発泡酒が発売されたとき、かなり不思議な感じがしたのを覚えている。なんだ、発泡って。サワーみたいなものだろうか。だけど飲んでみたらビールだった。発泡酒とは成分の違いで税金を安く出来る代わりにビールと名乗らない酒のこと、と知ったのは後のこと。
発泡酒とビールとの違いは主に麦芽の量にあるらしい。麦芽の量を減らせば酒別上雑酒とみなされ、税金が安くなる。税額を安く抑えるため各メーカーは必死で新しい成分を研究開発しているとのこと。
ということで僕も新しい発泡酒を作ってみることにしました。安易に。
※2005年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
作ったらだめらしいです
ビールってそもそもどうやって作ったらいいのだろう。いろいろ調べてみると、あるわあるわ、世の中には自分でビールらしきものを作ってる人ってすでにたくさんいるのだ。そして自家製ビールキットなるものまで売られているではないか。ぜんぜん目新しくない。だけどどのサイトにも注意書きのようなものが書かれていた。
「日本では個人での酒の製造は法律で禁じられています」
だめなのだ。だからキットとかでも糖分量を減らしてアルコールが1パーセントを超えないようにしてくださいとか書かれているのだ。みんな守っているのだろうか。まあどちらにしろ公のサイトで堂々と違法なことするわけにもいかないだろう。やばいなこの企画、ぼつりそうだ。
だけど酒を造ってはいけない、というのは原料を醗酵させてアルコール分を精製してはいけないということだ。ならば市販のアルコール分を使って作る分には問題ないはず。要するにカクテルと同じだ。これでいきたい。これで発泡酒業界に殴りこみたい。
まずは材料探しから
まずは混ぜると発泡酒になりそうな材料を探す。発泡酒の条件としては
・黄色くて
・発泡していて
・ちょっと苦い
・お酒
この条件に合う材料を調達する。
まず黄色。これはもう間違いなくお茶だろう。スーパーでいろいろなお茶の色を比べたが、一番黄色かったのがこれ、沖縄名物うっちん茶。うっちんとはウコンのことだ。こいつ、黄色くてほのかに苦い。すでに二つの条件を満たしている。
次の条件、酒であること。純粋なアルコール分を、ということではじめはエタノールを使おうかとも思ったがまずそうだったのでやめた。飲めなきゃ意味がない。
ということでここも沖縄らしく泡盛に決定。アルコール度数30度。
苦味に関してだが、うっちん茶だけでもかすかな苦味はある。だけどよりビールテイストを強めるためにはもう少し切れのある苦味がほしいところ。ということであといくつか苦味候補を調達した。
ゴーヤは苦瓜といわれるだけあって完全に苦い。それからウコン茶の強烈そうなやつもゲット。これらでホップの苦味に対抗していくことにする。
で、発泡はどうしよう
これで一応発泡酒の条件はそろった。いやまてよ、一番大切なところを忘れてないか。そうだ「発泡」の部分だ。発泡しなけりゃただの酒だろ。
素直に炭酸水を買おうかとも思ったが、炭酸水のあの発泡具合は発泡酒には弱いのではないか。というかそれでは普通に泡盛のお茶割りサワーだろう。思い悩みながらジャスコ店内をうろついた。東京近郊のライターが悩んだときにハンズへ行くように、沖縄在住の僕は悩むとジャスコをうろつくのだ。
その手があったか
そんなとき食品売り場で目に留まったのが一台の機械。ドライアイス。そういば以前佐倉さんがいろいろなものをしゅわしゅわにしていたのを思い出した。あれって確かドライアイスを使ってたっけ。これだ、これを使おう。
ドライアイスは食品売り場の一角に設置されていて、アイスクリームとか冷凍食品とかを買うともらえるようになっていた。
ゲットしたドライアイスはパウダー状のものだった。佐倉さんが使っていた固体のやつとは違うけど大丈夫だろうか。
心配しつつ家に帰ったらこのドライアイス、すでに消えてなくなっていた。さすがパウダー、はかない。
あっさり売っていました
気を取り直してアイスクリーム屋へ向かった。以前ドライアイスをもらった記憶があったのだ。
店員さんに「アイスクリームを買うのでドライアイスを頂けませんか」と聞くと「いいですよ」とのこと。あっさり。しかも持ち帰り用では足らない場合、有料でも譲ってもらえるとのこと。ええぜひ譲ってください。
