「ウクライナのために、一緒に叫ぼう」と書いてある垂れ幕(グダニスク市、筆者撮影)
ロシアによるウクライナ侵攻から、ほぼ一カ月となった。
日本では、23日夕方、国会議員の前でウクライナのゼレンスキー大統領がオンライン演説を行い、「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本」と述べた。フランス時間の23日午後、今度はフランスの国会議員向けに演説した。24日には、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議でも演説を行う。
平和に向けたゼレンスキー大統領の願いに、国際社会はどこまでこたえることができるだろうか。
ウクライナから国外への避難者は350万人~400万人
国連の調べによると、2月24日の侵攻開始以降、人口約4400万人のウクライナから約1千万人が避難民となったという(3月16日時点)。このうち、約650万人が国内、そして約350万人が隣接する東欧諸国に避難した人々だ。
3月22日付の最新情報によると、国外への避難者は約400万人に上る。最もウクライナ市民を受け入れているのは、ポーランドで、その数は200万人を超えた。
ポーランドの人口は約3800万人。政府の統計ではウクライナ出身者が30万人だが、実際には約100万人と推定されている。今回の難民受け入れで、ウクライナ出身者の比率が大きく増えることになる。
ポーランドに次いで、ウクライナ市民を受け入れているのがルーマニア(約54万3000人)、モルドバ(約36万8000人)、ハンガリー(約31万8000人)、スロバキア(約25万4000人)など。
筆者は、今月中旬、「自由な欧州メディア(フリー・ヨーロピアン・メディア)」会議出席のためにポーランド北部の港湾都市グダニスクを訪れた。
市内の様子を伝えてみたい。
至る所にウクライナ国旗や関連ディスプレイ
筆者が参加した今回の会議は、欧州最大のジャーナリスト組織「欧州ジャーナリスト連盟(EFJ)」と報道の自由を強化するための運動「フリー・ヨーロピアン・メディア」が主催した。
会場は、ポーランドの自主管理労組「連帯」の歴史を記録する「欧州ソリダリティセンター(ECS)」。
市内の宿泊場所や会場付近を歩いてみると、黄色と青色の2色使いになっているウクライナ国旗やこれをモチーフにした布や垂れ幕のディスプレイがあちこちで目に付いた。
通りの一角にポーランド国旗とウクライナ国旗が掲げられていた(グダニスク市内、筆者撮影)
市内を走る路面電車の上部には赤と白の2色で構成されるポーランドの国旗とウクライナの国旗が括りつけられていた。
グダニスクに隣接するグディニヤに向かうため、グダニスク中央駅で切符を買う必要があった。券売機の前でどの切符にするかと迷っていたところ、構内にいたボランティアが助けてくれた。切符代を支払う直前「ウクライナからいらした方ですか」と聞かれた。ウクライナ難民だと、鉄道の運賃が無料になる仕組みがあるからだった(切符の種類は限定されている。参考ウェブサイト)。
用事を済ませて、夕方、駅に戻ると、構内の一部に設置されたウクライナ市民向けの情報センターが見えた。
ウクライナ市民のための情報センター(筆者撮影)
乳母車やおもちゃが見えた(情報センターの外側、筆者撮影)
プラットフォームに向かう通路のあちこちに、ウクライナ市民向けの情報センターの場所を知らせるポスターが貼られていた。
国と国民が一丸となってウクライナ市民を助けようという機運が伝わってきた。
新たな法律を成立させた、ポーランド
ウクライナからの避難民を受け入れるにあたり、ポーランドでは新たな法律を制定している(3月12日、新法成立、ウクライナ侵攻開始の2月24日にさかのぼって適用)。
これによって、戦火を逃れてきたウクライナ市民は18カ月にわたって合法にポーランドに滞在でき、ポーランド国民識別番号(PESEL番号)を取得することできる。PESEL番号があると、様々な公的サービスを受けることができる。就労が可能になり、医療サービス、育児支援など社会福祉の受給対象となる。子供は教育を受けられる。また、一人当たり300ズロチ(約8400円)の現金も一時支給される。
国境検問所のリストが公開されており、情報は常時更新されている(ヘルプラインの電話番号については、後述の参考サイトに記されている)。
ポーランド外務省はウクライナ避難民のためのいくつかの特設サイトも設置している。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はポーランド政府、地方自治体、非営利組織、市民団体などとともに大量の難民受け入れに取り組んでおり、当座の現金支援としてポーランドに1億9千万ドル(約229億円)を投入したという。
先の会議の受付には、ウクライナ支援のバッジが置かれていた。黄色の部分に、「私たちはウクライナを助ける(We Help Ukraine)」と書かれていた。
提供されたバッジ(筆者撮影)
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