インフルエンサー に旅行を提供するビューティブランド、タルトのTikTok戦略の軌跡と成功

DIGIDAY

2015年以来、タルト(Tarte)は編集者やインフルエンサーを世界中に派遣して、その旅行を効果的なハッシュタグ「 #trippinwithtarte 」を使って記録している。これまでの目的地にはハワイやコスタリカ、ボラボラなどがあり、インスタグラムのこのハッシュタグの投稿は2.2万件を超えている。ブランドのハッシュタグがそのルーツを超えて使われるようになることが多いTikTokでは、再生回数は1000万回以上である。タルトは自社インスタグラムで990万人、TikTokで81.4万人のフォロワーを誇っている。

タルトがこのようなプレス旅行を始めたときにはビューティインフルエンサーが起用された。そのうちにライフスタイルのインフルエンサーも含まれるようになった。その多くは、手頃な価格のファッションや子どもに食べさせる食事、メイクアップなどについて投稿する母親たちである。

インフルエンサーに合わせた細かい配慮

タルトの旅行は「定番」となった。また、タルトは同じような考えを持つブランドと提携して「ルームドロップ」を提供している。これは、宿泊部屋をそれぞれのゲストに合わせたスイートルームのようにするものだ。専用の「タルトトック(TarteTok)」ステーションなど、目的地のあちらこちらにTikTokを撮影する機会も多く設けられている。今回、3月14日〜17日のフロリダ州キーラーゴの旅では、TikTokユーザーの客室に、セットアクティブ(Set Active)、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie&Fitch)、スウェル(Swell)、ボーブルバー(Bauble Bar)などのブランドからのギフトが用意されることになっている。投稿は義務ではないが、ギフトには露出と、場合によってはソーシャルメディアタグの点で見返りがある。また、タルトはラッキーなフォロワー1人にホテルに用意されたものと同じギフトの詰め合わせをプレゼントする。

3月第3週にはビューティインフルエンサーとの協働という元の戦略に戻るが、今回は全員がTikTokで知られているインフルエンサーである。この16人には、メレディス・デュクスベリー氏(フォロワー1470万人)、ヴィクトリア・リン氏(フォロワー500万人)、ステファニー・ヴァレンタイン氏(別名グラムジラ、フォロワーは140万人)のようなパワフルなインフルエンサーが含まれている。タルトの創業者兼CEOのモーリーン・ケリー氏がブランドの「家族」と呼ぶこのようなコンテンツクリエーターとの関係に対して、同社は誇りを感じている。今回の参加者はこれまでに「#trippinwithtarte」に参加したことはなく、この旅行のために支払いも受けていないが、旅行そのもの(交通費、部屋代、食事代)の経費はタルトが支払い、各インフルエンサーは同伴者1人と参加することができる。参加者には投稿義務はないが、風景やギフト、そして数多のメイクアップ製品を前にして投稿したい気持ちになるだろう。

この旅行は、1999年に発売された同社最初の製品であるチークステイン(Cheek Stain)の限定版の再発売を祝うものだ。この象徴的な製品は6カ月の間だけ当初の3色で復活する。しかし、ケリー氏は、顧客から販売期間の延長を求められるかもしれないと述べている。インスタグラムのティーザー投稿へのコメントから判断すると、タルトはこの製品の販売期間を延長するものと思われる。

2012年にタルトに入社したCMOのサマンサ・キテイン氏は次のように述べている。「従来のイベントは次第に同じように感じられ、同じように見えるようになった。そこで、何よりもまずクリエイターたちが、当社の製品とチーム、モーリーン(・ケリー氏)ともっと意義のある方法でやり取りできる方法を模索した。認知度を高めるために影響力のある人々にずっと依存してきている。その時々でもっとも影響力を持っている人たちに」。同氏は、タルトが従来の広告に依存したことは一度もないと述べている。

インフルエンサーのパワーを活用して事業を拡大

この規模の旅行に関してはほとんどタルトの独断場だ。リボルブ(Revolve)は、2014年にハッシュタグ「#revolvearoundtheworld」を使って、インフルエンサーの旅を開始した。ほかにも数々のブランドがインフルエンサーコラボレーションを開始して、マーケティング予算をインフルエンサーとの有償パートナーシップに投入しているが、一貫してインフルエンサーに数日間の旅行を提供しているブランドはほとんどない。

タルトの重役たちはそのような旅行に基づいた売上が急増したかどうかについては明言していないが、旅行の結果として得られたUGCと築かれた関係の高い価値を強調している。

また、今回は、同社にとって初のTikTokユーザー限定ハッシュタグとなる「 #trippinwithtarte 」だが、タルトは、TikTokに買収される前のMusical.lyにおいて初めてのビューティブランドだった。ケリー氏が早い時期から新しいプラットフォームを利用してきたことは明らかだ。

ケリー氏は次のように語っている。「当初、タルトトーク(Tart Talk)を始めた。これは、顧客と対話することができる当社のウェブサイトのブログだ。最初の頃のRedditのように顧客はフォーラムに参加することができた」。ソーシャルメディアが現在のようなコミュニケーションのベースライン形式に進化したとき、それが顧客ベース(同社ではタルトレット(Tartelette)と呼ばれている)とコミュニケーションする機会であると同氏は認識した。インスタグラムは、引き続きタルトと顧客の間の主要なコミュニケーション手段である。

「当社は、インフルエンサーコミュニティと我々が築いた関係の産物だ」とケリー氏。「インフルエンサーは当社の延長であり、タルト製品の使い方を示してくれている。タルトはキャンペーンにモデルではなく実際の人々だけを起用している。顧客はそんな人たちに共感することができる」。

キテイン氏によると、タルトは自社を「ソーシャルファースト」であると考えている。これは、「顧客がもっとも長い時間を費やしている場所で顧客に出会うために、新しい方法や革新的な方法をいつも模索している」という意味だ。「そのおかげで、インフルエンサーが業界に大きな影響を与えられることをかなり早い段階で見抜いていた。インフルエンサーには信頼性と実際の人たちとの共感があるからだ。それをすぐ活用した。機会を見つけてすぐに行動に移した」。

[原文:Tarte takes on TikTok with a dedicated influencer trip

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)
Image via Tartę

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