ロシア側の説明と食い違う爆心地 – 田中龍作

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「ここがエピセンター(爆心地)だ」。将校は指し示した。=26日、ショッピングモール爆破現場 撮影:田中龍作=

 開戦から29日目、3月26日。

 ロシアの反体制指導者ナワリヌイ氏らが設立した独立系メディア「ザ・インサイダー」に所属していた女性記者オクサナ・バウリナさんが、キエフで取材中に爆殺された事件―

 ロシアにいるのが危うくなったオクサナさんは、ポーランドに出国、ポーランドのパスポートでウクライナに入国していたことが分かった。ウクライナ軍の将校が田中に明かした。

 将校によれば、オクサナさんが殺害されたのは23日午後4時頃。場所はロシア軍の爆撃で破壊されたショッピングモール東側の芝地

 教えられた場所に行くと確かに直径約1m、深さ30㎝余りの穴があった。小型ミサイルでドローンから狙い撃ったのだろう。

 地元メディア関係者によると、彼女は開戦前からウクライナで取材活動を続けていたという。

 事件当日、田中は午後2時ごろまでこの現場にいた。ウクライナ軍から「すぐ出ろ」と強い口調で言われなかったら、巻き添えを食らっていたかもしれない。

 一部の海外メディアが、ショッピングモール北側の駐車場で爆撃を受けて死亡した人物の映像を流し、それがSNSで拡散されているが、この人物はショッピングモールの社員だ。

手前にある円柱形の巨大な物体は高層ビルの柱。爆発の凄まじさに圧倒される。=26日、ショッピングモール爆破現場 撮影:田中龍作=

 オクサナさんが命を落としてまで取材しようとしていた破壊現場に、田中は3度足を踏み入れた。

 現場検証をしていたウクライナ軍と鉢合った。取材目的をありのままに言うと、軍は立ち入りを認めた。それも案内付きで。案内してくれたのは何と将校だった。

 ライフルは持たずホルスター(拳銃ホルダー)のみ。部下の兵士を引き連れていたので、一目で将校だと分かった。

 大メディアの記者ならともかく、一介のフリージャーナリストを案内して情報操作も何もない。

 田中は「エピセンター(爆心地)を見せてくれ」と頼んだ。

 足を滑らせれば大けがをするような瓦礫の山を登った。将校は斜め下を指さし「ここがエピセンターだ」と言った。

 「ビッグホールは?」と聞くと「瓦礫が覆い被さっているが、ここがエピセンターだ」と答えた。

 瓦礫の海が直径10m以上に渡って陥没しており、明らかにここにミサイルが落ちたことが分かる。

 爆心地正面に立つ高層ビルの壁が最上階まで吹き飛んでいることから、バンカーバスターではない。

 現場の状況は「地下にウクライナ軍の軍事施設があったから」とするロシア側の説明と食い違う。

 将校は最後に「爆心地を見せたのはアンタ(田中)が初めてだよ」と言った。

ショッピングモール1階。=26日、キエフ市 撮影:田中龍作=

     ~終わり~

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