円安の良し悪し 影響は年明けか – ヒロ

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そもそも論として為替相場に良い悪いの烙印を押すのは難しいのですが、ここにきて円ドル相場が4円ぐらい急激に円安方向に動いたことに対して様々な見解が出ています。日銀の定例の政策決定会合の後、黒田総裁は「〝悪い円安〟ではなく、日本経済にとってマイナスになることはない」(産経)と述べ、マネーの番人たる日銀が許容範囲としたことにややびっくりしています。

日経は「円安、『購買力平価ライン』突破か アジア景気に冷や水も」と題してこれ以上の「行き過ぎた」円安をけん制する記事を投じています。

為替相場で一番問題になるのは急激な動きです。一般の方には海外旅行に行く時ぐらいしか直接的影響はないのですが、日本が多くの輸出入に基づいて経済が成り立っている中で円がどの水準であるかの議論よりも為替水準の急変による最終価格への影響という問題が大きいと思います。例えば今回のように円安になれば輸出する側はプラスの作用がかかりますが、輸入する側はコスト増を認識せざるを得なくなります。

そもそも海外物価が急騰し、資源価格もとんでもない水準になっている中で更に円安となればあらゆるものにその影響が出てきます。一般的には数か月から半年程度のタイムラグがあり、今回の円安と海外物価高の日本の最終消費財への影響は年明けぐらいから明白になり、来年4月の価格改定期にえぇっというぐらい物価が跳ね上がるシナリオの可能性があります。

一方、販売側は「そんな値上げを消費者が受け入れるはずがない」とするため、内容量を減らす、代替案を探す、企業努力で吸収しようとするでしょう。そもそも乾いたぞうきんを絞ってきた日本企業にとってこれ以上、どうするのかという状況になりかねず、全体として日本の景気を冷やす結果になるシナリオはあり得る、と考えています。

日本は輸出と輸入のどちらを重視するか、といえば本質的にはいつも輸出重視なのですが、ある程度の企業であれば何らかの為替リスクのヘッジをしているはずで為替変動は克服している企業も多いのです。むしろ、輸入物価の上昇に対してそれを吸収できる体力が日本に十分にあるか、という我慢大会をしている中で黒田総裁の「悪い円安ではない」というのもどうかと思います。

では為替相場はどこに向かうのか、といえば全く分かりません、と答える以外に方法はありません。理由は為替はエレメントが大きく、何がきっかけでどう動くか論理的に予見不可能なのです。例えば株価は企業業績や業界のトレンドなどある方向性をもって無限の上昇幅の中で値動きが決まります。ところが為替は相対、つまりシーソーゲームである以上、どちらかが上がればどちらかが下がらなくてはいけないバランスの中にあります。そのバランスのファクターは10や20はあるでしょう。そしてそのテーマや重要性も刻々と変わるのです。それゆえに私は為替だけは予見しないようにしているのです。

今回の円安をレンジバンドの動きと見ればそろそろピークとなりますが、日本の国力(経済力や国家の自立度など)を評価されてしまうとニューゾーン入りになることもあります。例えばバラマキを可とすれば財務体質への懸念から円が売られやすくなるし、バラマキそのものが日本の経済力が弱体化していることを対外的に公表しているようなものになってしまいます。

過去5-6年、為替は比較的安泰でした。しかし、もしかしたら我々は良くない為替水準に向かうことも無きにしも非ず、という瀬戸際にあるという見方も出来なくはない気がしています。

では今日はこのぐらいで。

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