではなく、スマイリーの名前を使った素敵なパッケージで、特に子供やティーンに向けて、魅力的な商品を開発しようとしている」。
[原文:How The Smiley Company has built a smiley face retail empire]
著者:Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The Smiley Company