不法占拠する露にどう向き合うか – 志村建世

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 ウクライナ侵攻で四面楚歌となっているロシアのプーチンが、日本との戦後処理問題である平和条約交渉を、一方的に打ち切ると通告してきたとのことだ。北方領土については、私にも「ビザなし交流」の事業に参加して、国後島のロシア人家庭を訪問し、通訳つきながら会話した経験もあって、多少は身近に感じている。

 日本の敗戦の直前に、ロシアの前身であるソ連は、まだ有効期間中だった「日ソ不可侵条約」を一方的に破棄して日本に宣戦し、わずか一週間の参加で南樺太から千島列島までの広大な地域を占領したのだった。しかもその大部分は、日本の降伏後に、アメリカ軍の不在を確かめながら行われた。まさに「火事場泥棒」の所業である。余談だか、千島北端の占守島では、事前の根回しなしに不用意に上陸したソ連軍は、日本軍守備隊によって壊滅的な敗北を喫している。

 さらには、地理的に千島列島には属さない、納沙布岬の属島である色丹島と歯舞諸島までも占拠して今に至っているのであ。このとき、一度は択捉島の北側で停止し、「これから先はアメリカ軍の担当だから」と引き返したという、立ち会った日本軍将校の確実な証言もある。ただしアメリカ軍が無関心なのを確かめて南進してきたのは、戦後の九月に入ってからのことだった。そのまま居座って今に至っているのだから、火事場泥棒のそのままである。

 第二次世界大戦時の連合国側には、「領土不拡大」の基本原則があった。戦争の目的は、枢軸側の侵略を阻止するのが目的で、相手国の領土を奪う意図はないということだ。だからアメリカは、多大の犠牲を払って占領した沖縄の施政権も日本に返還した。日本の千島列島は、過去に一度もソ連・ロシアの領土であった歴史はない。むしろ正式に「樺太・千島交換条約」を結んだ史実がある。

 ロシアは「領土の割譲禁止」という国内法を制定したと伝えられる。多分に北方領土問題を意識しているのだろう。プーチンの「うしろめたさ」を告白しているように思われる。