NFTでストリートアートはどう変わる? ストリートアート専門NFTオークションハウス「TOTEMO」に聞いてみた

GIZMODO

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デジタルで描かれたイラスト、音楽、写真、GIFアニメなどのNFTアートが、昨年から世界的にも盛り上がりを見せています。そんななか、ストリートアートをNFT化し流通させることで、恒久的な価値を与え、新たな経済圏の確立とともにクリエイターの活動領域を拡大していくことを目的に、世界初のストリートアートに特化した東京発のNFTオークションハウス「TOTEMOが始動。

2022年3月13日(日)にアメリカ人マルチアーティストのラ・マノ・フリアをフィーチャーしたNFTライブオークション『FACES』を東京・UltraSuperNew Galleryにて開催します

ストリートアートをNFT化するってどういうこと?

とはいえ、ストリートアートやグラフィティというと、「“リアル”の代名詞」という印象が強く、それらをNFTとしてデジタル化することで、このカルチャーにどのような影響を与えることになるのかイメージがつきにくいのも事実。

もともとは熱心なアートラバーだというTOTEMOのCEOを務めるマーティー・ロバート氏に、TOTEMOをスタートさせたきっかけや同プラットフォームがアーティストとアートコレクターに提供できるメリット、そしてNFTとともにバズワードになっているメタバースとの親和性などについて聞いてみました。

東京・UltraSuperNew Galleryにて開催されるNFTライブオークション『FACES』
GIF:TOTEMO

──なぜNFTでストリートアートを取り扱うマーケットプレイスを立ち上げることにしたのですか?

世界的にも人気が高い有名アーティストのバスキアやバンクシーも、もとはストリートアートシーン出身です。シーンに登場して以降、どんどんアーティストとしてキャリアアップしていった彼らの実績から、ストリートアートに可能性を感じています。

ただその一方で、ストリートアートには、性質上作品に恒久的な価値を持たせにくいという課題もあります。例えば、ひとつの場所に限定されること、風雨によって劣化/破壊されたりすること、匿名性が高いこと、イリーガルに描かれたものも多いことなど、極めて一時的なものになってしまう場合が多いんです。

そういった課題を解決するために、ストリートアーティストにしっかりとしたマネタイズのシステムを提供する必要があると考えたことが、TOTEMOを立ち上げるきっかけになりました。

──最近では「CryptoPunks」や「Bored Ape Yacht Club」のようなデジタルアートが人気になっていますが、新しいデジタルアートが人気を博すなかで、NFT化されたストリートアートはコレクターにどのような価値を提供できるのでしょうか?

今おっしゃられたデジタルアートに関しては、私もすごくかっこいいと思っていますし、共感してる部分もたくさんあります。ただ、これらのデジタルアートは投機目的やSNSのプロフィールのためにコレクションする人も多く、アート作品としての価値はすごく限定的です。その点では本当の意味でのアートコレクションとは言えないような気もしますね。

私たちは、実存するストリートアーティストの作品がNFT化されていくことで、潜在的なコレクターに対して、まったく新しいアートの価値を生み出すことができると考えています。

Image:OpenSea

──ブライアン・イーノのように、アーティスト側にもその“マネーゲーム性”からNFTに否定的な見解を持つひともいます。ストリートアートの世界にもそういった声はあるのでしょうか?

個人的には、それらもあくまで一側面だと思っているので、NFTのマネーゲーム性自体に強く反抗しているわけではありません。ただ私たちとしては、マネーゲームのためではなく、今までアーティストとしての収入だけでは生計が立てられず、別の仕事をしながらアーティスト活動をすることを余儀なくされている人たちを支援するためにこそ、NFTを活用したマネタイズのシステムを発展させていきたいと考えています。

──では、アーティストにとって、TOTEMOでNFTアートを販売するメリットはどういったところにあるのでしょうか?

一般的にはギャラリーがアーティストに支払うコミッションの分配率は5:5が基本で、シビアなところだとアーティストの手元に入るお金はもっと少なくなることもあります。ですが、オンラインで取引できるNFTアートは、そういったスペースを必要としないのでその運営のためのコストがかかりません。

TOTEMOも、従来のギャラリーやオークションハウスのようにフィジカルなスペースを持っていないので、自分たちの取り分を減らして、その分をアーティストに還元したとしてもビジネスとして成り立つのです。

それとNFTアートを販売するアーティストであれば、オンラインで世界中のアートコレクターに自分の作品をプロモーションすることができます。

このふたつはNFTアートのポジティブな面であり、TOTEMOでNFTアートを販売するメリットでもありますね。

アーティストを純粋に支援したい人のために

──アートコレクターに対してはどういったメリットを提供できるのでしょうか?