基準がわからなかったので100円分買ったドライアイスはまな板くらいあった。このサイズで100円とは思いのほか安い。
これだけ安いと何か他にも使いたくなる。ふと電撃ネットワークの人たちが食べていたのを思い出したが、そういうことすると子供が真似するといけないので掲載は避ける。
さていよいよ仕込みに入ります。
さて作りますよ
とにかく材料はそろった。せっかく買ったドライアイスが消えてなくなる前に、さっそく発泡酒作りをはじめたい。
ベースとなるのは黄色いうっちん茶。これに泡盛でアルコール度をつける。グラス1杯を約200mlとすると、ビールと同じ5パーセントくらいのアルコール度数にするためには30度の泡盛が30ml必要という計算になる。ショットグラス1杯分くらいだ。
うっちん茶に泡盛を入れてとりあえず味見をしてみた。
やばい、普通にうまい。
泡盛のまろやかさにうっちん茶のほろ苦さがマッチしてかなり口当たりがよろしい。これが発泡してたらさぞかしうまいだろう。幸先のいいスタートだ。
次にウコン茶を煎れてみる。抽出された色は市販のうっちん茶に比べてかなり濃い黄色、そしてなにより体に良さそうな臭いがじわじわと部屋を満たしていく。
やっぱりこの辺りから道を誤り始めます
さらにゴーヤ。苦味といえばやっぱりこいつだ。こいつから苦味を抽出して切れのある発泡酒にしたい。
ゴーヤをミキサーで砕き、汁だけを集める。青臭い臭いが先のウコンの苦い臭いと相まって部屋中がかなり不吉な感じになってきた。およそ発泡酒を作っているようには見えない光景だ。どちらかというと健康番組のような雰囲気。
めげずに先に進もう。
いよいよ発泡
これからいよいよ発泡にかかる。アイスクリーム屋でゲットしてきたドライアイスで苦い液体にシュワシュワ感をプラス、発泡酒化するわけだ。
ドライアイスを包丁で切り分け、それぞれの液体にぶちこんでみる。
ドボン、ごわごわごわごわ……。
ドライアイスをうっちん茶に入れた瞬間、ものすごい量の泡と煙が噴出した。煎じたウコン茶の方が温度が高かったせいだろうか、同じ量のドライアイスを入れたにもかかわらず他のグラスにくらべ煙と泡の勢いがすごかった。
ゴーヤの呪い
そして特筆すべきはゴーヤ汁。ドライアイスを入れた瞬間に泡を吹きながらもこもこと膨れ上がった。どうしたんだね、君。
もう手が付けられない。もこもこの泡はテーブルに収まらず床へでろでろと広がっていく。
なにか間違ったのだろうかと思い、以前の佐倉さんのコネタを見返すと、佐倉さんは圧力鍋を使っていた。なんて正しい人なんだろう。床に広がった泡を掃除しながら自分を呪った。
完成、そして試飲
ようやく泡が落ち着いた、の図。左から抽出ウコン茶発泡酒、市販うっちん茶発泡酒、それからもこもこゴーヤ発泡酒。市販うっちん茶発泡酒は見た目気の抜けたビールっぽい色合いだが味の方はどうだろう。緑のやつは飲まなくてもわかるような邪悪な空気を放っている。
いざ試飲。-70℃以下というドライアイスを投入したことで、どれもいい感じに冷え冷えだ。マイルドそうなうっちん茶発泡酒から頂いてみる。
「ごくり……。え、いいじゃん」
うっちん茶と抽出ウコン茶ベースの発泡酒は以外にも普通に飲めるではないか。ドライアイス発泡は微炭酸ちょっと強め、というった感じでかるく舌に刺激を感じる程度。ビールみたいにシュワシュワにするにはやはり圧力鍋が必要なのだろう。しかしキンキンに冷えているからだろうか、これはこれで悪くないと思う。
抽出ウコン茶は苦味が強いが、泡盛の持つ独特の甘みによってお互いがいい方向へ高めあっている。ビールというよりはやっぱり泡盛サワーといった方が近いかもしれないが、細部を詰めれば通用するかもしれない。
そして最後、ゴーヤ発泡酒。ウコン茶発泡酒を飲んだ後で少しいい気分になっていたこともあり、ぐいっと一気に飲んでみた。
しゅぱーっ。
青い苦味が体の中でスパークする。ある意味一番発泡酒だった。だけどこれはやめたほうがいいと思う。あのもこもこの泡は人類への警告だったのだろう。
求むウコン発泡酒
ウコン入り発泡酒はどこかメーカーさんが作ってくれないだろうか。技術力でビールのコクに対抗してもらいたい。体にも良さそうだしさ。なんて適当に上の方に押し付けておいて僕は普通の発泡酒を飲みながら寝たいと思います。