そもそも私たちにとって、NFTはあくまでストリートアートをもっと価値のあるものにするためのツールでしかなく、NFTをビジネスにしていく目的でストリートアートをチョイスしたわけではありません。

だからTOTEMOでは、このプラットフォームをビジネスとしてマネタイズしていくことよりもいかに才能のあるアーティストをサポートできるかということを重要視しています。

例えば、アートコレクターの中には将来的な価値を見越して、これから活躍するであろう若手アーティストを支援する人も少なからずいます。ただ、その一方で、本当に自分の好きなアーティストを支援していきたいという人も多くいるんです。そういう人がNFT作品を購入することでアーティストを純粋に支援できる点は、私たちがアートコレクターに対して提供できる最も大きなメリットだと考えています。

TOTEMOでは、ストリートアートの価値を軽いものにしたくないという考えもあって、大学で美術を学び、ストリートアート博士と言えるくらいこの業界に精通したスタッフが世界各国のストリートアーティストをキュレーションしています。ただ単にいろいろなアーティストの作品を取り扱うのではなく、しっかりとしたキュレーションが入っていることもアートコレクターに提供できるメリットのひとつですね。

──キュレーションによって作品の価値をきちんと担保しているところは、確かにアートコレクターにとってはメリットと言えますね。

そうですね。それと関連する取り組みとして挙げられるのが、ストリートアートに精通したキュレーターとコラボした「Street Art Collector」というポッドキャストです。ここでは、自分たちでキュレーションした世界各国のアーティストのインタビューを配信しており、例えばファッションが好きなひとなど、従来のアートコレクター以外のさまざまな層にアプローチしていく目的で取り組んでいます。

ポッドキャストの一番のメリットは、アーティストの生の声をほかのアーティストへも届けることができるところにあります。同じアーティストとして活動している人たちにとってもモチベーションになりますし、ストリートアートに対する理解を深めることにも繋がると考えています。

──ストリートアートがNFT化することで、アーティストやコレクターに限らず、社会全体にとってはどのような影響を与えるとお考えですか?

わたしはもともと心理学を深く学んできた人間であり、科学の分野でも仕事をしてきたので、人類にとって科学はとても重要なものであるという認識はあります。今後も科学の発展は私たちの世界に素晴らしいものをもたらしてくれると思いますが、だからといってアートがそれとはまったく逆の位置にあるものだとは思いません。

例えば、科学分野の人であってもアートを見て癒されるような経験をした人はいるだろうし、アートからインスピレーションを受けて新しい何かを生み出している人も多いはずです。一見まったく関係がないと思われるような分野へも、アートは目には見えないところでポジティブな影響を与えていると思います。

──NFTには環境負荷が高いというデメリットもあり、しばしばそれが議論の的になっています。TOTEMOではこの問題をどう捉えていますか?

それに関しては私たちもシリアスな問題だと捉えていますが、将来的にNFTはもっと環境に優しいものになっていくと考えています。

今のNFTの取引では、ビットコインの二重支出を防ぐために開発された「プルーフ・オブ・ワーク」という合意形成の仕組みが使われることが多いのですが、今後はよりサスティナブルなシステムが採用されることは間違いないです。ただ、そういったブロックチェーン技術にしてもまだ生まれたばかりですし、そうなるにはどうしても時間がかかるとは思います。

私たちはまだ活動を始めたばかりなので直近では難しいですが、今後利益を出していくなかで、何らかの形で環境に対しての還元はきちんと行なっていくつもりです。

メタバースとNFTの関係性について

────最近では老舗オークションハウスのサザビーズが独自のNFTプラットフォームを立ち上げたり、メタバースでバーチャルギャラリーをオープンさせたりしたことが話題になりました。メタバースとNFTの親和性にも注目が集まっていますが、今後、メタバースとストリートアートNFTが結びつくことでどんなことが起きると思いますか?

例えばさっき話したように、“現実では違法になるから自分の作品を描けない場所”であっても、メタバースの世界であれば自由に描くことが可能です。その意味でメタバースはアーティストにとって、自分たちが本当に表現したいものを描くことに最適な場所だと言えると思います。

私にはふたりの子供がいるのですが、彼らは日常的に『フォートナイト』や『ロブロックス』のようなゲームをすることで自分たちのイメージするもうひとつの世界に住んでいるんです。そういう子供たちがこれから成長していくにつれて、もうひとつの世界であるメタバースももっと現実的なものへと進化していくはずです。そうなればストリートアートの可能性自体もさらに広がっていくと思います。

──TOTEMOとして注目しているメタバースプラットフォームはありますか?

個人的には、どのメタバースプラットフォームが一番良いか決めるのは、まだ早すぎる気がします。例えば、サザビーズの隣に自分たちのスペースを作って、そこで作品を販売してみることもできるだろうし、これからそこで何ができるかを試していくうちにTOTEMOにとって一番相性が良いプラットフォームがわかってくると思っています。

──最後にTOTEMOとしての今後の展望を教えてください。

現在は、より多くのアーティストを支援するためにテクノロジーの部分でしっかりとしたベースを確立していくことにフォーカスしている段階です。将来的にはNFTの販売に限らず、よりカルチャー的なところも攻めていきたいと思っています。そして、”あらゆるストリートアートに関連したものを網羅している”といわれるようなプラットフォームにしていきたいですね。

Source: TOTEMO